be place〜後編〜
訓練は午前中で終わり、午後には解散となった。キラは久しぶりに自分の部屋に帰り、
掃除や洗濯をしていた。
なんとかひと段落ついたころ
―ピー―
部屋の中に響く電子音が来客を告げる。
「・・・イザーク・・・?」
「他に誰に見える?」
ドアを開けるとそこには、イザークが立っていた。
「え・・・あ・・・どうぞ。入って。」
そのまま立たせておくのも悪いと思い、中へ招き入れる。
「ああ。」
イザークはキラに促されるまま、部屋に入る。
「お茶でも入れるから、その辺座ってて。」
そういわれて、イザークは近くにあったベッドに腰掛ける。
あまり物のない、白を基調とした部屋。机の上には幼いころのキラと、
隣で微笑むアスランの幸せそうな写真。
「イザーク。」
「あ・・・ああ。すまん。」
いつの間にか紅茶を運んできたキラが隣に座っていた。
心配そうにアメジストの瞳で見つめてくるキラから紅茶のカップを受け取り、一口口に含む。
しばらく沈黙が続いた。
「僕・・・ここにいてもいいのかなぁ・・・。」
沈黙を破ったのはキラの小さな呟きだった。
「僕・・・コーディネーターなのに・・・地球軍で・・・ザフトと戦って・・・同じコーディネーターを・・・たくさん・・・殺して・・・アスランの仲間を・・・僕が・・・!」
キラは涙を流す。
「僕は・・・本当なら・・・裏切り者なのに・・・それなのに・・・僕は・・・ここに・・・いて普通に生活して・・・僕・・・裏切り者なのに!殺されても・・・おかしく・・・ないのに・・・!」
もう、しゃべることもままならない。
涙を流し、嗚咽ばかりがこぼれる。
己の罪悪感で一杯で、心に溜め込んでいたものが、最初の一言で一気に溢れ出して、キラは涙を流し続けた。
「ご・・・ごめん・・・ごめんなさい・・・僕は・・・僕はぁ!」
やっと出てくる言葉も、すべて謝罪の言葉ばかり。ただただ、謝罪と、自分に対する嘲りの言葉ばかり。
キラの涙が落ち着いたころ。
「キラ。」
「!」
キラはイザークの腕の中にいた。
「自分を責めることは無い。お前はココにいろ。」
「・・・へ?」
「お前はココにいろ。他のやつらがどう思っているかは知らない。だが少なくとも俺はお前にココにいて欲しい。・・・俺はお前が好きだ。」
しばしの沈黙。
「・・・いや・・・迷惑だな。お前はアスランと付き合っているんだったな。すまない、忘れてくれ。俺はこれで・・・。」
「待って!」
立ち上がろうとするイザークの服をキラが握り締める。うつむいた顔は耳まで赤くなっている。
「・・・本当・・・?」
うつむいたままキラは呟く。
「は?」
「さっきの。」
「だから俺は帰・・・」
「違くて!『好き』って言うのは本当?ってきいてるの!」
「!」
今度はイザークが赤くなるばん。
「・・・嘘で・・・そんなことは言わない・・・。」
次の瞬間。ぽたぽたと、キラの瞳から大粒の涙。
「な・・・!そ・・・んなに・・・いやか?」
ショックを受けたようにうろたえるイザークにキラは首を横に振る。
「いや・・・じゃ・・・ない・・・。」
さっきも自分を嘲りながら涙を大量に流していたのにもかかわらず、キラはまだ大粒の涙を流す。
「う・・・嬉しくて・・・ありがとう・・・僕もあなたが・・・好きです。」
にっこりと微笑む。
「・・・な・・・!おまえは・・・アスランのことが好きなんじゃ・・・。」
キラはふるふると首を横に振る。
「アスランは幼馴染。それ以上でもそれ以下でもないよ。ただ・・・独りになりたくなくて・・・アスランと一緒にいただけ。僕が好きなのは・・・イザークあなただけです。」
天使のような微笑。そして、キラとイザークの唇が重なった。
それから、仲良く並んで歩くキラとイザークの姿が度々目撃されるようになり、イザークとアスランの仲は一層悪化したとのこと。
キラはというと、もう、アスランのベッドで目を覚ますこともなくなったらしい。
fin
えっと・・・ノーコメントで・・・(死)