3.黒に赤みがかった

数日でナルトは打ち解けた。態度は相変わらずおどおどした様子だが、そんな様子にも三人は愛しいものを扱うように接していた。
そんなある日。

「…明日は…『儀式』があるから…。」
明日の予定を話していたとき。ナルトがぼそりと呟いた。
「『儀式』?」
「うん…『御霊鎮めの儀』…。」
ナルトはおずおずとした態度で応える。
「…うん…だから来て欲しい…。」
青い瞳が三人を見つめる。
「火影様は?」
「一度連れて来いって…。見せておいた方がいいだろうって…。」
カカシの問いにナルトが応える。
「じゃ明日はそっち行こうか。」
カカシは相変わらずの何を考えているのかわからない笑い顔でナルトの言葉に応えた。その表情は嬉しそうな不安そうな、複雑な表情だった。

そして次の日。サスケたち三人は火影宅の隠し部屋にいた。そこには神社にあるような祭壇がもうけられており、部屋は暗く、明かりは部屋の四隅に置かれた蝋燭の明かりだけだった。そこに三人は並んで座っていた。

しはらくしてー火影がナルトを伴って部屋にはいってきた。その姿は金の髪に付け毛を足した長い髪を赤い組紐で束ね、赤みがかった黒い巫女装束を身に纏っている。右腕には金の鈴、左腕には銀の鈴を付けている。
サスケは目を見開いて驚いた。その姿はサスケが夢で見た姿そのものだった。
火影がナルトから離れ、脇に座る。
ナルトは祭壇の前に進み出る。そして−

―シャン―

ナルトが腕を振り上げる。鈴の音が部屋に響きわたる。ナルトが舞う度、部屋の空気が変質していく。気が付くとナルトの周りを無数の光の珠が漂っている。光の珠を伴い力強く、黒アゲハのごとくナルトは舞を舞う。そして

−シャン−

力強い鈴の音が響くと、光の珠は一斉に一カ所に集まり、そして消えた。

部屋を静寂が支配する。

部屋が明るくなった。三人ははっと我にかえる。祭壇の前に長い髪を結い、赤みがかった黒い巫女装束のナルトが立ち尽くしている。その表情は少々疲れが滲み出ている。
「ナルト…。」
サスケが恐る恐る声をかける。ナルトが振り向く。サスケはもうそれ以上声をかけることができなかった。その瞳はあの夢で見たのと同じ瞳だった。
「これが…ナルトの力じゃ。」
静かに火影が口を開いた。
「ナルトは舞によって魂を鎮め、天にかえす。そしてそれがこの『御霊鎮めの儀』じゃ。」
火影はしっかりと三人を見据える。
「どうじゃ。ナルトが恐ろしいか?」
少々悲しそうに訊ねる。
「!そんなこと!ナルト、すごい綺麗だったわ!恐ろしいなんて、そんなこと無いです!」
「あぁ。俺もサクラと同感だな。」
「そうだね。ナルトはナルトだしね。」
三人が口々に言う。その言葉に火影は表情を綻ばせる。
「そうか。ありがとう。」
火影は立ち上がり、ナルトに近づく。そして耳元で何かを囁くとナルトは全身から力が抜けたようにぐったりと火影にもたれ掛かる。思わず駆け寄ろうとする三人を火影は静かに制する。
「大丈夫じゃ。舞を舞っている間、ナルトは一種のトランス状態になっておるんでな。それを解いただけじゃ。明日はまたもとのナルトじゃ。安心せい。」
そう言いながら火影はナルトを優しく、愛おしそうに抱き上げる。
「さぁ三人とも今日は疲れたじゃろう。明日またナルトの相手をしてやってくれ。」
それだけ言うと火影は部屋を後にした。残された三人はどうすることもできず、結局それぞれ帰路についた。その間も三人は無言だった。本当にナルトは大丈夫だろうか。それだけが三人の心を支配していた。

次の日、本当にナルトはもとのナルトだった。
三人は安心していつものようにナルトと接した。

モノガタリはまだまだこれから…。

・・・お題に合ってない・・・!
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