白雪姫

昔々あるところにとても美しい王子様がおりました。
王子様の名前はキラといいましたがそれはそれはとても美しく、他の国のどんな姫よりも美しいので国中のものからキラは『白雪姫』と呼ばれ姫として育てられ、大変愛されていました。
そんなある日のことでした。

「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」
フレイ王妃は鏡に向かって尋ねます。王妃は魔女だったのです。すると鏡はこう答えました。
「一番美しいのは白雪姫と呼ばれ国中のものから愛されるキラ王子です。」
その言葉を聞いたフレイ王妃はとても怒りました。この世に自分より美しいものが存在することが許せない王妃は兵士に向かって叫びます。
「王子を!いえ、白雪姫を殺しておいで!証拠に姫の心臓を持っておいで!」
そう言って顔を真っ赤にして鏡の前を去りました。

キラは幼馴染の兵士であるアスランに森の中に連れてこられていました。アスランはキラにこう言います。
「キラ様、どうかお逃げください。王妃様はあなた様を殺そうとお思いです。」
それを聞いたキラは顔を青くします。
「・・・そんな・・・お義母様が・・・僕を・・・?」
アスランは真剣な顔つきで頷きます。
「・・・わかりました。では、ここでお別れですね。ありがとう、さようならアスラン。」
そう言ってキラは真っ白なドレスを閃かせ、森の奥へと消えていきました。

「・・・でも・・・どうしよう。」
森の奥へと逃げ込んだのはいいがどこへ行けばいいのかわからないキラは森の中をさまよいます。
「あ・・・。お家・・・。」
そこには小屋があります。戸をたたいてみても返事はありません。戸に鍵はかかっていないようなので悪いと思いながらもキラは中に入ります。
「・・・おじゃましま〜す。」
もちろん返事はありません。部屋の中には大きなテーブルに七つの椅子。七つのフカフカのベッド。そしておいしそうなパンがテーブルの上に置いてあります。
「・・・お腹すいた・・・。」
ずっと走り続けて何も食べていなかったキラは空腹を訴えるお腹を押さえます。
「一個だけなら・・・。」
そう呟くとキラはテーブルの上のパンを一つ取り食べ始めました。でも人というものは一つ・・・と思うと止まらなくなるもので。キラは置いてあったパンを半分ほど食べてしまいました。そして、
「・・・なんだか・・・眠くなってきちゃった・・・。」
満腹になり、安心したキラはベッドの一つに横になるとすぐに眠ってしまいました。

しばらくして。小屋の住人たちが帰ってきました。すると小屋の扉が少し開いています。
「ちょっとディアッカ!あんたが戸閉めたんでしょ!ちゃんと閉まってないわよ!泥棒でもはいったらどうすんのよ!」
どか!
茶色い髪の少女が金髪で肌の黒い青年に飛び蹴りをお見舞いします。顔面直撃。
「・・・俺はちゃんと閉めたぜ?」
顔に足型をつけたままディアッカと呼ばれた金髪の青年は答えます。
「どうでしょうかね。あんまり信用できませんが。」
「どういう意味だよ、ニコル。」
緑色の髪のニコルと呼ばれた少年は「そのままの意味ですよ。」と、にっこりと黒い微笑みをディアッカに向けました。
「中に入ってみればわかることですわ。食事の支度が遅れますわよ?」
「・・・はい。」
桃色の髪の少女の黒いオーラに負けたディアッカは戸を開けます。中に入り、明かりをつます。すると、ベッドには見知らぬ超☆美少女(?)。全員が顔を見合わせます。
「・・・誰?」
茶色い髪の少女が隣の茶色い髪の少年に尋ねます。
「・・・知らない?サイの知り合い?」
めがねの青年が首を横に振ります。
「じゃぁ、誰だ?」
金髪の気の強そうな少女が首をかしげます。
「・・・ん?」
そんなやり取りの中、人の気配に目を覚ましたキラがベッドから起き上がります。
「あ。起きた。」
ディアッカが呟きやり取りが中断します。そんな中でもまだキラの意識は半分夢の中らしくボーっとしています。
(((((((かわいい)))))))
全員の思考が一致したようです。
「わぁ!」
ようやく意識が夢の中から戻ってきたキラは目の前に七人もの人が立っているのをみてあわててベッドから飛びおります。
「ご・・・ごめんなさい!僕!あの・・・勝手に入って。お腹すいてて・・・パン、いっぱい食べちゃって・・・しかもベッドで寝ちゃったりして・・・あの、僕すぐ出て行きますから!」
「大丈夫ですわ。あなたのようなかわいらしい方がこんな森の中にいるなんて事情がおありでしょう?よろしかったらお聞かせしていただけますか?」
パニックを起こしかけていたキラは桃色の神の少女の言葉に落ち着きを取り戻した。
「・・・ありがとうございます。」
そしてキラは、自分が何者なのか、なぜここにいるのかなどをすべて話しました。

