満月の夜〜ケツダン〜
その夜、ナルトが寝静まると、サスケは庭に降り立ち、空を見上げた。雲ひとつ無い空には半分の月が煌々と光を放っている。
――もう二週間――
ナルトが森から出て、里で暮らすようになってもう二週間。やっとナルトも里の暮らしに慣れ、だんだん、友達も出来てきた。それなのに・・・何故・・・!?
サスケは拳を握り締め、悔しそうに歯を食いしばる。そのとき、
カタン
物音に後ろを振り向くと、ナルトがうつ向き気味に立っている。
「どうした?ナルト。」
返事が無い。
「ナルト・・・?・・・!」
ゆっくりと顔を上げたナルトの瞳は―いつもの澄んだ蒼ではなく、血のような紅だった―
「我が名は九尾。」
「!」
ナルトの声でナルトでない者―九尾と名乗ったモノは話し出す。
「ナルトはこの里のものに殺された我が子の代わりに我に差し出された当時の火影の子。だが今は殺された子の代わりという理由ではなく、ナルトを―我が子のように愛している。」
ナルトの身体を使って話す急日は、我が子を愛おしむように目を細める。
「なに言いたい。」
サスケは九尾を睨みつけ、強い口調で問う。
「我はナルトの幸せを想って、ナルトを里へ返した。」
九尾は目を見開く。暗い中で血のような紅い目だけが光る。
「・・・だが・・・この里のものはナルトをバケモノのように扱いおった。我はナルトが森を出るときに条件を出した。」
「・・・条件・・・。」
サスケはナルトがこの里にはじめてやってきたときに言っていた条件というものを思い出した。
「我は言った。お前や、この里のものがナルトのことを受け入れてくれるのなら、ナルトを里に返そう。だが、拒絶するならば・・・ナルトは一生、森で暮らすことになる。」
「!!」
「お前は・・・ナルトを受け入れてくれたようだが・・・。」