永遠(とわ)を願う
「なぁ、サスケ・・・。」
「なんだ。」
二人きりの部屋。ナルトはベッドに横になり、
その隣で巻物を読むサスケをちらりと横目で見ながら名前を呼ぶ。
「俺が・・・いなくなったら・・・サスケはどうする?」
「は?」
いきなりの質問に思考がついていかない。
「何でそんなこと言い出す?」
「ん〜なんとなく。で。サスケはどうする?」
そんなナルトにサスケはあきれたように再び巻物に視線を落とす。
「ありえない。」
と一言だけ。
「そか。」
そのときナルトが少し寂しそうな、どこか愁いを帯びた笑顔を見せたのにサスケは気がつかなかった。
「”禍(マガ)”。参りました。」
「”狼(ロウ)”。参りました。」
火影執務室。暗部の衣装を身に纏った少年が二人火影の前に膝まづいた。
一人は金の髪。一人は漆黒の髪。暗部名”禍”と”狼”
「うん。次の依頼。SSが二つほど入っているがどうする?」
「俺ってばそろそろ休み欲しいんですけど。ここんところくに寝てないし。」
そう答えたのは禍。火影に対してこんな口の利き方が出来るのは禍くらい。
「そうだね。・・・じゃぁ、お前たちには三日間の休暇をやろう。
そのあとはまたバリバリ働いてもらうよ!」
「「は。」」
「よし。じゃ、下がっていいよ。ご苦労さん。」
そう言って五代目火影、綱手はにっこりと微笑む。
「狼。先帰ってて。俺、火影様にちょっと話があるから。」
「・・・?あぁ。」
狼が姿を消すのを確認し、気配が残っていないことがわかると禍は暗部の面をはずす。
「・・・面をはずしたと言うことは”禍”としてではなく、
”うずまきナルト”として話があると言うことだね。」
綱手の言葉に禍―うずまきナルト―は黙ってうなずく。
そして話し始めた内容に五代目火影・綱手は驚愕のあまり言葉が出なかった。
「ナルト!おまえ・・・!」
「もう決めたから。ばーちゃん。今までありがとうだってばよ。
皆に伝えて?俺ってば”化け物”なのに・・・すごく幸せだったって・・・。
サスケに・・・愛してるって・・・。」
ナルトのほほを一筋の涙がこぼれた。
「ナルト!」
そこにはもう、ナルトの姿はなかった。
ナルトは”死の森”にいた。
―ココなら誰も邪魔されない―
こんな真夜中に死の森に近づく物好きもそうそういない。
綱手に貰った火影の首飾りを近くの木にかける。
そしてナルトは印を結ぶ。次の瞬間、ナルトの体は炎に包まれた。
そして、そこには何も残されていなかった。
一方狼―サスケ―は朝になっても帰ってこないナルトを心配し、朝一で火影の元へ向かおうとしていた。
「!」
空で鳥が飛んでいる。―・・・あれは・・・火影からの召集―
サスケは火影の執務室へと急いだ。
サスケが到着すると、そこにはすでに見知った顔が並んでいた。
カカシ・サクラはもちろん、下忍時代からの腐れ縁とも言える面々がずらりと並ぶ。
そして、サスケが到着すると、火影はそこにいる面々をぐるりと見回すと思いがけない言葉を発した。
『うずまきナルトは死んだ。』
その場にいるすべての人が息を飲んだ。
「・・・何かの間違いでしょう?」
サクラが誰にでもなくつぶやいた。他の面々はただただ息を呑むばかり。
「本当だよ。まぁ、『死んだ』と言うより、
『消滅した』と言う表現のほうが似合ってるかもしれないね。」
火影は言う。
「なんで!」
ようやく思考が働いてきたサスケが信じられないと言ったように叫ぶ。
「お前たちも、もう知っているだろう。ナルトに封印された”九尾”のことを。」
全員が再び息を呑む。
九尾の狐に里が襲われたときまだ生まれたばかりの幼子であったナルトにその九尾は封印されたのだと。
下忍のころは知らされていなかったその事実も今はナルトと親しい関係にあるものに限り周知のこととなっている。
火影は続ける。
「その九尾がね。ナルトの中で力を増してきていたそうだ。
もう、四代目が施した封印もナルトの力でも抑えきれなくなりつつあった。
もう、次の満月までもたないと。九尾の力が一番強まるのが満月だからね。」
そこまで言って火影はふっと息をつく。
「昨日は新月。九尾の力が一番弱まる日。ナルトはそこを狙って、自分ごと九尾を消し去る決断をしたんだ。
この・・・里の平和のためにね。そして、今朝。死の森でコレが見つかった。
