Quince Requiem〜act4〜
小屋の中で、私は独り、座り込んでいた。戻ってきたのは日がまだ高いうちだったのに、もう外は真っ暗で、灯りをつけない小屋の中は普通の人間ならば動き回れないほどの暗闇。・・・そんな中でも私は”人間”じゃないから、灯り何て無くても周りが手に取るように分かる。そんな自分に嫌気が差したよ。
ガタ
「!」
外で、扉に手をかける音がした。もしかしたら、そんな淡い気持ちを持って、表に出れば
「うわぁ!」
「本当にいた!」
「化け物だ!」
「逃げろ!」
そこにいたのは鏡志朗ではなく、私のことを確かめに来たのであろう、街の人間で。そいつらはあろう事か、小屋に火を放って行った。そいつらを呆然と見送って、私はふらふらと燃え盛る火を、消そうとしたけど、無理だった。”独り”よりも辛い気持ちを知ってしまった。私を作った主人への思いとは違う”想い”。
―ナゼ ワタシハ ウゴケルノ? ドウシテ フツウノ ニンギョウジャ ナイノ?―
燃え落ちていく小屋の中で私は思った。
このまま、この家も、私自身も、燃え尽きてしまえばいい。そうすれば、そのほうが街の人たちも安心して暮らせる。こんな気持ち、想いもなくなってしまえば・・・!そう本当に思った、そのとき。
「流々!」
気がついたら、私は鏡志朗に抱きかかえられていて、さっきまで私が座り込んでいた場所には小屋の骨組みが崩れ落ちてきていて、あのままあそこに座り込んでいたら、私は、”死んで”いただろう。
「・・・よかった。」
どうして・・・、
「流々が・・・居なくなってしまったら・・・どうしようかと・・・。」
私を抱きしめて、小屋が燃え落ちるのを見つめながら、鏡志朗はそう、呟いた。
「街の人々が恐れていた化け物は、この家事で燃え尽きたというわけだな。」
小屋が完全に燃え尽き、火が消えたのを確認して、鏡志朗はそう言った。そして、
「流々。」
ふわ
「え、」
「決めていたんだ。賃金が入ったら、一番初めに、流々に何か贈り物をしようと。」
私の肩には綺麗な反物。
「流々、俺はこれからも、流々のそばにいてもいいか?・・・駄目か?」
「あ・・・、」
「俺のことが、嫌い・・・なのか?」
そんなわけが無い!
俺は首がちぎれてしまうのではないかというくらいに首を横に振った。
「だ・・・だって、私は・・・人間の女性のように共に食事をしたり、買い物をしたりすることもできないんだ!住む世界が・・・違うんだぞ?」
そう、不安でいっぱいな私に、鏡志朗は言ってくれたんだ。
「それでも、流々は、俺にとっては素敵な女性だ。流々のことは、一人の女性として好きだ。それだけでは、駄目か?」
あぁ・・・この人は・・・この世界でただ一人、わたしを分かってくれる・・・こんな人形を愛してくれる。
そう、思っただけで、人形のこの体では流れるはずの無い涙が流れた。気がついたら、私はそのまま、鏡志朗の胸に抱きついて、泣いていたよ。