オオゾラのうた act4
ツナは走っていた。全速力で。それこそ死ぬ気で。
「(スクアーロさん!)。」
公園の前を通り過ぎて行ったスクアーロを見て、ツナの体は自然に動いていた。追いかけてどうするとか、相手は自分のことを知らないとか、何も考えていない。ただ、追いかける。しかし相手も走っている。正しくはジョギング中。悲しいかなこれが男と女の体力の差。さらに小柄なツナが全力で走っていてスクアーロとの差は開くことは合っても縮むことは無い。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
息が切れる。そろそろツナにも限界が訪れようとしていたそのとき、天はツナに味方した。
カンカンカン
ちょうど先の踏切が警笛を鳴らす。そこのとに気付いたツナはラストスパートをかけ、
「スクアーロさん!」
「う゛お゛お゛!」
飛びついた。
濁音つきで声を上げ、顔面スライディングをしかけたスクアーロは文句を言ってやろうと後ろを振り向く。が、
「・・・。」
言葉が出ない。ハニーブラウンのふあふあとした髪に全力で走ってきた性で上気してほんのりと色づいた頬に、同じく潤んだ琥珀を埋め込んだような大きな瞳。
「(・・・な・・・なんだこのかわいい生き物は・・・!)。」
ぶっちゃけスクアーロの好みストライクど真ん中だったりする。スクアーロがそんなことを考えているなんて知るはずのないツナはとにかく必死で口を開く。
「えっと!あ、あの俺沢田ツナっていいます!趣味は歌うことで好きなバナナは食べ物で!」
・・・必死すぎてちょっと日本語がおかしいのはご愛嬌ということで。
更にしゃべり続けようとすると、
「ツナさん!」
「へ、ハ、ハル?わっ!」
「すいません、この子ちょっと混乱してるんです。ツナさん帰りますよ、はい、ギターです!」
「え、ちょ!」
ずるずるずる・・・
引きずられるようにして連れて行かれるツナを、スクアーロは唖然と見送るしかできなかった。
映画版の台詞を入れたかったんです(爆)。