戦場に響く、天使の歌声

ユーフェミアは自分の騎士であるスザクの目を掻い潜って政庁を抜け出していた。
いつものドレス姿ではなく、動きやすいようにジーパンにタンクトップ。パーカーを羽織って、髪はウィッグで隠し、さらに帽子で隠す。ここまですれば誰も”ユーフェミア・リ・ブリタニア”だとは思わないだろう。
「(・・・思ったよりてこずってしまいましたね。でも・・・ルルーシュのプランがなかったら抜け出すことも出来ませんでしたわ・・・さすがルルーシュです)。」
そこまで考えて、ユーフェミアの顔には笑みが浮かぶ。自分達は敵のはず。それでも自分のことを心配し、さらには本当にたまにでも会ってくれる異母兄が大好きで、愛しくてしょうがなくて。

「ルルーシュ!」
待ち合わせの場所には既にルルーシュが待っていた。ルルーシュはユーフェミアの姿に気付くとやわらかい微笑を向ける。その微笑はルルーシュが本当に心を許した者だけに向けられるモノであることを、ユーフェミアは知っている。
「ユフィ、そんなに慌てると転ぶぞ。」
「だって、せっかくルルーシュと一緒にいられるんですから、少しでも長く一緒にいたいと思ってはいけません?」
ふふっと微笑って、二人は瓦礫に腰を下ろす。そこは、初めてルルーシュがまだ名も無いテロリスト集団に指示を出し、ブリタニア軍と戦ったあの場所。ルルーシュが”ギアス”という力を得、黒の騎士団とブリタニア軍という戦いの図式を作り上げるきっかけとなった場所。
「ねぇ、ルルーシュ。」
「何だ?」
「ルルーシュはやはり、ブリタニアが、お父様が許せませんか?」
暗に、皇族として戻ってこないかと言っている。ルルーシュはそんなユーフェミアに苦笑して、
「あぁ。俺は、母上を見捨て、俺とナナリーを否定し、日本に売った父上を、ブリタニアを許すことは出来ない。俺は、ブリタニアをぶっ壊すまで、止まれないんだ。」
そんなルルーシュを少し悲しげに三つ目、ユーフェミアは立ち上がる。
「ユフィ?」
「歌いましょう。」
にっこりと微笑む。
「歌いましょう。せめて私達の戦争によって命を落とした方々が、安らかな眠りにつけるように。」
少々驚いたような表情をしたが、すぐに微笑んで、ルルーシュも立ち上がり、ユーフェミアと共にうたを紡ぐ。それは命を落としていった同胞へ、顔も名も知らずに刃を交えた者たちへの鎮魂歌<レクイエム>。

―戦場だった荒地に、二人の天使の歌が響く―

ユフィ→ルルな感じで。
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