満月の夜〜カイワ〜
また次の満月の夜。サスケは森へと入っていった。
そしてあの泉の淵に立った。
いつものように満月の光が泉を明るく照らす。
祠の傍にはいつものように金色の髪を揺らし、白い衣を纏った少年の姿。
そして、少年―ナルト―が振り向き、ニッコリと微笑む。
―なにも起こらない―
いつもならばこの瞬間、サスケの目の前は真っ白になり、森の外に立っているはずだった。
だが、今夜は違った。
サスケはまだ森の中にいる。そしてナルトが…こちらへ向かって歩いてきている。そして…
「こうして話をするのは初めてだってばね?」
ナルトはサスケの前に立ち、ニッコリと微笑み、サスケに声をかけた。
その瞬間、サスケは更に心を鷲掴みにされたような思いをした。
頭の中が混乱し、その後何を話したかさえ憶えていない。
気が付くと、サスケは森の外に立っていた。
月はすでに沈み、東の空が白み始めていた。
ただひとつだけ憶えていたことは
―また 会いに来てほしい―
そう言った、ナルトの少し辛そうな顔だった。
やっと話が出来た。
サスケは奇跡でも起きたような気持ちで里へと帰っていった。