頬にこびり付く血の飛沫
夢を見ました。まだ私がブリタニアのアリエスの離宮で暮らしていた頃の。お兄様もお母様もいて。シュナイゼルお異母兄様とルルーシュお兄様がチェスの勝負をしていて、難しい顔でチェス盤を睨みつけるお兄様の姿を、クロヴィスお異母兄様が描いていたり。コゥ異母姉様がお母様とお茶をしながらKNFの戦術について議論をしていて(私にはとうてい理解できないものです)、私とユフィ異母姉様はお兄様たちに差し上げる花冠を作って。
皆が笑っていた頃。私達をよく思わない異母兄弟姉妹やそのお母様たちは怖かったけれど、お母様やお兄様が護ってくださっていた、あの頃。
夢の場面は唐突に変わります。
それは、お母様が私を抱きしめて、血にまみれた姿。私の頬にはお母様の血がこびりついて、私も足を撃たれて、動くことが出来ません。私は血を流し、私を抱きしめて動かなくなったお母様を目を見開いて見つめ、そして、
「いやぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!」
私は自分の声で目が覚めました。といっても、私の目は、開かないのですが。
「ナナリー?」
「あ・・・お兄様・・・。」
お兄様が心配そうに私の手を握ってくださっています。それだけで早鐘のように鳴り響いていた心臓の音は緩やかに落ち着きます。
「大丈夫かい?怖い夢でも見たのかい?」
「・・・いえ、大丈夫です。お兄様。」
お兄様に心配を掛けたくなくて、私は嘘をつきます。それでもお兄様は片手で私の手を握り、もう片方の手で頭をなでてくださいます。
「お兄様・・・お兄様は・・・どこにも行きませんよね。」
「あぁ、どこにも行かないよ。約束だ。」
あぁ、嘘つき。お兄様が何をしているか、ナナリーは知っています。そのせいでお兄様はどこかに行ってしまわれる。大好きなお兄様。それでも今は、そばにいてください。
ナナ→ルル。