満月の夜〜サイゴノトキ参〜
―あと十分―
満月が頂点に達するまで残りわずかとなったその時、
ヒュ
「!」
どこからかクナイが投げ込まれた。―明らかにナルトを狙って―
「誰だ!」
サクラとサスケが両側からナルトを守るように抱きしめ、綱手がかばうように前に出る。
「『禍の子』を森に返せ!」
姿を見せずに、いたるところからクナイや手裏剣が飛んでくる。
サスケ、サクラ、そして子供達がそれをナルトに届かせまいと必死でそれを防ぐ。
「そいつがこの里にいたら、また九尾がやってくる!禍がこの里を襲うんだ!」
声と共にクナイや手裏剣が雨のように降り注ぐ。
「ナルトはもう許された!!ナルトが望み、九尾がそれを許した!」
「嘘だ!そんなことがあるはずが無い!!」
「なぜお前たちは事実を事実として認めない!!」
姿の見えない声との言い合いは平行線で交わることが無い。そのとき、
「人間とはやはりこの程度のものか。」
「!」
何処からとも無く声が注がれ、次の瞬間、綱手の前には九本の尾を持つ金色の狐、九尾が立っていた。
「九尾・・・。」
その姿にナルトが悲しそうな声を出す。そんなナルトをサスケとサクラは誰にも渡さないというふうに抱きしめる。
「九尾だ!」
「やっぱりこいつがここにいるからだ!」
「帰れ!」
「森へ帰れ!」
姿の見えない声が、クナイが、手裏剣がふってくる。
「愚か者め。」
九尾の回りに無数の火の玉が浮かび上がる。その火の玉が周囲に飛び散った瞬間、
「ギャー!」
周囲の木々に隠れていたらしい者たちが炎に包まれて落ちてくる。そしてそれは一瞬のうちに跡形も無く消滅した。
「ナルト。時間だ。このような場所にいてもおまえは不幸なだけだ。森へ帰るぞ。」
「・・・俺は・・・。」
九尾に言われて、ナルトはうつむいてしまう。
「ナルトは帰さないわよ!」
「ナルトが不幸かどうかを決めるのは、お前じゃない。ナルト自身だ。」
サクラとサスケは九尾を睨みつける。その瞳には強い意志。
「・・・ナルトよ。」
「九尾・・・。」
「お前はここに残りたいか?」
「え?」
九尾の問に一瞬何を言われたかわからないと言った顔をする。
「我はお前の意思を尊重しよう。お前はこの里に残りたいか?」
その眼差しは本当に我が子をあんずる親の瞳。
「俺は・・・。」
ナルトは真っ直ぐに九尾を見据える。
「俺は・・・!」
―答えはすぐ隣に―