怪盗と探偵
―『嘆きの天使』は盗品だったことが判明、怪盗ボンゴレの手により無事に元の持ち主へと返された―
そんな見出しが載った新聞を雲雀は眉間に皺を寄せて睨みつける。そしてポイッと放り投げ、ソファに沈み込む。
しばらくそうして気がつくとどうやら眠っていたらしく、すぐそばに人の気配を感じる。普通であれば人が近づけば眠っていようが気がつくはず。ここまで雲雀に気づかせずそばによってくる人物・・・は・・・、
「・・・毎回毎回ご苦労なことだよね、怪盗ボンゴレ。」
「やだな、恭弥さん。今の俺は”怪盗ボンゴレ”じゃなくてただの”沢田綱吉”ですよー。」
にへら、と琥珀の瞳を細めて綱吉は微笑む。
「ただの人間は窓から入ってこないよ。」
「あれ?バレました?」
「あたりまえでしょ。」
よく近所に気づかれないで入ってこられるよね。
呆れたように言う雲雀に、かって知ったるなんとやら。勝手に紅茶を入れて雲雀の目の前のソファに座る。
「俺を誰だと思ってるんですか?あの、かの有名な『怪盗ボンゴレ』ですよ?」
ふふと笑って紅茶に口をつける綱吉はその辺にいる普通の少年で。
「君は僕に捕まえて欲しいわけ?」
今はただの”沢田綱吉”だって言ったのはどの口だい?
机に乗り出してむにーっと綱吉の頬をひっぱる。
「ひょーひゃひゃんはおへをひはほほへふははへはいんへふは?」(※訳:恭弥さんは俺を今ここで捕まえたいんですか?)。
ぱっと手を離されて赤くなった頬をさすりながらちょっと上目遣いに雲雀を睨む。
・・・ちょっと萌え。
「まさか。僕は正々堂々、現場で君を捕まえるよ。そのために毎回君も予告状なんて面倒な物よこしてきてるんでしょ?」
「そーですね。あ、最初に俺が言ったことに対する条件、まだ本気ですか?」
なんだか思い出したようにどこかから出したクッキーをかじりながら首を傾げる。
それに対する雲雀はにやりと笑うのみ。綱吉はそれを見てちょっと頭を抱える。
「・・・絶対つかまってなんかやらない・・・!」
「ふふん、絶対捕まえて見せるから覚悟しておきなよね。」
夜は怪盗と探偵という敵対関係だけど、今、この時はただの友人として。穏やかな時間を過ごしたい。
管理人の『怪盗と探偵』のイメージは『怪盗セイントテール』(爆)。