全て敵ですか
五月蝿い。
神田のその一言が火種となって、食堂内は非常に険悪なムードになってしまった。
通常であれば憩いの場であるべきの場は、一瞬にして氷点下。
神田の隣で食事をしていたアレンは、深い深いため息をはくしかない。
角発散していた任務の愚痴を五月蝿いと云われた探索隊一同は、その一言によって怒りの矛先を当然神田へと変える。
「お前、五月蝿いとは何だよ!」
「五月蝿いから五月蝿いって云ってんだよ」
「………はぁ」
いつものパターン。
こんな場面を経験したのが初めてではなく、寧ろ日常的な風景だと割り切ろうとしたアレンであったが、すぐ隣からひしひしと殺気が漂ってくるのでは食が進まない。
なんでいっつも喧嘩なんてするんだろう、と小さく呟けば、神田は、てめぇは黙って食っとけよ、と云う。
無理です、とアレンはまたため息をはいた。
「っシカトすんじゃねぇ!!」
いつの間にか神田に何かを云っていたらしい探索隊の一人は、綺麗にスルーされた事に完全にぶち切れたらしい。拳を振り上げる。
「ち、」
神田が小さく舌打ちをしたのを聴いて、アレンは瞬時にテーブルに伏す。
鈍い音。男の体が重なりに重なった皿にがしゃんと突っ込んでしまう。
「──皿、弁償ですね」
「つっかかってくるコイツが悪ぃんだよ」
「てめぇよくも…!」
呆れ顔のアレンの前で、神田は何食わぬ顔で向かってくる男達を地に沈めていく。ちらと周囲を見れば、自分達の周りはクレーターのように人の波が開いていた。殴る音と短い呻き声が聴こえる度に、神田にかなわないのわかってるなら退けばいいのに、と他人事のような考えさえ湧いてくる。
ふぅ、と息をはいて食べかけだったパスタに手をつけた途端。
ぐあぁと断末魔のようなものが耳元でしたと思えば、男の体に押し潰されるかのごとく突き飛ばされた。次に感じたのは体を打ちつける鈍い痛み。気づけばアレンは床に沈んでいた。
「いっ、たたたた…」
酷いとばっちりだ。
今までに同じような状況にはなったが、自分に被害があったのは初めて。体の痛みはあまりないものの、今日は厄日なんだなぁと泣きたくなった。
起きるのももう嫌だ、と体を脱力させた時、神田と目が合った。驚愕したような、怒っているような目。思わず息をのんでしまう程の。
「──なに、やってんだよ」
神田の拳がぎりと震える。突然爆発した、チリと肌を震撼させる、殺気。
「よほど死にてぇらしいな、」
息をすることすら戒められるような空気。
その表情から余裕を消した神田は、ついに、刀の柄に手をかけた。このままでは、神田は本当に殺す。
「ちょ、神田、ちょっと落ち着いて下さい!」
「モヤシは黙って食っとけ!こいつら程度一瞬でぶっ殺してやる」
「違う違いますって、刀は駄目──!」
「っおい、モヤシ、」
なんとしても抜刀は阻止しなければいけない。
そう判断したアレンは、がばりと神田に飛びついた。
予想外の展開に、神田の殺気が一瞬にして四散する。
──そうこうしているうちに、いつの間にか食堂にいる人達は皆避難したらしく、そこにいるのはアレンと神田だけになっていた。あとには探索隊の荷物まで残っていて、その潔い逃走のあとがうかがえる。
それに気づかないアレンは、神田にしがみついて必死に駄目駄目と首を振るい続けるばかり。
獲物を逃がした、と深い呆れのため息をはいた神田は、未だに制止を続けるアレンの頭をこつんと叩く。
「おい、モヤシ」
「なんですか、止める気になりましたか!」
「もういねぇよ」
「──え、」
やっと気づいたのか、アレンは辺りを丸く見開いた目で見回す。クレーターもあの探索隊もいない。尻尾巻いて逃げやがった、と舌打ちすれば、あぁ、なんだ、と安心したようにふにゃりと笑った。
それからすぐに、きっ、と眉を寄せて。
「危ないから抜刀は止めて下さい!」
と、説教モード。
神田は、ぐ、と息を詰まらせて、わかったと小さく呟くしかない。
しかし、アレンは知らない。
神田が刀すら抜いてまで怒りを露わにしたのは、探索隊がアレンに危害を加えたからなのだ、と。
「おい、怪我してねぇか」
「怪我なんてしてません、話そらさないで下さい!」
「───────、」
「もう、次になんかしたら一緒にご飯食べませんよ」
「───────、」
全て敵ですか
(とりあえず怪我はなかったようなので彼は安心しましたとさ)
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の蒼木ユキコ様から強だt(ゲフン)基頂戴してまいりました!神アレ!神アレ!!すーてーきーでーすーvv
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