王子と奴隷

―白―
そいつを最初に見たとき、真っ先に思ったのはそれだった。
髪も肌の色も雪のように白く、周りの雑多な色の中でとても輝いて見えた。
だから、手に入れたくなった。

「おい、モヤシ。」
「・・・アレンです。」
毎回俺たちの会話はこのやり取りから始まる。

”白”を手に入れ、奴隷市で売られていたぐらいだから名前なんてないだろうと、名前をつけてやろうとすれば”白”は自分は”アレン”という名があると言った。そのときのまっすぐな目に、胸が高鳴った。
「・・・ふん、『アレン』か。お前なんか『モヤシ』で十分だ。」
そう言ったとたんにあいつの顔は面白いくらいに歪んだ。だが、次に俺があいつを俺専属の世話係にすると言ったとたん面白いくらいに目を見開いて驚いていて。ころころと変わる表情が面白くて、思わず顔がにやけた。

「モヤシ。」
「だからアレンです。」
「出かける。用意をしろ。」
「・・・聞いてませんね・・・。いいです。そのうちちゃんと名前を呼ばせてみせます!」
ぐっと拳を握り締めてそんな宣言をしながらも俺が言ったことはちゃんと聞いていたらしく、外出の支度をするために一礼をして部屋を出る。

「『名前を呼ばせてみせる』、か・・・。」
呼べるかよ・・・。
心の中で呟いた言葉は誰にも気づかれることはない。

神田が超乙女・・・!
← 戻る