全てお気に召すまま

コンコン
「どうぞー。」
「失礼します。」
十年前からは想像もできない、立派なマフィアの十代目となったツナは持っていた書類から目を離し、入ってきた人物に微笑みかける。
「お帰り隼人。首尾は?」
「問題ありません。」
報告書です。
そう言って渡された書類にさっと目を通す。
「うん、上々。次の任務までゆっくり休んで。」
「はい。」
ぱたん
閉めた扉を背に獄寺は自嘲気味に嘲笑う。
今回の任務はボンゴレに麻薬取引を持ち込んできた新参マフィアの殲滅。ボンゴレは代々麻薬を徹底的に嫌ってきた。ツナも例外なく麻薬を嫌う。そんなツナに麻薬取引を持ち込んだマフィアは当然の如くツナの逆鱗に触れた。
「(十代目・・・)。」
この十年でツナは人を殺すことにためらいがなくなった。もちろん、ボンゴレに仇成すもの、社会に害を与えるものと判断されたものに限るが、それでもツナにとって”悪”と判断されればそれは跡形もなく消し去られる対象となる。
そのことを獄寺は、今は喜んでいいのか悪いのかわからなくなっていた。

十年前の、はにかんだ様に笑うツナが好きだった。自分が山本に突っかかったり、雲雀と骸が顔を合わせるなり戦い始めるのを慌ててとめる姿が愛しかった。笹川兄の言動に苦笑して、泣き出すランボをなだめる姿が微笑ましかった。

では、今のツナが嫌いかと問われればそうではない。むしろ今のツナの姿は、獄寺が十年前から望み続けたものだ。
だから、

「(十代目・・・
あなたのお気に召すままに・・・)。」

自分は、どこまでも着いていく。たとえそれが地獄の果てだとしても。

いろいろと矛盾だらけの気もしなくもない・・・!