もくひ。
「ジェラートを食べに行きたいんです!」
処はボンゴレの本城とミルフィオーレ本部。
奥様と姫様のそんなお言葉に、旦那様と守役兼側近は、顔を引き攣らせた。それなら厨房に命じて、何なら審査を重ねた製造者を招いて作らせる―――言った男共に、其々の姫君達は、ぷっくり頬を膨らませてお答えになられる。
「並んで屋台のを食べるのが醍醐味って、雑誌に書いてありました!!」
と。
割り出されてしまったその雑誌の出版元は、あわやイタリアの二大マフィアによって、滅ぼされる危機に瀕したとかしなかったとか。
「ユニちゃん!」
「都奈さん!!」
手を取り合い、二人の美少女はきゃぴきゃぴと挨拶を交わす。
「やあ、また君達がそちらの姫君の御守なんだね」
くつり笑っている、幼さに反してろうたけた美貌のボンゴレ霧の守護者な少女に、入江は苦笑して肩を竦めた。
「どーも…」
ひょこんと会釈するスパナに「……こんにちは…」とやや人見知りの凪も挨拶を返す。
何気にこの二人はテンションとかマイペースさが似ているなぁと、その保護…もとい友人二人は思った。
雑誌に紹介されたり観光名所の近場という立地のよさからも、その店は確かに小ささに反して大層込み合っていた。
「でもね、それで回転率高いのもあって、毎日作りたてで美味しいんですって!」
回転率…なんて、どう考えても雑誌の受け売りだな―――と家庭教師様辺りに小馬鹿にしながら言われそうな都奈は、にこにこ蕩けそうな笑顔で言う。
楽しみと、そのキラキラした瞳や薔薇色に上気した頬にも現れていて、なんとも微笑ましい限りである。こうして待ちつつも、並んでおしゃべりしながらならまた楽しいと、ファミリーを継いで以降はこうして街に出ることもままならなかったユニも、都奈に上機嫌で相槌を打つ。
周囲にさりげなく配備された警備からの連絡を受けながらも何時ものままの様子を崩さぬ正子や、敵対者には霧の術が発動するよう念入りな準備をしてきた故にどんと構えたマーモンの努力も報われよう。
「あ〜、もう、どのフレーバー食べようかな〜?」
身もだえ一歩手前というそわそわした様子で言う都奈に、そうですねとユニも行列の先頭をひょこっと覗いて見ながら肯いて。
「僕は勿論チョコラート!」
にこっと珍しく少女らしく笑んで言うマーモンに、「わたしも…」と凪が重ねる。
「…チョコのとか、チョコチップのとか…種類あるから…」
何気にリサーチは万全なんですねと苦笑する正子の心を読んだか、ゴシックファッションの美少女はこてっっと首を傾げて見せる。
「兄様が…」
くれたのと、凪は鞄からごぞごそ紙を取り出して広げた。
「…」
思わず絶句してしまう程に見事な、カラフルな手書きの絵入りの味の感想入りのメモが、それにはプリントされていた。
Webのページタイトルはパイナポー通信となっていて―――思わず皆、個性的な髪型をした美貌の青年を思い浮かべてしまう。
十中八九、彼の趣味のブログだったりするのだろうなー…と、皆が皆、都奈でさえ思った。
凪が持ってきたお勧め付きのメモを見ながら、あーだこーだと皆オーダーを考えた。脳の栄養は糖分…ということで、正子もスパナも結構甘い物を好むから、ついついと。
「ベリー入りのフローズンヨーグルトとティラミス、どっちにしようかな…」
正子が考え込むと、肩にミニチュアモスカを乗っけたスパナが「ウチは苺。苺味好きだから。」と、何時も通り淡々と言う。
「私はバニラにします。王道は押さえておきたいですから」
おっとりとだが、それもありかと思わず思ってしまう力強さを持つユニの言葉に、生真面目な正子はちょっと考え込んだり。
そんな感じに、わいのわいの言っている間に、どんどん行列は流れていくのだった。
「それでね、それでねっ、ジェラートもすっごくおいしかったし、とっても楽しかったんです!」
きゃぴきゃぴと、それは嬉しそうに楽しそうに都奈は本日の出来事を旦那様に報告した。
その純真なキラキラ笑顔に、ザンザスのなけなしの罪悪感がちくちく胸を痛ませた。
これでは、冗談にも言えないではないか。
スパナが堂々とお供に連れた、おもちゃサイズのモスカが、実は録画機能付きだったなんて
後日ボンゴレとミルフィオーレの有志によって、上映会をする予定だなんて…
鉄面皮という名のポーカーフェイスに、この時ばかりは大感謝をして、ザンザスは若奥様に生返事を返しつつ、バーボンをちびちび呑った。
絶賛日参中な携帯サイト
雪月花
の雨里様からキリリクでいただきました。「どるちぇ(『雪月花』で連載中ザンツナ♀連載)設定でツナとユニの女の子同士のショッピング(+α)」というリクエストでした。あーもう超可愛いvv
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