のそりと動きながら、重い足どりで体育館に向かう巨神兵が一人。その手には大量のまいう棒。
「はぁ〜練習とかマジでだるいし…赤ちんがいなければサボるんだけどー」
「紫原くん、赤司くんに聞かれたら練習倍になりますよ」
何だか下の方で声が聞こえた。見ると、ソーダ色のチームメイトが立っている。
「あれ?黒ちんじゃん?気づかなかった」
「こんにちは、紫原くん。毎日毎日よくお菓子食べますね」
「いいじゃん〜別に。俺、お菓子ないと動けないしー大体ただでさえ、これからだるくなるから、えいようほきゅう?」
「ちゃんと漢字で言ってください」
そう言って紫原の横を通り過ぎようとした黒子だったが、
「何か、良い臭いする〜?」
何故か、自分を抱きしめてくる紫原に行く手をとめられてしまった。
「…重いです。どいて下さい…」
「黒ちんー何か甘い臭いすんねー?実は黒ちんってお菓子で出来てる?」
「そんな訳ないでしょう。さっきの授業が家庭科だったんです。調理実習で作ったんですよ」
鞄をゴソゴソと漁りながら、黒子が出したのは水色リボンがついた、クッキーの入っている袋だった。
「おぉ……クッキー」
「紫原くん…どいてくれたら、これ上げますから」
「じゃあーどくー」
ようやく解放された黒子は安心し、早く早くと待っている、紫原に袋の中からクッキーを取り出し彼に渡そうとしたのだが、
「美味しそうーいただきまーす」
気づけば、紫原は大きな口でクッキーを食べてしまった。しかもクッキーを持っていた自分の、指もペロリと舐めていく始末。
「〜〜〜っむ、紫原くんっ!!」
「おいしー黒ちんの指も甘いー」
「………砂糖がついただけですよ…行儀悪いです」
「ねぇーもっとちょーだい」
「ダメです。皆さんにも分けるんですから」
「ケチー……じゃあ黒ちん食べたいな」
「えっ?」
チュと小さなリップ音と、ふにゅとした感触。目の前には彼の顔。一瞬何が起こったか、分からなくて、気付いた時には彼の唇は離れていた。
「……っな、な………」
「黒ちんって、甘くないけどマシュマロみたいだねー」
離れた彼の手には、さっきのクッキーが大量にあり、自分の手にはあと数枚しかなかった。
(やられたっ!?)
呆然としてる内に紫原は体育館にいってしまった。
「……後で絶対、仕返しします!!」
食べ物の恨みは恐ろしいのだと、彼に分からせなければなるまい!
よりに寄ってファーストキスの味がクッキーとまいう棒なんてっ!!ノーカウントだ!!
これは、まだまだ恋にすらならないある日の出来事。
オマケ
「おい、紫原何お前だけ、良いもん食ってんだよ!!」
「ずるいっすーそれ、黒子っちのクラスのっすよねー?!」
「やだしーあげないしー」
「コートに、菓子クズを落とすのでないのだよ!」
「お前ら、全員騒がしい。外周20周行ってこい」
「「「「えぇ―――!!!!」」」」
「何か、文句あるのか?」
「「「「ありません」」」」
「テツヤ、俺の分は?」
「すいません、ないです…」
「……そうか、じゃあ今度は俺の為に作ってもらおうかな?」
「赤司くん、笑顔で鋏をシャキシャキしないでください」
後日、クッキーを大量に作るハメになった黒子の姿があった。
お友達のみこのさんとリクエスト交換でいただきました!『黒子のバスケ』でお菓子の妖精の紫原君とバニラシェイクの天使の黒子っちくださいとおねがいしましたら…!GJですぅううううう!
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