「なんて王妃なんだ!自分の子供を殺そうとするなんて!」
話が終わった後、そう叫んだのは金髪の少女でした。
「そうですね。ゆるせないです。」
ニコルも同意します。
「だったら、ココで暮らしたら?いいでしょ?ラクス。」
茶色い髪の少女が桃色の髪の少女に尋ねます。ラクスと呼ばれた桃色の髪の少女はにっこりと微笑んで頷きました。
「ええ。いいですわ。そのかわり、家事の手伝いをしていただきますけど・・・よろしいですか?」
思ってもみない申し出にキラは大喜びで首を縦に振ります。
「よろしくお願いいたしますわv・・・では、まずは自己紹介ですわね。私たちはこの森に暮らすドワーフ族の末裔ですわ。私はラクス。一応この家のリーダー・・・ということになっていますわ。」
にっこりと微笑むラクスにキラもつられて微笑み返します。
「あたしはカガリだ。よろしくな。」
金髪の気の強そうな少女が言います。
「あたしはミリアリア。ミリィでいいわ。皆そう呼ぶから。」
茶色い髪の少女が言います。
「俺はディアッカ。」
「僕はニコルです。」
「俺はトール。」
「俺はサイ。よろしく。」
金髪の青年、緑色の髪の少年、茶色い髪の少年、最後にめがねの青年が自己紹介をしました。そして最後に、
「それでは、改めまして。僕の名前はキラです。国では白雪姫って呼ばれてたけど、もう、お城を出たから姫じゃないし、キラって呼んでください。これからよろしくお願いします。」
亜麻色の髪を揺らしてお辞儀をします。
「ところで・・・。」
全員の自己紹介が終わったところでラクスが声を発します。
「キラは『僕』とおっしゃいましたわ。キラは・・・男の子ですの?」
「?うん。」
「「「「「「えーーーーーー!」」」」」」
疑問をぶつけたラクスを除く全員がすごい勢いで絶叫する中、何で皆が驚いているのかわからないといった表情でキラは首をかしげていました。

一方お城では、アスランの持ち帰ったシカの心臓をキラの心臓だと思い込んでいた王妃フレイは再び鏡の前に上機嫌で立っています。
「これで私が世界で一番美しい存在v」
フレイ王妃は鏡に尋ねます。
「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」
すると鏡は答えます。
「それは森のドワーフの小屋で暮らすキラです。」
フレイは怒ります。
「なぜ!あいつは死んだはずよ!」
鏡が答えます。
「キラは死んでなんかいない。ドワーフの小屋でドワーフたちと暮らしています。」
それを聞いたフレイはますます怒りをあらわにします。
「なんということなの!忌々しい!こうなったら私が直接殺してやる!」
フレイはそういって地下の秘密の部屋へと降りていきました。

