買い物デート
「、いつが暇かな?」
突然ディーテに質問され、えっと…と考え込む。
それから、手帳を開いて、予定を確認。
「えっと、明後日ですね。」
笑って、ディーテを見る。
じゃぁ、明後日は私にくれるかな?と綺麗に笑った彼に頷いて、予定に書き込んだ。
どこか行くんですか?と質問すれば、うん、と頷くディーテ。
悪戯っぽい笑みを浮かべて、ウインクする様子は、正直眩しい。
どこに行くのかは教えてもらえないようで、ふふ、と楽しそうに目を細めた。
その反応にきょとんとしながらも、私は出かける日に思いを馳せる。
どこに行くのかはわからないけど、ディーテのことだ、きっとセンスのいいお店にも行くだろう。
彼の部屋の調度品は、基本的に素敵なものばかりで、目を奪われてしまうのだ。
できるなら、素敵なお皿があるお店に行きたいな。
なんて、完璧に自分本位なことを考えて、でも、ディーテやシュラ、デスも使うのだから、そこまで自己中心的でもないなと思いついた。
ふむ、どこへ連れて行ってくれるのだろうか。
多少ウキウキとしながらも、自分の仕事に戻った。
そして、約束の日。
私は、着る服に迷っていた。
あの、ディーテだ。
そもそも彼の私服なんて見たことがない。
いつも、執務室に来ているときの服が、私服なのだろうか。
それなら、…私は彼の隣に並べる服など持っていない。
彼のセンスがいいのはもちろんだが、彼の着ているのは所謂、ブランドもの。
それを知ったのは、偶然と言っても過言ではなかったが、正直、あの3人の中で一番服装の話が合うのはシュラだったりする。
彼は何処の服でも着こなせてしまうからか、結構安物の服を着ていることが多い。
私とシュラの二人がデスとディーテに服装について説教されるのは、多々ある。
それもあって、今日の服装は一体どうしようかと悩んだ。
「…これでいいかな?」
全身が見れる鏡の前で、自分の姿を見る。
ふわりと広がったスカートは空のような、色合いで。
上に合わせたブラウスは、白くて、おしゃれに見えるそれ。
足元はディーテの髪色みたいな水色のミュール。
髪をハーフアップにして、ゴムの上に少し濃いめの青いリボンを結んだ。
化粧もいつもより気合いを入れた。
全体的に見て…まあ、許されるかな、と思っていれば、ノックが聞こえる。
「、準備はできた?」
「はーい、大丈夫です。」
扉を開けると、にこり、綺麗に笑ったディーテが立っている。
Yシャツにズボンという、何ともシンプルだが、小物使いがうまいのか、それとも元々の顔立ちか。
髪も1つくくられて、肩口に流されている。
かなり、格好いい。
「可愛いね。」
「…ありがとうございます。」
眉を下げて笑えば、楽しそうに笑った彼は、行こうか、と私を抱き上げて、聖域から出る。
それから、テレポーテーションで大きな街にやってきた。
普段買い出しに出るところとはまるで異なり、思わず、キョロキョロと見てしまう。
「ふふ、珍しい?」
笑いながらかけられた声に、恥ずかしくなって、足元を見つめる。
くすくすと笑う声が聞こえ、ぷくと頬を膨らませた。
「さ、行こうか。」
私の不機嫌そうな顔を見て、誤摩化すように私の手を取り、歩き出す。
ゆっくりした歩調や加減された歩幅に有り難く思いながら、彼の隣を歩いた。
…まあ、隣に視線が集まることぐらいわかっていたよね。
そんなこと気にならないのか、ディーテは此処だよ、と微笑む。
「えっと?」
「香水が欲しいって言ってただろう?」
ああ、そんなこと、言ったような気がする。
恒例になった夕食の席でぼそっと言ったことだったから、覚えてくれているなんて思わなかった。
嬉しく思って、ありがとうございます、と見上げる。
気にしないで、と楽しそうに笑った彼はそのままエスコートしてくれた。
「どんな香りが好みだい?」
「んー、柑橘系も甘いのも好きですけど…。」
首を傾げながら、1つ香りを嗅ぐ。
…うわ、苦手なタイプだ。
「この感じはあまり好きじゃないです。」
「…ああ、あまりには合いそうにないね。」
軽く嗅いでから、首を左右に振る彼。
私の高々それだけの情報で彼は案内がついているかのように歩く。
そして、君にあいそうなのはこれかこれかこれだね。と3つ差し出してきた。
