秩序様のお気に召すまま
「…沢田…何、その格好…」
地を這う様な言葉に、どっきんこ心臓を跳ねさせた綱吉は、錆びていそうな動きで振り向いた。
「…っ…ひ…ひひ…ひばりしゃん…」
お盆を手に、今日はちゃんと性別に適っているといえば正しくそうであろう格好をした少女は、ぷるぷる震えながら雲雀を振り仰いだ。
髪が短い事以外はアメリカの手広くやっている会社のアニメーションの不思議の国のアリスその物の格好をした、綱吉は、零れ落ちるんじゃないかという位大きな瞳をちょっと潤ませ、あぅあぅと言いよどむ。どうやら雲雀の機嫌の悪い声に、竦んだらしい。
「っ手前雲雀!!何しに来やがった!!」
叫んで駆けて来た綱吉の金魚の糞…もとい、自称右腕である獄寺 隼人の格好に、さしもの雲雀も切れ長の双眸を瞠った。
綱吉の女装は見たことがある為耐性があったが、銀髪美少年(実際には違うが、現在知るのは沢田母娘とその家庭教師とハルのみであるので)の姿はそれだけのインパクトを持っていた。
「誰かっ、塩!塩持ってこい塩!!」
イタリア生まれのイタリア育ちなのに、妙に色々知っている獄寺は、そう教室内に向って言いつつ、格子柄の着物の裾をばっさばっさといわせて綱吉の所へ行き、小柄なを背に庇い雲雀に対峙する。
「ご、獄寺くんっ」
「大丈夫ですか、十代目!!」
綱吉にのみ心配性なのは何時ものことだが、その格好が何時もとギャップが在りすぎて驚きに固まる雲雀を、着物にサロンエプロンと古風な女給さんスタイルの獄寺はキッと睨みつけた。
その灰味の強い緑の瞳がどうしても浮いて見えてしまうからと、あえて鬘ではなく地毛でやらせた花の判断は正解だっただろう。中性的な欧亜混血の美貌に、クラシカルなスタイルがミスマッチと思いきや寧ろ粋というかキッチュな魅力を生んでいる。
アリスなロリロリ美少女?を庇うハーフの美少女?女給さんvs最強にして最凶の風紀委員長という、恐ろしいのと同等に面白そうな出来事に、クレーター状にギャラリーが出来てしまっていた。
「おっ、よぉ、雲雀!」
ニカッと笑ってひらり手を振りやって来た山本 武の姿に、三人目ともなればようやくどういう状況なのか解ってくる。
中学一年生にして百七十を越える長身の少年は、浅葱色の羽織りに袴という格好をしていたので。お約束のダンダラ模様からして、新撰組のコスプレなのだと一目で解った。
続いての赤頭巾ちゃんの格好をした学校一との呼声も高い美少女の登場に、大衆の意識はそちらへ向いた。
「はい、獄寺君」
ニコニコしながら獄寺のリクエストに答えて素直に塩を持って来てしまう笹川 京子の強心臓に、そうして誰もが絶句した。
1‐Aがやる模擬店は喫茶店と出ていた。
文化祭でその手のをやる時は、女子がウエイトレスをする事が多い。ので、男装を余儀なくされている綱吉は裏方だろうと思っていた。
が、実際蓋を開けてみれば―――
「コスプレ喫茶なんです…」
しかも引いたクジによって、男装女装際物入り乱れての。
折角並中二大モテ男がいるのだから、それを出さない手はない―――言い切った花の主導は女子全員の大賛成を得て、コンセプトはそう決まり。
誤算かと後悔されたクジで獄寺が『女給さん』を引き当ててしまったが、元がいいから出来上がってみれば大変な美少女ぶりを発揮し、ファンを喜ばせるやら悔しがらせるやら。『駄目ツナ』の『美少女』っぷりもそう。
山本の新撰組衣装も、定番にして良くぞ引いてくれましたという位よく似合っている。
「…ふぅん」
並盛の支配者の権限とでも言いそうに、窓際の席と共に綱吉を捕まえ―――お膝に乗っけて、雲雀は紅茶を飲む。
見てません見えてません何もいいません―――地獄の沈黙落ちるこの時、『コスプレ喫茶A』に居た大多数の人間は、そう思考を一致させていた。
「放せ山本!!っ〜十代目がああああああああぁっ!!!」
叫び暴れる獄寺をいつも通り「まーまー」と山本が取り押さえ、「沢田君と雲雀さん仲良しなんだねー」と天然炸裂京子がのほほんと言ったりする以外は。
「十代目がっ雲雀の野郎の毒牙にぃぃぃぃっッ!!」
獄寺の血を吐くような叫びもあって、雲雀 恭弥男色家疑惑がひっそり並中で流れたとか、草壁によって揉消されたとか…
「あれ、このクッキー君のお手製?」
「あ、はい。あの、レシピとか作って、おれも京子ちゃんたちと一緒に作りました」
「そう、楽しかったかい」
「…はいっ」
絶賛日参中な携帯サイト
雪月花
の雨里様からキリリクでいただきました。「青天(『雪月花』で連載中ヒバツナ♀連載)で文化祭で劇をやることになったツナのクラスで男女入り乱れての配役をしたらツナがヒロインになっていしまい、それを知った雲雀様のご機嫌は急降下」というリクエストでした。劇ではないですが、もう、ツナのアリスとか獄寺君(♀)の女給さんとか山本の新撰組とかぐっじょぶです!京子ちゃんもあかずきんちゃんとか超似合いそう・・・!最強・・・!ぐっじょぶです!
← 戻る