一発の銃声が夜を切り裂く
パーン
銃声と共にクロヴィスの身体が傾ぐ。
その表情には驚きと悲しみとが混ざり合っていて。
倒れたクロヴィスを確認するとマントを翻し、部屋を後にする。
―クロヴィス異母兄様、もう諦めたらどうですか?―
―うぅぅう・・・ルルーシュは強いな・・・でも僕はまだ諦めないよ。また勝負してくれるかい?―
―はい、クロヴィス異母兄様!―
幼いころ、ともにチェスをした記憶が蘇る。
足の引っ張り合いばかりの中で、数少ない、仲の良かった異母兄弟。
共にチェス勝負をして、毎回ルルーシュが勝って、勝てないと分かっていても、それでも勝負を挑んでくる異母兄に苦笑する自分。
自分たち母子の絵も描いてもらった。
とても優しそうに微笑む母とナナリーと自分。
あの時間は、少なくとも本物だった。
―ああ、もう、あの時間には戻れない―
政庁を後にするルルーシュの頬には一筋の涙のあとだけが残されていた。
やたらルルーシュを泣かせるのが好きらしい(え)。