幸福の欠片〜act30〜
「!」
僕が現場に到着するとそこには今まさにに危害を加えようとしていましたと言わんばかりの体勢な男どもと…転校初日にを暴行していた女子生徒たち。
「!」
は泣きそうな声で僕を呼びます。
「お前ら…!」
「ふん。あんたたち明日からもうこの学校の生徒じゃ無くなるんだもの。別に何したってかまわないわ。あんたたち!あの女から叩きのめしちゃって!」
「畏まりました、お嬢様。」
に群がっていた男どもが一斉にこちらに向く。
「神無月組に楯突いたんですもの!これくらいの報いは受けなさい!」
その言葉と同時に男どもが向かってきます。
「…そちらこそ、にこのような仕打ちをしたこと。それ相応の報いを受けていただきますよ。」
僕は一瞬のうちに仕込んでおいたタガーナイフを閃かせ、男どもを打ちのめした。本当にそれは数秒のことで、命令を出していたリーダー格の少女は驚きと恐怖で固まっています。
「弱いですね。あなた方。そんなんで我々ヴァリアーに向かってくるなんて命知らずにもほどがあります。」
そう言ってナイフをしまうとリーダー格の少女が息を飲む気配がしました。
「ヴァ…ヴァリアーってあの…イタリアの…世界最大マフィアの…、」
「おや。よくご存じで。如何にも。私隆盛は先日正式にヴァリアー日本支部の指揮を任されました。以後お見知り置きを。神無月組時期御当主となられる神無月柚葉嬢?」
にっこりと、少々の殺気を含んだ笑顔で応えれば柚葉嬢とその取り巻きは真っ青になって後退ります。
「!」
今まで恐怖で動けなかったが勢いよく僕に抱きついてきて思わず後ろに倒れそうになるのを辛うじて踏みとどまります。
「ぁ、怖かったよぉ。」
本気で泣きじゃくる。この子がここまで泣くというのは本当に怖かったんでしょう。いつも僕に心配を掛けまいと明るく、めったに涙を見せないが。
「よしよし。ごめんね。遅くなって。」
「うんん。ちゃんとは来てくれたもん。助けに来てくれたもん。」
は僕に抱きついたまま泣き続けます。柚葉嬢その他取り巻き一同はまだ固まったまま。…さて。
「いつまで傍観者決め込んでるおつもりですか?テニス部の皆さん。」
「!!」
そう言うと周りの草むらからテニス部レギュラー全員が現れました。
「テ…テニス部レギュラー陣…!」
取り巻きの一人が焦ったように呟いたのが聞こえました。
「いつから気付いていた?」
「最初からですよ。職業柄気配を読むのは得意なものでして。」
「なるほどな。」
レギュラー陣は柚葉嬢とその取り巻きに向き直り、
「君が虐めの首謀者だったんだね、神無月さん。」
そう言った声は、とても冷ややかでした。
「わ…私は…!」
「言い訳されても無理だよ。隆盛さんがここに着いた直後に僕たちもここに来たんだ。全部見させてもらったし聞かせてもらった。」
淡々と話す不二先輩は怒りも哀れみもない、ただただ淡々と言葉を紡いでいきます。
しばしの沈黙の後不二先輩はこちらを振り返りすまなそうな笑顔で頭を下げます。
「ごめんね、今まで助けてあげられなくて。」
それにつられてか他のレギュラー陣も次々と頭を下げます。桃城君や菊丸先輩も渋々ながらも頭を下げています。
「…別にいいです。あたし助けてもらおうなんて思ってなかったし。…今回はちょっと怖かったけど。」
僕にしがみついたままはぶすっとした声で答えます。
「それに謝ってもらったからって、転校が白紙になる訳じゃありませんから。」
そう吐き捨てるからは「もうこんなところごめんだ」という思いがひしひしと伝わってきます。
「…まぁ…そんなわけなんで。僕たちはこれで失礼します。」