オオゾラのうた act12
それからツナとスクアーロは毎晩のように夜のデートをするようになった。手が動かなくてギターを引けなくなったツナの代わりにスクアーロがギターを弾き(そのことを言われたときはツナは本気で驚いた)、ツナが歌う。夜の繁華街や海にも行った。
そんな関係をいつまでも両親やハルに秘密にしておけるわけもなく、すぐに知られた。最初は心配そうに(ハルにいたってはスクアーロに敵意むき出し)していたが、ツナが楽しそうにしているのを見て、安心したようだった。
そんなある日。
「なー、スクアーロー。」
「あ゛ぁ゛。」
「・・・今日も派手にやられたのなー・・・。」
部活に顔を出すなり山本に声をかけられ振り向けば盛大に顔をしかめられた。
「ザンザスも完全に八つ当たりなのなー。スクアーロも苦労するのなー。」
「・・・余計なお世話だぁ・・・。それよりそんなことを言うために呼び止めたんじゃねぇだろぉ?」
胴着に着替えながら言えば目の前にばばん!とチラシが突きつけられる。
「・・・なんだぁ?」
チラシに書かれていたのは『あなたの歌をCDにしませんか』という文字。
「ツナに見せたら喜ぶと思うのなー。」
「・・・なれなれしくあいつを呼び捨てにするんじゃねぇ・・・。」
「はは。男の嫉妬は醜いのなー。それよりもこれ渡しておいてくれよ。CDになったら俺も欲しいのな。」
「そっちが本音かぁ゛。」
「当たり前なのな!」
いつもの(なんだか胡散臭い)笑顔で応える山本にかをしかめながらもスクアーロは渡されたチラシを凝視する。
「お金の心配だったら大丈夫なのな。」
「あ゛?」
少し眉間に皺がよっていたスクアーロが顔を上げれば自信満々な山本。
「獄寺とか雲雀とか笹川先輩に言ってみたらカンパしてくれるってさ!ザンザスに話したら絶対食いつくのな。」
むしろ全部出してくれるのなー。
なんて言ってのける山本にその様子がありありと想像できてしまい、スクアーロは苦虫を100匹ぐらい噛み潰したような顔をする。・・・ものすごいありえる・・・。
「だから心配しなくても大丈夫なのなー。」
それより部活はじめよーぜー。」
そう言って更衣室を出て行く山本を見送ってしばし、チラシを見つめて。少し乱暴にチラシを看板に入れると、部活をはじめるために更衣室を後にした。
山本とスクは割りと仲良し(ツナに関することのみ)。