シンデレラ
昔々あるところに、キラと言うとても美しい少年がおりました。少年の父も母もその美しさに「男の格好をするなんてもったいない。」と言い、いつもとても綺麗なドレスを着せられ、少女のように美しく育ちました。当の本人のキラも「別にこの国では同性結婚も認められているし、男の子が女の子の格好をしても問題ないでしょ?」というように、あまり気にしていませんでした。
しかし、そんなある日、突然、キラの両親は事故で死んでしまいました。身寄りのなくなったキラは親戚の家に引き取られることになりました。そして引越しのその日。
「キラ!」
「え?」
家を出るといきなり見知らぬ少年に抱き付かれます。キラは何事かと目を白黒させます。
「何いきなり抱きついてんだこの変態。」
ドカ。回し蹴り。
「そうですわ。キラがびっくりしているでしょうv」
バキ。にっこり笑顔で右ストレート。
二つとももろにくらい、地面に突っ伏す少年をキラはわけがわからないと言った表情で見つめます。すると、少年に回し蹴りと右ストレートを食らわした金髪の少女と桃色の髪の少女がキラに近づいてきます。
「驚かして申し訳ありません。私たちはあなたを迎えに参りました。今日から一緒に生活いたしますラクスといいます。」
桃色の髪のラクスと名乗った少女はにっこりと微笑み、お辞儀をします。
「あたしはカガリだ。よろしく。ちなみにそこで伸びてるキラにいきなり抱きついたのはアスラン。」
金髪のカガリと名乗る少女は足元で未だに伸びているアスランと言う少年を一瞥してキラに握手を求めます。キラもつられてにっこりと微笑み、手を取り握手をします。
「こちらこそ、よろしくお願いしますv」
(((かわいいvv)))
いつ目を覚ましたんだかアスランを含む三人のそのときの心境は同じだったそうです。
それから、キラはラクス・カガリ・アスランの三人と共に生活していました。
ただ、一つだけ問題が。キラは戸籍上この三人と兄弟になったわけですがこの三人、キラに一目ぼれしたらしく、何かと言うとキラ争奪戦を繰り広げていました。傍から見ればかなりのブラコン。
「キラと出かけるのはあたしだ!邪魔をするな!」
「いいえ。私です!」
「俺が最初にキラと約束したんだ!お前たちこそ邪魔をするな!」
「皆仲良しだねぇ〜。」
キラは一人のほほんとその様子を眺めています。
そんな様子が、毎日のように繰り広げられていました。そんなある日。
お城からの招待状が届きました。このたび、この国の王子であるイザークの結婚相手を国中から探そうと言う趣旨の舞踏会が開かれると言うのです。
「興味はありませんけど、・・・国が手に入ればキラのハートもゲットできるかもしれませんわね。」
「ラクス!ずるいぞ!あたしも行く!」
「俺は興味ない。」
「アスラン、あなたは私たちのエスコートです。一緒に来ていただきます。」
「あの・・・僕は・・・。」
「キラはお留守番をしていてくださいな。舞踏会なんかに行って悪い虫が付いたら大変ですわ。」
「「うん。」」
そんなこんなでラクス・カガリ・(強制的に)アスランの三人はお城の舞踏会へと出かけていきました。
一人残されたキラは部屋でやることも無く暇です。
「・・・あぁ〜あ。僕も舞踏会って行ってみたいなぁ・・・。」
そのときです。窓から謎の光がキラの部屋に入ってきます。
「こんにちは!キラさん。」
光がしゃべります。
「僕はニコル。あなたが大切に育ててくれたユリの花の妖精ですv恩返しに願いをかなえにまいりましたv」
気が付くとそこには緑色の髪の少年が立っています。
「妖精さん・・・?」
「はいv」
ニコルはにっこりと微笑みます。
「キラさん、あなたの願いは何ですか?」
ニコルに聞かれて少し考えます。
「えっと、何でもかなえてくれるんですか?」
心配そうにキラは尋ねます。
「ええ。あんまり難しいのでなければ。」
「だったら・・・僕、今お城でやってる舞踏会に行ってみたい。・・・出来ますか?」
「お安い御用ですv」
ニコルは微笑みます。
