Bloody Night〜愛故に〜前編

とある村にエドワード・エルリックとアルフォンス・エルリックという兄弟が住んでいた。兄弟には両親がいなかったが、平凡な、それなりに幸せな毎日を送っていた。そんなある日・・・。

雨の夜だった。兄弟はそろそろ休もうと、寝室へ向かおうとしていた。
コンコン
扉をたたく音。
「ったく、こんな時間に誰だよ(怒)。」
エドは大きなあくびと共にぶつぶつと文句を言いながら扉を開けた。
「はぁい。こんな時間にどちら様?(怒)。」
扉の前には黒いマントにフードを被った、まさしく黒尽くめという言葉が似合いそうな男が立っていた。
「・・・。」
「あのさぁ。」
「は?」
「こんな雨の中、ずぶ濡れの人が尋ねてきたら、中に入れてあったかいお茶の一杯くらい出してくれるとかないわけ?」
そう言いながらフードを取った男は黒い瞳に紫がかった長い髪を揺らして不適に笑った。
「な!てめ!」
ドガ!ドス!
・・・なにやら鈍い音が・・・。
「すいません。どうぞあがってください。」
さっきまでエドが立っていた位置にはあるが満面の笑みで立っている。エドはアルに思い切り肘鉄を喰らい、吹っ飛んだらしい。
「ア〜ル〜・・・。」
吹っ飛んだ衝撃で壁にめり込んだままの姿勢でエドはアルを見上げる。
「この人の言うとおりだよ、兄さん。こんな雨の中玄関先で立たせておくなんて失礼だよ。」
「そう言うこと。お邪魔しま〜すvv」
「はい。どうぞ。」
エドはめり込んだまま無視された。

男はエンヴィーと名乗った。ある目的のためにいろいろな場所を巡っているのだという。
「で、この辺に着たら行き成りこの雨だろ〜。参っちゃったよ。今日中に町まで行こうとおもってたのにさ。」
エンヴィーはアルの入れたお茶を飲みながら、笑ってそう言った。
「大変ですね。この家は僕たちだけですので、ゆっくりしていってください♪ね、兄さん。」
相変わらずの嫌とは言わせないオーラ。
「ありがとね、おちびさん達♪」
「だぁれが豆粒どちびだー!(怒)。」
「兄さん、そこまで言ってないよ。」
「あはははは〜♪」
・・・これが、悪夢の始まりだった。

しばらく、エンヴィーはエルリック家に滞在した。エンヴィーは、自分は夜型だからと言って昼はあまり部屋から出てこなかった。エド達も、そういう人もいるのだと思って、放っておいた。
そのころ、村では奇妙な噂が立ち始めた。『ヴァンパイアが出る。』と。

そんなある日、隣の町からエドの元に客が訪れた。町―この辺一体の統治者の息子、ロイ・マスタング。と、そのお目付け役のリザ・ホークアイ。そして、エドとロイは婚約者同士である。
「エドワード!」
「のわ!」
エドが庭の掃除をしているときだった。家の前に馬車が止まり、嫌な予感がしたので家に入ろうとしたが時すでに遅し。馬車の扉を壊れんばかりに勢いよく開け、ロイが飛び出してきた。そして、逃げようとするエドに抱きついた。
「・・・あんたなぁ、毎度毎度行き成り抱きついてくるのやめてくんないか?(怒)」
「いいではないか。私たちは婚約者同士なのだから。それよりもエドワード。私たちの婚約発表の日取りがようやく決まったよ。一週間後。私の屋敷だ。」
「まじ?」
「まじだ。前日に迎えに来よう。・・・なんだいその『うっそ〜』とでも言いたげな表情は。何か不服かね?」
「え・・・!い・・・いや!そんなことは・・・無い・・・。」
「ロイ様。そろそろお戻りにならないと。」
そんなラブラブ会話の途中、リザの冷静な声で二人は現実に引き戻された。
「うむ。では。私はこれで失礼するよ。」
ちゅ。
「な!」
額にキスをされて真っ赤になるエドを残して、ロイは去って行った。
その様子を、二階からエンヴィーが睨みつけるように見ていた。
「気に食わないなぁ。・・・おちびさんは俺のモノなのに・・・。」

以前オフライン活動してたときに発行した鋼小説。
発掘したのでUPして見ました。取り敢えず前後編で。
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