―花月は風邪をひいてしまったらしい―

風邪

「大丈夫か?花月。」
十兵衛がお盆にお粥の入った一人用の土鍋を乗せて花月の寝ている部屋に入ってきた。
「大丈夫・・・だと思う・・・。」
ふらふらしながら起き上がる。
「無理をするな。まだ顔色が悪いぞ。」
畳の上にお盆を置いて、十兵衛は布団の隣に座る。
「こっちを向いてみろ。」
頬に手を当て、十兵衛は花月を自分のほうに向かせる。
「じゅ・・・十兵衛?!」
額と額をくっつけられた花月はさらに顔を赤くする。
「まだ熱が高いようだな。食べてもう少し寝ていろ。」
そう言いながら土鍋を花月に渡す。蓋を取ると真っ白なお粥が温かな湯気を上げている。
「・・・食べたいんだけど・・・今・・・食欲が・・・。」
花月は申し訳なさそうに俯く。次の瞬間。
―っくん。―
「?」
一瞬何が起こったのか理解不能な顔をする花月。しかし、状況を理解すると顔がまたまた赤くなる。
「じゅ!十兵衛????!!!!!」
「口移しなら食べられるだろ。」
そう言いながらまた一口口移しで花月にお粥を食べさせる。
「・・・ん・・・。」
「?どうした?花月。」
顔を真っ赤にしてしばらく俯く花月に十兵衛は不思議そうな視線を送る。
「・・・なんでも・・・無いです。ご馳走様。僕・・・もう寝ます。」
その言葉を聞くと十兵衛は土鍋を持って部屋を出て行く。十兵衛の姿が見えなくなると花月は大きなため息を一つついた。
「・・・十兵衛・・・鈍すぎます。」
花月の呟きはため息と共に空気に吸い込まれていった。

「ん〜・・・。」
花月が目を覚ますと部屋の中は少し薄暗くなっていた。窓の外には消えかけの夕焼けとまだ薄い月。
「十兵衛?」
なんとなく、その名を呼んでみる。返事が無い。
「買い物かな?」
花月は首をかしげ
「帰ってくるまで、もう少し寝てましょうかね。」
大きなあくびを一つすると、また眠りの世界へと落ちていった。

「花月・・・眠っているのか?」
「ん・・・あ、十兵衛、お帰りなさい。」
人の気配に目を覚ますと、花月の布団の隣には十兵衛が座っている。とっくに日も暮れて部屋の中は真っ暗になっている。電気はついていないようだ。
眠い目をこすり花月はまだ寝起きでぼーっとする頭で起き上がる。
「!」
すると急に花月は呼吸困難に襲われる。
「・・・ん・・・。苦し・・・。」
やっと呼吸困難から脱した花月は寝起きの頭で状況を判断する。目の前の十兵衛がにやりと笑った気がした。
「十兵衛!」
「熱は下がったようだな。」
「ひぁ!」
十兵衛の手が花月の浴衣の中に入り込んできた。
「ちょ・・・ちょっと十兵衛!な!お酒臭い!」
そんなことを言っているうちに十兵衛の手は花月の太股を愛おしそうに撫で回している。
「十兵衛!ちょっと!やめ・・・あ・・・。」
「かづっちゃぁーん!風邪ひいたんだって!お見舞いに来たよぉ!!」
「(助かった!)」
「銀次!少しは静かにしろ!今何時だと思ってやがる!(バキ)」
「痛いよぉ〜蛮ちゃ〜ん(泣)」
「へび野郎!テメェ、銀次に何しやがる!」
「あぁ?うっせぇ。猿回し!やんのか?!」
「まぁまぁ、お二人さんも落ち着いて・・・わいらお邪魔みたいですし。」
「「「は?」」」
全員の視線が一気に花月と十兵衛のほうに注がれる。フリーズ→再起動。
「わー!かづっちゃぁーん!」
最初に叫んだのは銀次。
「邪魔みたいだな。おら銀次、帰っぞ。」
「ふえ?蛮ちゃん?」
「そやな。花月はん元気そうやし。」
「な!笑師!テメェ!離せ!」
ばたん
「花月・・・。」
ぷち(←何かが切れた音)
「いい加減にしろー!」
「ぎゃぁ!」

After
「おはようございます、十兵衛。」
花月はものすごくご機嫌である。
「あぁ・・・おはよう・・・。」
それに引き換え十兵衛は・・・めちゃくちゃだるそうだ。
「十兵衛?」
「だ・・・大丈夫・・・」(バタン)
「わー!十兵衛!!!」

どうやら花月の風邪がうつったようだ。
fin

いろいろと間違ってる。絶対間違ってる・・・。
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