そんなこととは知らず、キラはドワーフたちと平和に暮らしていました。
ミリィとディアッカの格闘(ミリィ圧勝)やニコルとラクスの黒いオーラに押される皆を見て笑ったり、カガリと樹に登ってラクスに心配されたり、サイやトールに薬草の知識を教えてもらったり。
平和に、平和に暮らしていました。
そして。その日はやってきました。
「では、私たちは出かけますから、留守番のほう、お願いいたしますわね。」
「うん。いってらっしゃい。」
その日は七日に一度、ドワーフたちが町へ行き、薬草や木細工を売り、食料を調達してくる日でした。
キラは皆が出かけると小屋の中に入り掃除や洗濯など、家事を始めます。家事がひと段落して、落ち着いていると
コンコン
戸をたたく音がします。
「はい。」
出てみると、そこには黒いローブを纏った果物売りの姿があります。
「今日は町で市があると聞いたのですが道がわからなくなってしまったのです。町まではどう行けばよろしいでしょうか。」
丁寧に尋ねてくる果物売りにキラも安心したのか丁寧に答えます。
「それでしたら、そこの道をまっすぐ行けば町に出られますよ。」
にっこりと微笑むキラは果物売りが不敵な笑みを浮かべているのが見えませんでした。そうです。果物売りは王妃フレイだったのです。
「ご親切にありがとうございます。お礼にりんごを一つどうぞ。」
果物売りに化けたフレイはキラに一つのりんごを渡します。
「わぁ、ありがとうございます。」
キラは大喜びでりんごを受け取ると、一口かじりました。
「あ・・・。」
りんごを飲み込んだ瞬間、キラはそのまま倒れこんでしまいました。そして眠ったように動かなくなってしまったのです。
「クスクス。これで本当にこのこは死んだ。今度こそ!本当にこの世で一番美しいのは私!」
そういいながらローブをはずし、フレイは城へと戻っていきました。

   日が傾き、西の空に太陽が沈みかけたころ、ドワーフたちが町から帰ってきました。そして、戸の外で倒れているキラをみて驚きます。
「キラ!」
カガリが駆け寄ります。そして、サイが息をしていないのを確認すると、カガリが泣きだします。
「・・・おそらく・・・原因はこのりんごですね。キラさんが言っていた王妃の仕業でしょう。」
キラの隣に落ちていたりんごを拾い上げ、ニコルが言います。
「・・・そうですわね。でも、今はキラを、部屋に運んで差し上げましょう。」
ラクスがそういい、キラはとりあえず、部屋のベッドに寝かされました。

   次の日。キラは花で飾ったガラスの棺に入れられていました。そして、最後の別れをしようと、ドワーフとともに森の動物たちが祈りをささげていたときでした。
「誰か、死んだのか?」
声のしたほうを振り向くと、そこには白い馬に乗った銀の髪の王子様がおりました。
「ええ。私たちとともに暮らしていた東の国の王子が王妃の嫉妬の呪いで死んでしまいました。」
ラクスが静かに告げると王子は悲しそうに言います。
「隣の国の王子と言えば、男子であるにもかかわらず、とても美しく白雪姫とと呼ばれ国民からも愛されていたと聞く。亡くなったというのは残念だ。私は西の国の王子イザーク。私も花を捧げよう。」
イザークはそういって、近くの樹の根元に咲いていた白い花を摘むとガラスの棺に近づきます。そして、棺に横たわるキラをみてイザークは息を呑みます。
白い肌、亜麻色の髪、薔薇のつぼみのような小さな唇。そしてその表情はまるで眠っているだけかのようです。
イザークは棺の隣にひざまづき、キラを抱き起こします。
「まるで、眠っているだけのようではないか・・・。」
そして、その薔薇のつぼみのような唇にそっと、口付けます。するとどうでしょう!キラの頬に赤みが戻ってきます。そして、閉じていた瞳が開かれ驚くイザークに声をかけます。
「・・・あなたは・・・どなたですか?」
アメジストの瞳に見つめられ、イザークはキラの虜になってしまいました。
「私は西の国の王子イザーク。あなたは東の国の白雪姫と呼ばれる王子と聞きました。白雪姫、私の妃になってはいただけないでしょうか。」
突然の申し出にキラは慌てます。
「え?あ・・・あの、僕、男の子ですよ?お妃様って女の子ですよね?それに僕もう、王子でもないですし・・・。」
そんな慌てるキラの肩にラクスが手を置きます。
「キラ、この方はあなたを助けてくださったのですよ。そんな方の申し出を断るなんてもったいないですわ。あなたは幸せになる権利を持っているのですよ。この方なら、あなたを幸せにしてくださいますわ。」
にっこりと微笑むラクスにキラも微笑み返します。
「・・・僕・・・幸せになっても、いいのかな?」
「「「「「「「あたりまえ(だ・です・でしょう)!」」」」」」」
「ありがとう。皆。」
ドワーフたちの力強い答えに本当にうれしそうにキラは微笑みます。
「・・・申し出・・・受けてくれるか?」
イザークの不安げな問いにキラは幸せそうな笑みで
「はい!」
大きく返事をしました。

