取引

「よお、恭弥」
 馴れ馴れしく呼んでくる金髪のイタリア男に、雲雀は顔を顰めた。
 すぅぅっと細まった眼差しに、草壁ははらはらする。
 はっきり言って本日の風紀委員長様の機嫌は悪い。
「…何、貴方」
 低〜い声に、人好きのする笑顔を持った甘い美貌の青年はこてっと首を傾げる。
「あれ、忘れちまったか?」
 雲雀 恭弥の不機嫌オーラを物ともせず、青年はへらっと笑って少し斜めった事を言う。
「……馬鹿にしないで。憶えてはいる。あの子の自称兄弟子でしょ」
「自称じゃねーって!」
 言いながら、ディーノは問う。
「…指輪、来てるだろ?」

 雲の守護者候補となった少年は、ああと呟く。
「この不審物のこと?はい、持って帰れば」
 僕忙しいから、じゃあ―――雲雀はぽいっとッディーノに雲のハーフボンゴレリングを放って寄越して。
「って、のわ…っ」
 投げて寄越された指輪を少し焦りながらディーノは受け止める。
 ちょっとやそっとで傷つくような可愛げのある物ではないが、そこに宿った歴史の重みだのという色々から転がすような真似は躊躇われたので。
「おい、恭弥ちょっと聴けって!」
 言ったディーノは、不機嫌にソファーに座る雲雀の前―――ローテーブルにででんと乗る物に、そこで気づいた。
 フゥ太と変わらないくらいの大きな包みと、四角い箱に。
 どちらにも、ふんわりと赤いリボンが掛けられていて。
「…プレゼントか?」
 誰に?―――言いかけて、はたと気づいた。
 恐怖の家庭教師様の生誕日と、いつだか話していて聞いた綱吉の誕生日が一日違いだというびっくりな事実に。
 そして―――
「って、昨日リボーンの誕生日だったあっ!!!!」
 先ず言ってしまうのは、恐怖が骨身に染み付いているから。
「…そーだね」
 不機嫌に言う少年に、木石ではないディーノは気づいた。
 はは〜んと生温く笑って、彼は弟子となる少年に肩を組んでぽふぽふ叩いた。馴れ馴れしいと、トンファー装備して襲われたが。
「いやいや、聞け少年よ」
 おにーさんに任せなさい―――まったり目線でいうディーノは馬鹿叔父を髣髴とさせ、雲雀 恭弥をかなり苛っとさせた。
「可愛い弟子の為だ。ここはこのディーノおにーさんが一肌脱ごうじゃねぇか」
「誰が弟子だよ。勝手な事抜かすなタレ目」
 この男、なんか時代劇でも見やがったかなぁと思いながら、雲雀はトンファー振り回して連続攻撃を続けたが、憎たらしい事に腐ってもかの赤ん坊の弟子ということか、飄々と男は交わし続ける。
 かなりむかっ腹が立つ。
 なのににんまりとディーノは笑う。
「アレ」
 くいっとディーノは綺麗に包装された包み二つを指した。
「ツナにだろ」
 さも微笑ましいと言いたげな言い方に、カッと頬が熱くなる。
 目元を朱に染める白皙の美貌の少年に、ディーノは少しずるい大人の顔で笑って。
「イイこと教えてやる。だから、オレの話もちゃんと聞けよ」
 あいつに関係する重要なことなんだ―――真剣な眼差しに、暫し考えて。
「おまけもつけな。どうせ、あなたならあの子の居所、知ってるんでしょ」
 業腹だが、それには確信が持てた。今朝彼らが潜伏した中山外科病院跡までの綱吉の消息は確実なのだから。
 溜息吐いて譲歩した雲雀に、よしと、ディーノは肯いた。

絶賛日参中な携帯サイト雪月花の雨里様からキリリクでいただきました。「青天(『雪月花』で連載中ヒバツナ♀連載)でリング戦で綺麗にスルーされてしまったツナの誕生日を雲雀さんがお祝いするお話」です。ぐっじょぶ!もうね、この師弟コンビ大好きですよー(笑)。

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