オオゾラのうた act13
夜、スクアーロはツナを家まで迎えに行くのが恒例となっていた。今日もスクアーロがツナを迎えに行くと既に身支度を整えて待っていた。今日はハルもいる。
「こんばんわ、スクアーロ。」
「あぁ。」
笑顔で迎えてくれるツナに表情が緩む。が、すぐに何かを思い出したように鞄をあさる。それを不思議そうに見ているツナに視線を向ける。
「少し、話がある。」
家の中に迎えられたスクアーロはツナに、昼、山本から渡されたチラシを見せる。
「記念・・・なんていったら縁起でもないかも知れねぇが、少なくとも俺は、いつでもお前の歌を聴きたいと思ってる。他にも、そう思っている奴は少なくねぇはずだ。実際、部の後輩や、そいつの友達に俺の上司(?)もお前のファンだとよぉ。」
「はひっ!雲雀さんにザンザス先輩ですか?!噂は本当だったんですね!」
ハルが驚いたような声を上げている。
だからお前のその情報はどこからくるんだという突っ込みはスルーしよう。気にしていたらきりがない。
「費用も気にすんな。今言った奴らがカンパするって言ってるぜぇ。むしろザンザスが一人で全部出しそうだぁ。」
「・・・ザンザスさんって何者?」
「・・・一応、理事長の息子だぁ・・・。」
俺様何様ザンザス様な勢いではあるが。と、ちょっと遠い目。
「・・・スクアーロさん・・・相変わらず苦労してるんですね・・・。」
「・・・何で知ってんだぁ?」
「はひ?有名ですよ?『副会長は会長専用サンドバック』って。」
「・・・。」
あ、ちょっと凹んだ。
それはまぁいい。
「・・・ツナ、やるかぁ゛?」
速攻で復活。チラシを穴が開きそうな勢いで見つめるツナに声をかければ恐る恐る顔を上げる。
「・・・いいの?」
自分なんかの歌をCDにするなんて、という気持ちと、こんな費用もかかるようなことを自分がしてもいいのだろうか。しかもそれを、自分が知らない人たちが協力してくれるという。申し訳ないといった気持ちでいっぱいになる。
「余計なこと気にすんなぁ。俺達はお前の歌が好きで、お前が好きだからやってるんだぁ。素直に受けとっとけぇ゛。」
そう、くしゃくしゃと頭をなでられ、振り返れば両親もハルも笑っている。その笑顔を見て、ツナの大きな瞳から一筋の涙がこぼれた。
スクアーロは結構有名人(あんまりいい意味ではないが)。