女難?

きっとリボーンが来る前の自分は、こういう感じだったんじゃなかろうか。
 その子を見た時、綱吉は思った。


 激しく個性的というか、とんでもなSHITT・P!の、ある意味とばっちりなんじゃないかなという、先生からの
「声が小さい!!」
 だのの復唱を促す叱咤に、あれは言われると辛いと、内気なことに変わりない綱吉はオロオロしてしまう。
 助け舟を出したいけれど出せない―――でも、そう、根津先生にいびられていた自分を助けてくれた時の山本みたいになりたい。
 思って、綱吉が息を吸い込んだ時、教卓に近い席から、柔らかいソプラノが朗らかに上がった。

「小里さん?良い名前だね」

 ちゃんと聞こえますよ、先生―――にこにこと、エンジェルスマイルで京子が嫌な空気を晴らす。
 赤味掛かった髪をした俯きがちのその子は、伏し目がちの双眸で一度瞬いて―――

 席に着くようにと咳払いして促す教師の示唆に従い動く中、京子の席の傍らをすれ違い様、彼女はぺこんと会釈した。
 長くて量も多い髪の毛からちらっと覗く耳が、真っ赤だった。

 この子と友達になりたいなと思った。

友達になりたいなと思った。
 でも、果てさて具体的には如何すれば良いのだろうと、綱吉はムムっと悩んだ。
 現状綱吉は男の子として生活を送っているのである。
 お友達になろうと話しかける男子だなんて、内気な女の子からしたら要警戒注意人物になりかねない。また、綱吉もそれがさらっと出来るようなタイプでもない。
 応接室でのランチタイム、うんうん悩んでいた。
「…綱吉」
 何悩んでるの?と綱吉進呈の手作り弁当を食べていた並盛の秩序さまは、秀眉を顰めた。
 未来でした(させられた)、週の半分(雲雀は本当は毎日と言ったが、それに獄寺が切れた為の折中案である)お弁当を作ってきて一緒に食べるという約束を実行中―――雲雀としたら綱吉と過せる数少ない一時だ。
 その貴重な時間に、一体何を思い悩んだりしているのだろう。
「ひばりさん…」
 にんじんの甘煮をもきゅもきゅ食べながら、綱吉は思案顔で言ってきた。
「転校生の子と、仲良くなりたいんです。…でも、どうすればいいのか解んなくって…」
 おれ、やっぱり駄目ツナですね―――しょんぼり肩を落とす男装の少女の憂いの溜息に、内容と相俟って雲雀はかなり苛っとした。

 綱吉のクラスに来た転校生はいずれも女子だと確認して、少しは気持ちが治まった。

…のも束の間、腹立たしい女の来訪を受けてその日の雲雀 恭弥の機嫌は再びの落ち込みを見せたが。

取り合えず帰りがけに馬鹿叔父のマンションを襲撃してストレス発散を試みてみたりした。
「まあ、ちょうど運動不足だったからね〜」
 いくつか痣を作ったものの、クリティカルヒットをさせない試合巧者な章久の飄々とし加減は何時も通りだ。
「…章久さん…大丈夫?」
「大丈夫大丈夫〜」
 へらっと笑う章久に、ほっとした顔をする少女。
 ムカツク女―――名を口にするのも腹立たしい六道 骸の影である少女の儚い姿を眼にして、結局また少し苛々してしまう。
 ああ、自分は女難の相でも出ているのだろうかと、思わず思った。
 馬鹿母(「だぁれが馬鹿じゃ、このアホ恭弥!!」とハイキックかましてくる想像が過ぎった)に
 毒蛇女(「くっふふふ…、地獄道かまされたいですか?雲雀 恭弥」脳内に不法侵入して来たのを咬み殺して処理)に
 今日の粛清委員会を名乗る女―――
 ああ、綱吉に癒されたいと思いながら、章久と黒曜の三人と夕飯を食べた。妙な面子だなぁとは思いつつ。
 洋食だったのにはむかつくが、相変わらずまあまあ美味かった。

絶賛日参中な携帯サイト雪月花の雨里様からキリリクでいただきました。「青天(『雪月花』で連載中ヒバツナ♀連載)で継承式編で、炎真君となんか仲良しなツナにご機嫌斜めな雲雀さん」です。ふふふ・・・なーもう!楽しい!!(落ち着け)。

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