Quince Requiem〜act7〜

人間界に降り立ったナナリーとアーニャはマリアンヌへの挨拶もそこそこに藤堂鏡志朗のいる軍の施設へと向かう。すでにナナリーは何度もここを訪れているので顔パスである。

中に入り、門のところで教えてもらった藤堂のいる訓練場へと足を向ける。この辺の道順もしっかり頭に入っている。訓練場に辿り着くと、門のほうから連絡が入ったのか、すでに藤堂はそこでナナリーを待っていた。

「お久しぶりです、藤堂さん。」
「ああ。珍しいな。母君が一緒じゃないのは。それに・・・ルルーシュはどうしたんだ?そのこは・・・、」
「私の、新しい騎士です、藤堂さん。お姉さまは、もう私のそばにはいません。」
「っ!それはっ!」
驚きで目を見開き、声を荒げそうになる藤堂をナナリーはいつものやわらかい笑みで黙らせ、
「お姉さまは、短い間でしたけど、私にたくさんの愛を注いでくださいました。護ってくださいました。だから、お姉さまには、一人の女性として、幸せになっていただきたいんです。」
そう言うナナリーは真剣だ。
「今日は早く訓練を終わりにして、帰ってあげてください。眠り姫が王子様を待っています。」
でわ。
それだけ言うとナナリーはアーニャを伴ってその場を立ち去る。後にはナナリーの言葉の意味を考え、立ち尽くす藤堂の姿だけが残された。

「ナナリー様、本当によかったの?」
マリアンヌの屋敷へ戻る道すがらアーニャが心配そうに呟く。表情はあまり変わらないが。
「いいんです。私はお姉さまが大好きです。だからこそ、幸せになってほしいんです。」
「ナナリー様がいいなら、私はそれでいい。ナナリー様に従う。」
「ありがとうございます。でも、できれば私は『女王候補と騎士』より、お友達になってほしいんですが。」
「・・・頑張る。」
そんなアーニャに微笑みながら帰路に着いた。

一方の藤堂はというとナナリーの言葉が気になって、早々に訓練を切り上げ、帰宅した。
「”眠り姫”・・・?」
ふと窓辺に座る人形が目に入る。その人形はあの”流々”だ。アンティークショップで見つけ、すぐに購入した。まさか、約百年前の人形が残っているとは思っていなかった。
「・・・?」
なんだか違和感がある。その違和感の正体はすぐに分かった。開いていたはずのアメジストの瞳が閉じられているのだ。
”眠り姫”
ナナリーの言葉が蘇る。眠り姫の魔法を解くのは王子のキス。そんな御伽噺の決まり文句が脳裏をよぎる。
「・・・まさかな。」
そう思いながらも、藤堂は人形に口付ける。すると、
とくん とくん
人形であるはずの流々から、心臓のような鼓動が響き、そして、
ぱあぁぁぁああ
「!」
人形の体が光に包まれ、そして、光が治まったそこにいたのは黒い髪にアメジストの瞳の少女で。
「・・・私・・・は・・・っ!」
「やっと・・・めぐり会えた。流々。」
自分が抱きしめられていると気づいて、抱きしめている相手に呼ばれた名に顔を上げれば、優しく微笑む姿が目に映る。
「・・・鏡志朗・・・?」
「ああ。俺だ、流々。」
もう、離さないとばかりにしっかりと抱きしめられ、流々の瞳に涙が浮かぶ。
―一人の女性として、幸せに―
最後にそう言ったナナリーの言葉が心に響いて、流々は幸せそうに微笑んで藤堂を抱きしめ返した。

終了!無理矢理終了!!(爆)。ごめんなさい!石は投げないで!!

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