キラはこの小屋に来たときに来ていた白いドレスを身に纏っていました。
「皆、今までありがとう。」
イザークの乗る馬に一緒に乗ったキラは馬の上からドワーフたちに声をかけます。
「結婚式には招待する。ぜひ参加してくれ。」
そういうイザークに再びキラは心配そうな顔をします。
「・・・でも・・・本当にいいんですか?僕・・・男の子・・・。」
「大丈夫だ。わが国は同姓同士の婚姻も認めている。子供だって、作ろうと思えば作れる。わが国の技術は発達しているからな。」
「だって。僕、幸せになるから。皆。元気でね。」
その言葉を最後にキラとイザークは西の国へと向かっていきました。

     「いっちゃったねぇ〜。」
ミリアリアが呟きます。
「うん。」
トールもキラとイザークが去っていったほうを見つめながら呟きます。
「・・・でも。」
ニコルが呟きます。
「私たちにはまだやるべきことが残っていますわ。」
ラクスが黒いオーラを発しながら言いました。
「そうだ。あたしたちのキラの幸せのためにやるべきことがな!」
カガリがこぶしを握り締めます。そして、それに全員が頷きました。

     「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは私よね?」
相変わらずフレイは鏡の前に立っていました。
「いいえ。この世で一番美しいのは西の国のイザーク王子の元にいるキラです。」
「なんですってーーーーー!」
部屋にフレイの絶叫が響き渡ります。
「なぜ・・・確実に殺したはずなのに・・・。薬の配合間違ったかしら・・・。今度こそ息の根を止めてやらなくちゃ・・・。」
フレイがぶつぶつと独り言を呟いていたそのとき。
「今度こそ・・・なんだって?フレイ。」
「!サイ!」
いつの間にかそこにはドワーフたちが並んでいました。
「・・・まったく。あたしたちは人殺しのために魔法を教えたわけじゃないんだけどなぁ。」
ミリアリアがフレイを睨み付けます。
「ミリィ。そんなににらみつけては、フレイがかわいそうですわよ?」
とかいいつつ、ラクスの後ろには黒いオーラが漂っています。
「俺たちのキラを殺そうとするなんて、いい度胸してるよな?」
拳を鳴らすディアッカ。
「たっぷりと、お仕置きが必要ですね。」
ラクスと同じ種類のブラックオーラを漂わせたニコル。
そして・・・
「いやーーーーーー!」
王妃の部屋にものすごい悲鳴が響き渡ったそうです。

      一方キラとイザークはドワーフたちと国中に祝福され結婚式を挙げ、末永く幸せに暮らしたそうです。
fin

白雪姫パロ。
小人たち強いです(笑)。そして黒いです(笑)。
そしてやっぱりイザークとキラはバカップルです。
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