Love Doll act2

イザークはとりあえず、今日が休みでよかったとつくづく思った。キッチンに立とうとしてもトイレに行こうとしてもシャワーを浴びるためにバスルームに入ろうとするにも、生まれたてのヒヨコようにちょこちょこと着いてくるキラに、なんだか親鳥になった気分だ。
そして、
「・・・おい。」
「はい?」
はー、と溜息をついて無言でキラを抱き上げるとベッドに座らせ、キラと目線を合わせる。
「・・・キラ。」
「はい、マスター。」
名前を呼ばれたことが嬉しいのか、ぱぁ、と満面の笑みを浮かべるキラにちょっとひるむ。だが、一つ咳払いをして、改めてキラに向き直る。
「キラ、俺はお前を”迎えた”覚えはない。どうやってここに来た。」
難しい顔をするイザークは反対にキョトンとした顔をするキラ。そして、あぁ、と質問の意味を理解してさも当たり前のように言う。
「マスターが、僕を選んでくれたじゃないですか。」
「選んだって・・・何を・・・!」
そこで脳裏に浮かんだのは昨日のメール。キラはそんなイザークの考えを読んだかのようににっこりと微笑む。
「ずっと、ずっと探していたんです。僕を目覚めさせてくれるマスターを。マスターは百九十八万七千三百二十五人目にトリィが選んで、そしてマスターは僕を選んでくれた。だから僕はここに存在することを許された。」
嬉しそうに話すキラの話にイザークは混乱しそうになる。が、何とか平静を保ち、口を開く。
「・・・ということは、お前はずっと眠っていたということか?」
「はい。」
「トリィというのは?」
「僕のマイクロユニットです。・・・あれ?先に来てる筈なんでs『トリィ!』あ、来ガシャン!「がっ!」
キラの言葉を遮って窓ガラス(防弾ガラス)を突き破って飛び込んできた緑は物凄いスピードで突っ込んできたかと思うとイザークの額に激突した(え)。なんだかさっきまでのシリアスムードがぶち壊し。
「〜〜〜〜っ!」
「だ・・・大丈夫ですか?マスター・・・。」
あわあわと慌てるキラに大丈夫だと言ってぶつかってきた緑を目で探すと『トリィ!』と鳴きながらそれはキラの頭の上を旋回してチョコンとキラの頭の上に落ち着く。
「・・・それがお前のマイクロユニットか。」
「はい。トリィです。」
『トリィ!』
キラの頭の上でパタパタと羽根を動かすマイクロユニットをちょっと睨む。
「・・・ハロ・・・じゃないんだな。」
「はい。トリィです。」
にこにこにこ。・・・なんか脱力。
「・・・はぁ、まぁいい。で、なんなんだ、お前は。」
「?僕はあなたのdollです。作者は天才と謳われた人形師、ユーレン・ヒビキです。」
「・・・”ユーレン・ヒビキ”・・・だと・・・?」
「はい。」
”ユーレン・ヒビキ”。dollの発案者にして天才人形師。彼の作品はとても美しく、まさしく『生き人形』と、までも呼ばれた。だが、そんな彼の作品は元々数が少なかった上に、何度も人手に渡ったため、所在不明とも、もう既に失われたとも言われていた。その天才の造ったdollが、『Kira』。
「・・・そんなdollが・・・なぜ俺のところに・・・?」
そう呟けばキラはやっぱりにっこりと微笑む。
「父さんは僕に幸せになれと言って、僕を眠りに付かせました。僕を選んで、僕と一緒に幸せになってくれる人に出会えるようにと。」
そして僕はマスターに出会うことができたんです。と、ありがとうございます。と、微笑むキラは、確かにあの天才が造った最高のdollだといわれてもおかしくないだろう。
「これから、よろしくお願いします。マスター。」
無邪気に笑うキラを、放り出すわけにも行かず(まぁそんな気もないが)。
「・・・マスターじゃない。イザークだ。」
「ほぇ?」
きょとん、と、目を丸くするキラに少し苦笑して、
「俺の名前はイザーク。イザーク・ジュールだ。”マスター”ではない。」
そういわれて少々考えてからようやく言われたことの意味を理解して嬉しそうに頷く。
「よろしくお願いします!イザーク!!」

”お迎え”はスーパードルフィー用語。どーしようか迷ってこれにしました。因みにキラのサイズは人間サイズ。・・・どんだけでかいトランクだったんだ・・・。
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