涙が流せるということ
――ボンゴレ十代目 沢田綱吉 死亡――
その知らせを聞いたとき、僕は自分の耳を疑った。
・・・あの子が、死んだ?
そんな馬鹿な。それしか思えなかった。確かに、入江正一と僕と、綱吉の三人で秘密裏に十年前の僕らを呼び寄せ、白蘭を倒す計画を立てていた。でも、その中にあの子が死ぬ、なんてモノは無かったはずだ。今すぐにでも入江のところに行って問い詰めてやりたい気分だったが、それをしたらせっかくのあの子の計画が無駄になる。
まだ、あの子の遺体を見ていない。嘘かもしれない。でもそんなのはありえないことは分かっている。それでも、嘘であってほしいという気持ちばかりが募る。
ミルフィオーレからあの子の遺体が、たくさんの白い華に包まれて帰ってきた。その表情はうっすらと微笑んでいて、あぁ、綱吉は本当に、十年前の僕らに、未来を託して眠ったんだ。
そう思った瞬間、涙がこぼれた。
『雲雀さんが泣いているところをって想像できませんね。』
『・・・何突然。』
『いえ、実際に泣いているところがあるのってランボと・・・獄寺君ぐらいだし、山本とかお兄さんはなんとなく想像付くんですよね。骸はまぁ・・・想像するだけ無駄っていうかなんかホラーなんで見たくも無いですけど。雲雀さんが涙を流しているところってどうやっても想像できないんですよね。』
『当たり前だよ。第一、泣く必要なんて無いからね。』
『あはは。でも泣けるって、涙が流せるって、大切なことですよ。泣いて、涙と一緒に苦しいことも流してくれる。泣けないのは、苦しいことです。』
『ふーん。別に僕はそんなの無いからいいけどね。』
『雲雀さんらしいです。』
あの子と交わしたそんな会話が蘇る。
ねぇ綱吉。この涙が流れきったら、僕は次に進めるよね。君との約束。白蘭を倒せば君が帰ってくると、信じてるから。だから、今は、涙を流させて。
涙が流せるということ
(もう君を失わないために)
未来編が始まるちょっと前な感じで。