「よかったぁvあ・・・でも僕留守番してなきゃいけないって言われて・・・僕が行ってるのばれたら・・・。」
心配そうに言うキラにニコルは微笑みます。
「大丈夫です。僕がキラさんだってわからないように変装させてあげればいいんですから。」
そういってニコルは持っていた杖を振ります。するとどうでしょう。キラは今まで来ていた白いワンピースではなく、純白のドレスを身に纏っていました。
「さて、外に出ましょうか。」
ニコルにつれられて外に出ると、そこにはいつの間にか白馬に引かれた大きなかぼちゃの馬車があります。
「さ。コレに乗って行ってくださいv」
ニコルは言います。
「ありがとう!妖精さんv」
キラはとってもうれしそうに二コルにお礼を言い馬車に乗ってお城へと向かいました。
「・・・あのブラコン達よりもお城の王子様とはっぴーえんどvのほうがキラさんには幸せですよね〜。」
とかなんとかニコルがつぶやいていたのは、誰も知らない。
お城の広間では華やかな舞踏会が行われていました。煌びやかなドレスを身に纏った少女たちはイザーク王子の気を引こうと必死です。
しかし、当のイザークはそんな様子など興味が無いようで。一人つまらなそうに頬杖を付いています。
「・・・イザーク。おまえさ、もうちょっと楽しそうに出来ないわけ?」
隣に控える金髪で色黒の従者が厭きれたように言います。
「うるさい腰抜け。俺はこんなものには興味はない。」
イザークはそう言って相変わらず不機嫌です。それもそのはず。このパーティは結婚に興味を示さないイザークに、いい加減結婚相手を見つけさせようと、母であるエザリアが無理やり開いたものでした。
「・・・そりゃぁなぁ、おまえ。もう、生まれたときからの幼馴染やってりゃお前の性格も、多少はわかってるぜ?でも、女王様の気持ちもわかってやれよ。」
金髪の青年は言います。
「・・・うるさいぞ、ディアッカ。いい加減にしろ。俺だって母上の気持ちはうれしい。ただ今ココに俺の気に入る者がいないだけだ。」
「・・・へいへい。うちの王子様はわがままですね。」
「うるさい!腰抜け!」
ザワ!
「「?」」
急に広間がざわつき始めます。何事かとイザークとディアッカが広間の入り口に目をやるとそこには純白のドレスを身に纏ったこの世のものとは思えないほど美しい少女が不安げな表情で立っています。
「・・・。」
「へ?イザーク?」
イザークはふらふらと、少女の姿に魅せられるように、少女に近づきます。
「姫。」
「え?」
「私と踊っていただけませんか?」
少女の手を取り、ワルツを踊り始めました。
最初は戸惑っていた少女もいつしかイザークと楽しげにワルツを踊っています。
「・・・イザーク王子はあのお方に一目ぼれしてしまわれたようですわね。」
「・・・みたいだな。」
「俺はキラ一筋だ。」
「「当たり前(だ・です)。」」
向こうのほうでラクスとカガリが悔しそうにその様子を眺めています。
「姫、お名前を教えていただけますか?」
そんなこととは露知らず。イザークはこの美しい少女をなんとか自分の妃に迎えたいと必死に話しかけます。
「えっと、僕・・・あの・・・。」
「僕?お前は少年か?」
そうです。その少女はキラだったのです。ニコルの魔法で純白のドレスを身に纏っていたし、髪も短い少年の髪から、とても美しい亜麻色の長い髪になっていたので、ラクスやカガリ、アスランも気が付きません。
そのときです。
ゴーン・・・ゴーン・・・
「!」
広間に十二時の鐘が鳴り響きます。キラの脳裏にニコルの言葉がよぎります。
『この魔法は時間制限があります。十二時の鐘がなり終わるまでに戻ってくださいね?出ないと、元の姿に戻ってしまいますよ?そうしたら、あなたも困るでしょう?』
キラは慌ててイザークの腕を振り払うと広間の外に駆け出します。
「!待ってくれ!」
イザークはキラを追いかけます。
カン。
「あ!」
慌てて走ったので靴が片方脱げてしまいました。広いに戻ろうかと後ろを振り返るとイザークはもうそこまで来ています。ココで戻ったら追いつかれてしまいます。キラは靴を諦めて闇の中へと駆けて行きました。
