Love Doll act1
朝、目が覚めてイザークはたっぷり三十秒ほどフリーズした。それもそのはず。部屋のど真ん中に見覚えのないトランクが一つ。・・・しかもなんか知ってるような気がする。
「・・・俺はこんなものを買った覚えはない・・・。」
誰にともなく一人呟いてはー、と溜息を一つ。どうしようかと頭を抱えれば
カタ
かすかに、トランクが動いた気がする。しばらく見ていると
カタカタ
再びトランクが震える。まるで、開けてくれ、と言っているかのように。しばらくそうして見ていると、なぜかトランクを開けなければならないような、そんな気がしてくる。
イザークはトランクに手をかけ、重い蓋を開く。中に入っていたのは亜麻色の髪の少年型doll。むき出しの肩に彫られた名は『Kira』。
「・・・『Kira』・・・。」
呟いて、そっと抱き上げる。絹のようなさらさらとした髪に白い肌。瞳は閉じられていはいるが、その姿は造られたものといわれても信じられないほどに美しく、今にも動き出しそうで。
キラを抱き上げたままトランクの中に視線を落とすとそこには一つの薇。それを見た瞬間、昨日のメールを思い出す。
「・・・。」
無言で薇を手に取るとキラを後ろに向かせ、首筋にあいた穴に薇を差し込む。カチャリ、と音がして、勝手に薇が廻る。そして、
「・・・ん・・・。」
「!」
腕の中で身じろぎするキラに飛ばしかけていた意識を慌てて引き戻し、ベッドに座らせれば、ゆっくりとその瞳が露になる。露になったその瞳はアメジストをはめ込んだかのような美しいヴァイオレット。
何度か瞬きをして目の前で自分のことを凝視しているイザークに気が付き、花が綻ぶかのような綺麗な微笑みを浮かべた。
「始めまして、僕の、マスター。」
その姿に、一瞬にして囚われた。