悪魔とエクソシスト

街のはずれにある森の中の洋館。蔦に覆われ、荒れ果て、誰も住む者もいないようなその場所に神田は立っていた。そして一つ溜息をつくと、館の中に足を踏み入れた。

コツコツと、ブーツが床を叩く音だけが響く。館の中は外観とは裏腹に、キチンと掃除がされ、清潔に保たれていた。神田はリビングがあるであろう扉の前に立つと思いっきり扉を開ける。そこにいたのは白髪の、左目に傷のある少年、アレン。
「・・・また来たんですか。しつこいですよねー。僕はここから出て行く気はないって言ってるのに。知ってますー?しつこい人って嫌われるんですよー。」
そう言いながらも「どうぞー。」とどこから出したのかテーブルにはティーセットとケーキ(ホールで)が並ぶ。
「あ、カンダは緑茶と和菓子のほうがいいんでしたっけ?」
そう言って左腕を一振りすると今度は緑茶と綺麗な和菓子が並ぶ。その様子にちょっと眉間に皺を寄せつつも神田はソファに座りアレンと向き合う。
「・・・おい、もやし。」
「アレンです。」
ホールケーキにそのままフォークを突き刺しながら間髪いれずに入る突っ込み。
「お前本当にここから出て行く気はないのか。」
「本当にしつこいですよね。ここ一月そればっかですよ。いい加減にしてください。もともとこの屋敷はマナが持っていたものを僕が受け継いだんですって言ってるじゃないですか。僕がこうなる前からここは僕のものです。
ぱくぱくとやけ食いの如くケーキを口に詰め込んでいくアレン。
「僕、別に街の人たちに迷惑かけてないのになんで出て行かなきゃいけないんですかー。」
「だから。街のお偉いさんがこの屋敷がほしーんだとよ。俺としてはお前みたいな人畜無害なヴァンパイアなんぞほっといていいと思うんだがな。」
「ですよねー。本当、ほっといてくれって感じですよー。」
そんな文句を言いつつもケーキを食べる手は止めない。
「はぁ。まぁいい。今日で契約は終了だ。お前とも今日でお別れだ。清々する。」
「・・・え?」
ポロッ、フォークからケーキが落ちる。
「何呆けた顔してやがる。お前、俺が来るのうっとおしかったんだろう。」
鼻で笑って立ち上がり、スタスタと扉へと向かう。
「じゃあな。次にまた別の奴が来るかもしんねぇけどそれなりに頑張れ。」
ひらひらと手を振って出て行こうとすると、
グイッ
「うぉ!」
羽織っていたコートを引っ張られて神田は後ろにのけぞる。
「・・・何しやがるモヤシ!」
「アレンです。・・・もう・・・神田は来なくなっちゃうんですか?」
ふるふると震えてちょっと涙目になりながら見上げてくるアレンはさながら捨てられた子犬といったところで。
「・・・うっとおしいんじゃなかったのかよ。」
「え・・・あ・・・う・・・。」
そのまま俯いて黙り込んでしまったアレンに神田は一つ溜息をついてアレンの頭をなでる。
「・・・ほえ?」
「・・・茶菓子用意しとけ。たまには来てやる。」
「本当ですか!」
ぱぁっと花が飛ぶ勢いの笑顔で顔を上げればそれを直視してしまった神田はちょっとときめいた。が、自分では認めたくないといった様子でふいっと顔をそらす。
「・・・仕事がないときだけだ。」
「それでいいです!待ってますから!」
にこにこにこと満面の笑みで見送られて、神田は自分の行動にちょっと驚きつつも、面白いからいいかと自己完結。

それからもヴァンパイアとエクソシストの奇妙なお茶会はたびたび開かれていた。

あ、アレンはみたらし団子だった(爆)。
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