「・・・。」
イザークは残された靴の片方だけを拾い上げ、そこに立ち尽くしていました。
一方キラは、なんとか魔法が切れる前に城から抜け出し、森の中に立っていました。
「・・・さて。帰らなくちゃ。・・・ごめんね、お母様。靴片方無くしちゃった。」
片方だけ残ったガラスの靴。この靴だけは魔法ではなくキラのものでした。事故で亡くなった母親の形見の靴だったのです。
「なぁ〜イザーク。いい加減その仏頂面どうにかしてくれ。」
お城では相も変わらずイザークが不機嫌そうにしています。
「あのお姫様?が気になるのはわかったからさぁ〜。」
「うるさい腰抜け。」
相変わらずです。
「そんなに気になるんだったら探しに行けば?麗しのお姫様。」
ディアッカのその言葉を聞いたとたんイザークはいきなり椅子から立ち上がり、家来たちに叫びます。
「馬車を用意しろ!これから国中を回ってあの舞踏会の夜、俺が踊った姫を探しに行く!ディアッカ!もちろんお前も来るんだ!」
「・・・まじかよ。」
ディアッカは自分の言った言葉に少々後悔していました。
そしてとうとうイザークはキラの家にもやってきました。王子の手にはあのガラスの靴。
「えっと、王子は舞踏会の夜、この靴を履いていた姫を探しています。とりあえず、この靴がはける人をお妃候補にしたいと言っているので、履いてみてください。今のとこはける人は一人もいませんでした。この家が最後です。」
ディアッカはかったるそうに、事務的な言葉を並べます。
「まぁ、そうですの。・・・では、私から履かせていただきますわ。」
そういってラクスがガラスの靴に足を入れます。
「・・・ちょっときついですわね。」
ラクスの足には入りません。
「んじゃ、次はあたしだ。」
カガリも履いてみます。
「・・・う〜ん・・・あたしも無理だな。足が痛い。」
カガリにも無理なようです。
「・・・俺もはくのか?」
アスランが厭そうに眉をひそめます。
「・・・お前はいい。明らかに違う。」
イザークは一言で切って捨てました。
「・・・ここで最後か。あのこはいったいどこへ・・・。」
そのときです。物陰からこっそりとのぞいていたキラが前へ進み出ます。
「あの・・・その靴・・・僕にもはかせていただけますか?」
「「「キラ!」」」
その申し出にアスラン・ラクス・カガリは驚きます。
「キラ、あなたは舞踏会に行っていないのですから関係ないでしょう?」
「そうだぞキラ。」
「うん。うん。」
「いや、履いてみてくれ。」
「「「は?」」」
イザークの言葉に三人とも開いた口がふさがりません。
そのときイザークは確信していました。キラがあのときの姫であることを。
そしてキラがガラスの靴に足を入れると・・・ぴったりです。
「あ・・・履けました。」
「「「えー!」」」
そして、にっこりと微笑むキラにイザークも微笑みかけます。
「やはり、あなたがあのときの姫ですね。姿が違ってもあなたの瞳の輝きはあの時と同じだ。あなたの名前は・・・。」
「キラです。」
「キラ。素敵な名前だ。どうか、私の妃になっていただけないでしょうか?」
「・・・はいv」
なんかもう、幸せそうに二人だけの世界に入り込んじゃってるキラとイザークの間には誰も入っていけません。
「・・・悔しいですけど、キラの幸せが一番ですわね・・・。」
「・・・そだな・・・。」
「ああぁぁぁぁぁ・・・俺のキラ・・・。」
「「諦めなさい。」」
こうして、お城に迎えられたキラはイザークと末永く幸せに暮らしました。
「それにしても。どうやってキラはお城の舞踏会に行ったのでしょうか?」
「そこが謎だよな。」
「あぁぁぁぁぁぁ〜キラァ〜(号泣)」
「「五月蝿い(ですわよ)。」」
そこだけがラクス・カガリ(ついでにアスラン?)の永遠の謎として残されたそうです。
「やっぱキラさんの幸せが僕の幸せですv」
fin
明らかにシンデレラになってない感じが否めないシンデレラパロ。
なんかおばか三人組みって感じで(笑)。特にアスラン(爆)。
イザークとキラはラブラブです。
バカップル万歳(笑)。