写真〜オモイデ〜

「ジャーン!」
「「?」」
イーストシティ。エドとアルは図書館近くの食堂で食事中。そこになぜかいたりするウィンリィ。更にその手には謎の封筒。
「何?それ?」
エドは黙々とパンを頬張り、アルは鎧にオイルを塗る。ウィンリィは「良くぞ聞いてくれました☆」と言わんばかりの笑顔。
「ふふふ。こないだばっちゃんと写真整理してたらあんたたちの写真も一杯出てきたのよvだからもってきてあげたのvありがたく受け取りなさいv」
「いらないなんて言ったらぶっ殺す☆」というオーラがウィンリィの背後に漂っている。
「「ありがたくいただきます。」」
「よろしいv」
上機嫌でウィンリィは(エドに奢らせた)オムライスを頬張るその姿にエドとアルは大きなため息をつくのだった。

ウィンリィと別れたあと、エドとアルは報告書を持って東方司令部へと向かっていた。もちろん、ウィンリィに渡された封筒もしっかりと持っている。
「つーかウィンリィは何しに来たんだ?」
「さぁ?」
ぼやくエドにアルは苦笑する。そんなこんなしているうちに東方司令部に到着。報告書を出すためにロイの執務室へ。
「あら、エドワード君。アルフォンス君、こんにちは。」
執務室に着くとホークアイが書類を整理しながら笑顔で迎え入れてくれる。
「「こんにちは。中尉。」」
綺麗にはもりました。
「大佐は?」
いつものことながら、めったに執務室にいないロイの姿をわざとらしく尋ねる。
「会議よ。ちょうどあなたたちが来る直前に出て行ったから、あと一時間はかかるわね。どうする?」
「じゃ、まってる。折角来たんだし。」
ホークアイの問いにエドが答える。
「そう。じゃぁお茶でも入れるわね。ちょっと待っててね。」
そう言ってホークアイは書類を片付けると部屋を出て行った。
エドとアルはソファに腰掛け、大きく深呼吸。
「ねぇ、兄さん。ウィンリィがくれた写真、見てみようよ。」
アルが思い出したように提案する。
「え・・・?あー、うん。そだな。暇だし。」
エドが持っていた封筒から写真を取り出す。中には十枚以上もの写真。
「わー、一杯有ったんだねー。」
「・・・いつ撮ったんだよ・・・こんなの・・・///」
嬉しそうなアルに、恥ずかしそうに頭をかくエド。それもそのはず。中には幸せそうに眠る幼い兄弟の写真もあった。
カチャ
「お待たせ。エドワード君。」
ホークアイがトレイを持って戻ってきた。
「はい。」
お茶の入ったカップとクッキーの入ったボウルをテーブルに置く。
「ありがとー、中尉。」
にへらっとエドは微笑う。その笑顔につられてホークアイも微笑う。
「あら。写真?」
ホークアイがエドとアルが持つ写真に気づいた。
「はい。ウィンリィがくれたんです。」
「・・・くれたっつーか押し付けられたっつーか・・・。」
アルが答え、エドが苦笑する。
「ふふ。じゃぁ、ゆっくりしていてね。会議が終わったら首に縄をつけてでも連れて来るから。」
にっこり。
ホークアイ中尉。目が笑ってません。本気の模様デス。
「「・・・はい。」」
バタン
エドとアルはこのとき改めてホークアイには逆らってはいけないと思ったとか。

ホークアイが出て行った後、二人はあーでもないこうでもないと言い合いながら写真を眺めていた。沢山の幼いころの写真。ピクニックに行ったり、森へ行ったときや、魚釣りに行って川に落ちたとき。クリスマスにプレゼントのおもちゃを取り合ったとき。そして・・・母も写る、懐かしい家族写真。
「・・・懐かしいね。」
「・・・あぁ。」
沈黙 「・・・あのころは・・・母さんがいて・・・兄さんがいて・・・僕がいて・・・ウィンリィとピナコばっちゃんとデンと・・・。」
アルが言葉を発する。
「ああ・・・。」
「母さんが死んで・・・僕たちは人体練成を・・・錬金術最大の禁忌を・・・犯した・・・。」
そこで一度アルは言葉を切る。
「兄さんは左足。僕は全身を持っていかれた。そして兄さんは僕の魂を練成し、この鎧に定着させるために、更に右腕も失った。」
アルは一つ一つの事実を確認するかのように言葉を紡ぐ。
「だから。」
アルが言葉を切ると、エドが口を開いた。
「元に戻るために、旅をしてるんだろ。」
ニッと笑う。
「大丈夫。俺が元に戻してやる。だから・・・頑張ろう。」
コン
機械鎧の右腕でアルを小突く。
「・・・うん!」
嬉しそうにアルが頷いた。
「それはいいが、報告書はきちんと出してもらいたいものだな。」
「「大佐。」」
いつのまにやら背後にはロイが立っていた。更にその後ろには書類と拳銃を持ったホークアイが立っている。どうやら会議終了後、またどこかへ逃亡しようとしたところをホークアイに捕獲されたらしい。ご愁傷様。
「また脱走しようとしたな。無能。」
ぐさ。
ロイは心にダメージを受けた。
「ちゃんと仕事はしなくちゃダメですよ。大佐。だから無能って言われちゃうんです。」(←黒)
ぐさぐさ
ロイは更にダメージを受けた。
「そうですよ。大佐。それに今日はこれから雨だそうですから。外に行ったところでどうせ無能なんですから仕事してください。」
クリティカルヒット!
ロイは心に更なるダメージ。ロイ・マスタングのHPはゼロになった。ゲームオーバー・・・と、冗談はこれくらいにしておいて。
「・・・報告書を溜め込むような豆に言われたくないな。」
「豆って言うなー!」
「なら兄さん牛乳のみなよ。」
アルの攻撃。
「はっはっは。弟の言うとおりだな、鋼の。」
「ちくしょー・・・。ま・・・とにかく。ほら。報告書。」
ロイに書類の束を渡す。
「うむ。」
「じゃ、俺たちもう行くな。アルが濡れるとやばいし。行くぞ。アル。」
「あ、うん。それじゃあ。」
カチャ
「あ、中尉、お茶ありがとーございましたー!」
「いいえ。二人とも気をつけてね。」
「はーい。じゃ、失礼しましたー。」
バタン
戸が閉まる。
ロイは机に向かい、エドに渡された報告書を見つめる。
「『賢者の石』か・・・。」
ロイは一人呟く。

―しっかり立って 前に進め 後戻りはもう できないから―
fin

ちょっちシリアス。
先輩との合同誌に載せていただいたものを発掘したものです。
んー駄目だめだなぁ・・・。修行しなくちゃ。
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