が、残念ながら既に鼻が麻痺しているのか、匂いの判別が出来ない。
自分の匂い嗅ぐといいって本当なのかな、と思いながら、一度口元を手で覆う。
何となくリフレッシュした気がする…だけかもしれないが。
「…これか、これ、ですかね。」
二つを目の前に残して、悩んでいるまっただ中だ。
1つは少し匂いが似ていたので、より好みの方を残して、よけた。
「こっちの方がラストまでに似合う気がする。」
「じゃあ、ディーテの言う通りこっちを買います。」
お勧めされた方を手に取って、購入。
少し買いたいものがあるから待っててくれるかい?と言われれば待っているしかない訳で。
用が終わってすぐ、彼は行こうか、と私の手を取った。
そのまま、色々なお店に連れて行ってくれて、疲れたと思う前に適度な休憩を取ってくれて。
「…。」
「何だい?」
正面でアイスティーを飲みながらにこり、笑う彼と目線をあわせる。
少し悩むようにして告げた。
「…エスコート慣れてるなぁ、と思いまして。」
「ふふ、嫉妬かい?」
まさか、と首を振る。
ディーテの隣に並んだであろう女性たちはきっと美しくて、私の場合、確実に嫉妬を通り越す気がする。
なんて思いながら、たくさん買ったお皿や服に視線を向けた。
ディーテが普通に持ってくれるので、申し訳ないと思いながらも有り難く買わせてもらいました。
「そろそろ、帰りましょうか?」
「おや、もういいの?」
「はい、満足です。それに、今日はデスの料理でしょう?」
それもそうだね、と楽しそうに笑った彼と聖域に帰る。
デスの料理を食べる前に、部屋に荷物を置かなくちゃ、と部屋まで送ってもらう。
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです。」
「それは私の台詞だよ。はい、今日のお礼。」
渡されたそれは、悩んだもう1つの香水で。
男前なんだよなぁ、と思いながら、シュ、とその香りを纏う。
それから、くんくん、と鼻を動かす…うん、いい香りだ。
「ありがとう、ディーテ。」
そういえば、彼は少し驚いたようにしてから、首を左右に振った。
「どういたしまして。じゃあ、二人が待ってるだろうし、行こうか。」
「ん、二人は気がついてくれるかなぁ?」
「気がつくよ、二人とも、敏感だからね。」
楽しそうに笑ったディーテの言った通り、双魚宮に入って、すぐあったシュラに香水か?と聞かれ。
料理を作ってくれたデスにも、食事前になんか付けてんのか?と言われ。
食事の後の休憩の時間に笑った。
「ディーテに貰ったの、いい香りでしょう?」
「…へぇ?アフロにねぇ?」
デスが意味深な表情を浮かべて、笑う。
その表情にキョトンとしていれば、シュラがよしよし、と頭を撫でてきた。
顔を見上げれば、小さく笑って、お前は気にするな。と告げられる。
コクリと1つ頷いて、3人は何か付けてるの?と問いかけた。
「んあ?俺は休みだけ付けてるぞ。」
「私は薔薇の香りが染み付いてるから付けてないね。」
デスとディーテはニコニコ笑いながら答える。
シュラが答えてくれないので、顔を近づけてくんくんと鼻を近づけた。
「シュラは安心する匂いだよね。」
それで、ディーテは優しい香り。と笑って彼の方を見れば、そうかい?と微笑む姿。
俺は?と話に入ってきたデスに、デスはヤニの匂いしかしないです、と最近気がつくととれている敬語を意識的につけた。
反論してきたデスをディーテが止めている間に、シュラがそっと耳元で囁いた。
「、今度、腕時計を買いに行くか?」
「ん、覚えててくれたんだ、でも、いいの?」
腕時計も、香水のように欲しいもの、と小さく零したもので、嬉しくなる。
「勿論だ。」
「って、そこ、何いちゃついてんだ!」
「シュラ、君も油断ならないね。」
きゃああああvv
毒林檎の恋
のそらいろ様より、キリ番のリクエストで「連載主人公でアフロディーテさんとデート」というリクエストをしたところこんな素敵なものをいただいてしまいましたきゃーvvありがとうございますーvv
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