独占欲とエゴイズム
雲雀さんが怒ってる。
表情はいつもと変わらない。でも怒っているのは分かる。纏う、雰囲気が、空気が違う。それもごくごく、些細な違い。分かる人にしか、わからない些細なもの。
「綱吉。」
ビクッ!
俺を呼ぶ雲雀さんの声が、怖い。
「おいで、綱吉。」
表情は、いつも俺に向けてくれる笑顔なのに、瞳が怖い。怒っている。原因は俺だ。俺が、何か気に障るようなことをしてしまったんだ。悪いのは、俺。後ろでわめく獄寺君を山本がなだめている。
「大丈夫だから二人とも。席に帰ってて。」
そう言って差し出された手をとれば、独占欲の強い俺の恋人は満足そうに微笑んでいる。その笑みで俺も少しほっとする。このあとおそらく”お仕置き”が待っているだろうが、それでもいい。独占欲の強いあなたに対して、これはただ、あなたに嫌われたくはないがための、俺のエゴ。その気になれば多分、獄寺君も山本も京子ちゃんもお兄さんもリボーンもランボもイーピンもフゥ太もビアンキも骸もクロームも・・・みんなみんな捨てられる。あなたがいればしれでいい。なんて、
「行くよ、綱吉。」
「はい。」
雲雀さんに手を引かれて歩く。あなたの独占欲と俺のエゴ。この二つで、ちょうどバランスが取れているのかもしれない。なんて思って、自嘲気味な笑みがこぼれた。
お互いにお互いがいればいい。