チョイス間違い。

「いい加減にしてください、白蘭さん!!!」
 普段は青白いぐらいの面を染めて怒る正子に、白蘭はきょとんとして瞬いた。
 女の子って…というか、ジャッポーネの女の子?うん、正子に限ってだから、きっとそう―――ジャッポーネの女の子の考えてることって解んないと、白蘭は珍しく考え込んで。
 本日のおやつであるスペシャルパフェは大層美味だが、それをあんにゅいに突付く上司に、「どうかなさったんですか白蘭様?」と、側仕えのレオナルドは問うてくる。
「ん〜」
 曖昧に返しながら、まぐまぐと脳の栄養たる甘味を食していたのが良かったか、そうだと白蘭は閃いたのだ。


「ザッンザッスく〜ん」
 ひらひらひら〜と手を振りながら寄って来るマシュマロ怪人…もとい、ドン・ミルフィオーレ・白蘭に、ドン・ボンゴレ・ザンザスはひくり顔を引きつらせた。
 嫌な予感はかなりしていた。
 だが、実際にそうなってみると、かなり複雑だ。来るんじゃなかったと思った。

「それでねそれでね?聞いてよザンザスくん!」
 正ちゃんたらね〜―――オレはいつからこのマシュマロ野郎の愚痴聞き係になったんだろうと、眉間にくっきり縦皺を刻みながら、ザンザスはエスプレッソを啜る。

「君の奥さんの都奈ちゃん、ジャッポネーゼでしょ?だったらジャッポーネの女の子の気持ちとか解るよね!!」
 などと、いきなり言い出したかと思えば、自分をラウンジに引っ張ってきて延々取り様によっては、それは惚気なんではなかろうかという愚痴なんだか世間話なんだか相談なんだか良く解らん話を、延々延々聞かされるザンザスの堪忍袋の緒は今にも切れそうだ。
 周囲はいつその手に憤怒の炎が灯るだとか、すわXの刻まれた拳銃が今にも火を噴くのではと冷や冷やしている。  実際、そうしたい気持ちはたっぷりあった。

 我慢したのは、目の前のマシュマロ男―――ではなく、ミルフィオーレのナンバー2であるユニや、白蘭に振り回されまくっている入江 正子等の為である。
 ひいては、彼女等と仲の良い、己が妻を憚って…という実態は、知らぬが仏だろう。いや、ボンゴレ十代目夫妻の実態を知っている面々は、十二分に理解しているが。

 このゴスパン甘味大王がどうなっても構わない。
 いっそボコボコに蛸殴りにしてやりたい気分だが、そうして抗争-ケンカ-になったら、ユニ等と会えなくなって都奈が悲しむだろうと理性を動員している。
 『大人になって…』とやんちゃ時代を知る面々を微笑ましがらせている由縁だ。


ザンザスの愛妻ぶりに起因する理性の箍も、いい加減外れそうになる直前、白蘭の警護班から連絡を受けて駆けつけた入江 正子が、何時も通りマイペースな上司にどかんと雷を落とした。属性云々を横に置いておくとしたら、思わずミルフィオーレを辞めるようなら内の雷として来いと、勧誘したくなるほどの見事さだった。
「申し訳ありません、ドン・ボンゴレ」
 深々とザンザスに頭を下げる正子に、ぶーぶーと不満そうな白蘭は、自業自得もいいところでギロリ睨まれ「びゃ〜く〜らぁんーさぁあん〜…っ」と凄まれている。何処吹く風と、寧ろ構ってもらえて嬉しそうにへらへらしているが。
 成る程と、ザンザスの警護として控えて話を聞いていたスペルビ・スクアーロ及びレヴィ・ア・タンの夫妻は、その夜ミルフィオーレの恋人達の問題点だのを、苦笑交じりにまったり語りあった。




「聞いてスパナ!!」
「あれ、正子、今度は如何したんだ?」
「も〜〜〜〜っ、白蘭さんがまた問題を起こすの!今度はドン・ボンゴレに…!」
 ふーんそーなのかー―――と仕事の片手間でも愚痴を聞いてくれるスパナに、正子は正子で泣きつく。


 結局、白蘭が根本的に相談相手を間違っているのは、誰がどう見ても明白なのだった。

絶賛日参中な携帯サイト雪月花の雨里様からキリリクでいただきました。「どるちぇ(『雪月花』で連載中ザンツナ♀連載)設定で同窓会(行った先でミルフィの会合があったりしていつの間にか混ざってたりetc)」というリクエストでした。超楽しい・・・!びゃっくんはこうでなくちゃ!(笑)。

← 戻る