あたしがあいつにやった”火影の首飾り”」
そういう火影の手にはナルトがいつも肌身離さず身につけていた首飾り。
「そんな・・・。」
「止められなかった。あたしはあいつを。この首飾りを受け継ぐものをまた・・・失った・・・。
でも、あいつ。笑ってあたしにこう言ったよ。”化け物なのに幸せだった”って。
サスケ。あんたに、”愛してる”って伝えてくれって。」
涙を流す。
そこにいた全員が同じ気持ちであっただろう。みな、ナルトの笑顔を愛していた。
太陽のような黄金の光を放つ、あの笑顔を。
殺伐とした”忍”を言う位置にありながらひと時の幸せをもたらす一筋の光を。
その光ももう、ココには存在しない。
火影の執務室はしばらく、誰も近づくことの出来ないような沈黙に包まれていた。
「火影様。」
サスケの一言で沈黙は破られた。
ゆっくりと火影はサスケを見据える。
「その首飾り。俺にいただけないでしょうか?ナルトの・・・存在していた証拠だから。」
涙を振り払い火影をしっかりと見据える。
火影は一瞬睨み付けるような目をしたが、ふっと悲しげな笑みをその顔にうかべた。
「・・・あんたは・・・死ぬんじゃないよ。それが、ナルトの願いだから。」
そう言って、首飾りをサスケに託した。
「さてと。用事はココまで。あんた達も、今日も任務だろ。下がっていいよ。」
その言葉を聞くと、集まっていた面々は執務室を後にした。
サスケもその場を後にした。
「ナルト・・・。」
夜。サスケは自分の屋敷にいた。
ナルトが昨日言い出したせいで、三日間の休暇が与えられていた。
おそらく、ナルトはこのために休暇を火影に言い出したのだ。サスケのために。
「なんで・・・。」
首飾りを握り締め一人つぶやく。
『さすけ。』
名を呼ばれた気がして庭を見ると、そこには金色の光を纏った人の姿があった。
「ナルト!」
暗闇の中、ナルトの姿だけが闇の中に光を放って浮き上がっている。
サスケはその姿をつかもうとするがその手は愛しい者をつかむことなく通り抜けてしまう。
『くす。たぶん、さすけのことだからこのすがたをつかもうとかするんだろうな。でもむりだってばよ?
これはおれがよういしたまぼろし。おれがしんだらさすけにみせるようによういしておいたものだってばよ。』
ナルトの幻はそう言っていつもと代わらぬ金色の微笑をサスケに向ける。
「ナルト・・・。」
『かってなことしてごめんだってばよ?でも・・・これがさとのためなんだってばよ。
もう、だれもよんだいめのふういんもおれのちからでもきゅうびをおさえこむことはできない。
そうなったらふういんがとけてきゅうびかでてきちゃう。またさとをおそう。
またたくさんのかなしむひとがでてきてしまうから。だから、ぎせいはおれひとりでじゅうぶんだってばよ。』
幻の中で悲しそうに微笑むナルト。
サスケはその神々しさに涙を流す。
『おれ・・・しあわせだったよ?さすけやみんなとなかまになれて。
おれのねがいはみんなが・・・さとのみんながへいわでしあわせにくらしてくれること。
だからね?さすけ?おれのあとをおってしのうなんてかんがえないでね?さすけはいきて?
それがおれのさいごのわがままだから・・・。』
「ナルト・・・。」
幻が消えかかる。
『いままでほんとうにありがとう。おれのこと・・・わすれないでね?
つぎにうまれかわったら、おんなのこがいいな。
そしたらさすけともっとちゃんと、ふつうにれんあいしてけっこんして、
しあわせなかていがつくれるかもね?
くすくす。ほんとうにほんとうにしあわせだったよ。
ありがとう・・・さすけ。こんな”ばけもの”のおれをあいしてくれて・・・
ほんとうに・・・ありがとう・・・。』
「!ナルト!ナルトー!」
幻が消えそこにはうずくまって涙を流すサスケの姿だけが残された。
「・・・あぁ。ナルト。お前のことは決して忘れないよ。」
数年後。サスケは六代目火影となった。
その命と引き換えにこの里を守った愛しい者の意思を継いで・・・。
愛しい金色の光の望む平和な里を作るために。
fin
はい。強制終了。はい。意味不明。ナルト、暗部設定。暗部ナルトってかっこいいよねv(はい?)
ごめんなさいねぇ〜・・・ただ単に暗部設定ナルトが書きたかっただけだったりして・・・(爆)