Bloody Night〜愛故に〜後編

その夜、エンヴィーは珍しくエドの部屋を訪れた。
「や♪おちびさん。」
エドももういい加減その呼ばれ方にも慣れたようで、以前ほど怒らなくなった。
「エンヴィー?珍しいな。どうしたんだ。」
行き成り人の部屋に現れたエンヴィーに少々驚きつつも、珍しい事もあるもんだと思うエド。
「ねぇ、昼間の馬車の男。あれ誰?」
「な!お前、見てたのか!」
「うん。で、誰?」
「え、あ、うん。この辺の統治者の息子のロイ。で・・・、」
昼間のことを思い指してエドは赤面する。
「俺の・・・婚約者・・・一応。」
「ふ〜ん・・・。」
「あ、そ、そうだ、一週間後にロイの家でパーティがあるんだ。お前も来いよ。」
赤面した顔をごまかすように、エドは一気にまくし立てた。
「・・・気に食わない・・・。」
「え?」
首筋に鋭い痛みを覚え、エドは気を失った。

目を覚ますとそこはベッドの上だった。
「てっ!」
頭がガンガンと痛む。そして、首筋にも―鋭い痛み―
「あ、おはよう、おちびさん♪」
声のしたほうを振り向くとそこには、―エンヴィー―
「てめ!」
「兄さん!」
エドがエンヴィーに殴りかかろうとしたそのとき、タイミングよく部屋の扉が開かれ、アルが水を張った洗面器を持って入ってきた。
「よかったぁ。兄さん、気が付いたんだね。」
安堵のため息をつきながら、持っていた洗面器を床に置く。
「兄さん、お腹すいたでしょう。ちゃんと食べないから貧血なんて起こして倒れるんだよ。今夕飯温めなおしてくるね。今日は兄さんの好きなシチューだよ♪」
そういってあるは部屋を出て行った。エドはエンヴィーのほうに向き直り、その姿をにらみつける。
「てめぇ、・・・何しやがった・・・!」
「ん〜別に。お腹すいたからね。おちびさんの血を少し貰っただけだよ。ゴチソーサマ♪」
エンヴィーはそういって唇をなめる。
「てめ・・・!」

ドクン

「え・・・?」
―カラダガ アツイ―
「そうそう、ヴァンパイアって知ってるよね?じゃぁ、ヴァンパイアに血を吸われたモノがどうなるか・・・知ってる?」

ドクン

―ヴァンパイアになるんだよ―

「う・・・わー!」

「兄さん!どうしたの!?」
叫び声を聞いたアルがエドの部屋に駆け込んできた。
「兄さん!」
「アル・・・逃げろ・・・!」
「え?」

エドが我に帰ると、腕の中には青白くなり、呼吸も、心臓も止まったアルの身体。
「これでおちびさんも立派なヴァンパイアだよ。」
隣で不適に笑うエンヴィー。
「俺・・・何・・・。」
まだ状況が飲み込めないエドにエンヴィーが説明する。
「おちびさんは俺たちの仲間、ヴァンパイアになったんだよ。そして手始めに弟君の血を飲んで、殺した。」
―コロシタ―
「俺がアルを・・・殺した・・・?」
「そうだよ。もう元には戻れない。ひるの光の中へは変えれない。おちびさんは俺たちと同じ、夜の住民になったんだよ。さぁ、おいで。俺たちの元へ。」
そういって手を差し伸べるエンヴィーにエドは冷たくなり、もう動かないアルを抱きしめて呟いた。
「一日だけ・・・。」
「?」
「一日だけ待ってくれ・・・。」
エドの瞳から涙がこぼれる。その姿を見たエンヴィーはひとつ、大きなため息をついた。
「一日だけだよ。また明日、月が昇ったら迎えに来る。」
そういってエンヴィーは窓から出て行った。エドはアルをベッドに寝かせ、自分は机に向かって何かを書き始めた。それを白い封筒に入れ、封をすると、机の奥から銀のナイフを取り出し、
「さようなら、ロイ。」
そして―

数日後。エルリック兄弟の家の前に馬車が止まった。今日はエドとロイの婚約発表前日。ロイがエドを迎えに来るといった日。
馬車の扉が開きロイがこれでもかというほどの薔薇の花束を抱えて下りてくる。そして、家の戸を叩いた。だが返事は無い。戸を開けると鍵もかかっていない。無用心だと思いながらロイは家の中に入っていく。家の中はどこも明かりがついていない。ロイは慣れた足取りでエドの部屋へと向かう。
扉を開けそこで目にしたのは―ベッドに横たわるアルフォンス・エルリックの死体と、ベッドに寄りかかり、胸に銀のナイフをつきたてて息絶えたエドワード・エルリックの死体だった。
「エドワード…?」
ロイは我が目を疑った。愛する婚約者が、自分の目の前で息絶えているなど、信じられるわけが無い。
「何故…!」
そのとき、ロイの目に白いモノが飛び込んできた。端のほうに『ロイへ』と書かれた白い封筒。ロイは震える手で封筒を取り上げ、封を開ける。手紙を読み終えるとロイは涙を流しながらエドに微笑みかけ一言だけ
「愛してるよ、エドワード。」
そう、呟いた。それを聞くエドの死に顔はとても安らかで、幸せそうだった。

エドの手紙にはこう書かれていた。
『ロイへ
行き成り、こんな手紙でお別れなんてびっくりしただろ。でも、ごめんな。俺、ロイとはもう一緒にいられない
―昼の光の元へは帰れない。夜の月明かりの元でしか、生きることはかなわない―
だから、昼の光の下で生きるロイとは一緒にいられない。本当にゴメンな。
最後にロイ。愛してる。
エドワード』

エンヴィーがエドを迎えに来たときエドはすでに銀のナイフを胸につきたて息絶えていた。
「ちぇ。おちびさん、俺のモノなのに。」
「仕方ないでしょう。心臓壊されちゃ、いくら私達でもどうしようもないもの。弟君だったらどうにかなるわよ?」
「いらない。俺が欲しかったのはおちびさんだもん。」
「じゃぁさ、じゃぁさ、食べていい?」
「おちびさんはダメ。あ。弟君だったらいいよ♪」
「ダメよ。グラトニー。エンヴィーもバカなこと言ってないでさっさと行くわよ。はぁ。まったく。グリードのバカが何かやらかしてなきゃいいけど。」
不敵な笑みを謎の会話を残して、夜の魔物たちは月夜の闇へと消えていった。

めちゃくちゃ(笑)。
しかもこのネタ、闇猫の夢の中に出てきたというなんともすばらしい(?)ネタデス。
そして設定は エンヴィー→ヴァンパイア、ラスト→メドゥーサ(苦笑)、グラトニー→ゾンビ(笑)、グリード→狼男
って言う設定で書いていた記憶が…。
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