狐の嫁入り〜ことの始まり〜

―狐の嫁入り―
@狐火が多く連なって嫁入り行列の提灯のように見えるもの
A日が照っているのに雨の降る天気
――広辞苑 第五版――

深い深い森の奥。この森を統べる狐の一族の屋敷が聳え立っていた。

「ナール君vはいv」
「あ゛ぁ?」
ナル君と呼ばれた金色の耳としっぽの子狐は物凄く不機嫌な声で応えた。
子狐の名はナルト。森を統べる狐の当主であるミナトの一人息子である。
「・・・なんだよこれ。」
「お見合い写真v」
バキ
「ぐっ・・・ナ・・・ナイスパンチだよ・・・ナル君・・・。」
ぐふう!と大げさに床に突っ伏す。
「しつけぇんだよ。俺は見合いなんかしねぇっつってんだろ。」
って聞いてねぇなと呆れた視線を送る先には既に復活して「どの子がいいなぁ〜♪」などと楽しそうに写真を広げている。
「聞けよ。」
うんざりと呟くが無視。ナルトはなんでこんなやつが父親なんだ・・・と、ちょっと悲しくなった。
「お父さんはナル君のこと心配してるのよv」
「母さん。」
にこにことキッチンから出てきたナルトの母、クシナは「ね、あなたv」と鼻歌を歌いながら上機嫌に写真とプロフィールを眺めるミナトに声をかければ「そうだよ!パパはナル君に幸せになってもらいたいから・・・!」とナルトへの愛を語り始めたので、笑顔でクシナに沈められた。
「とにかく、写真だけでも見てみなさいvv」
そう言って写真を手渡される。「ね?」と何故か後に黒いモノが見える笑顔で言われれば受け取らざるをえない。
「・・・わーった。」
「いい子ねvお母さん嬉しいわvv」
「・・・。」
何か言いたいが言えない。ナルトは諦めたように写真を抱える。写真は5枚。
「・・・俺部屋戻るわ・・・。」
「ちゃんと見ておくのよvナル君v」
「・・・わかってる。」
誰もあなたにだけは逆らおう何て思いません。そんなことを考えながら未だに床と仲良くしている長の威厳なんてこれっぽっちも無い父親を一瞥して大きな溜息をついた。

なんとなく「狐の嫁入り」という言葉で思いついた突発連載。あほな妄想だけで突っ走ります(死)。
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