金色ハニィ!

「カカシ先生の修行、やっぱ、辛いってば……」


どかり。泥だらけになって地面に倒れ込み、荒い息を繰り返しながらナルトは空を仰いだ。

青、青、青。
その爽快な青さでいっきに疲れが吹き飛べばいいのに。情けなくもそう思ってしまうのは仕方がない。

対してそれを見下ろすカカシは、今までナルトと組み手をしていたにも関わらず息一つ乱さないで、目元だけで笑みを見せた。
口元が露わになっていない為その表情はよくわからないが、優しく細められる瞳から、あぁ、笑っているのだと。
そんな安心感。


「ま、お前に負けてちゃあ駄目だからね」

「でもさでもさ、手加減くらいしてってば、!」

「……それじゃあ修行の意味がないでしょうが」


呆れたようにため息を一つ。
ナルトは、ふにゃりと腑抜けた頬の緩め方をしたままで起き上がろうとしない。
起きろ、と視線のみを向けていたが、カカシ先生カカシ先生、名前を数回呼ばれ、仕方なく腰を下ろす。


「……少し休憩」

「やりぃ!俺の先生だってば!」


俺のセンセイ、ね。


僅かに瞼を伏せ、しかしすぐにまた柔らかな笑みを浮かべる。
その独特な表情の変え方に、あぁやっぱりなぁ、と小さくナルトが呟いた。


「カカシ先生ってばさ、優しくなったよな」

「…ん?俺は昔から優しかったんだけど」

「違うくて、何かこう、柔らかくなった?ってか」

「柔らかく、ねぇ」


正直、自分ではその変化に気づけない。
彼の云う昔とは、きっとサスケがまだ此処にいた頃で、自分が三人の教師をしていた時なのだろう。

きっと柔らかくなったのは、ナルトを大切だと思うようになったからだ。

本来英雄と呼ばれる筈が、自分勝手な大人達に忌み子のレッテルを貼られ人生を狂わされてしまった、哀れな子供。
しかし、それは憐れみ等ではなく。
彼を助けたいという、愛情にも似たものであって。


地面に力なく垂れていた片手を何気なく掴めば、ナルトは目をぱちくりした。小さな手。この手は今までに何人を救ったのだろうか。きっと自分もその一人だ。カカシは目を細め、やがてその手を離す。


「さぁて、修行再開するぞー」

「ええぇーもうちょい休みたいってば!」

「駄目、帰りに一楽連れてってあげるから頑張りなさい」

「おす、頑張るっす」



びし、と決められる潔いまでの敬礼。あぁお前の方こそ柔らかくなったんじゃないか。その表情の変化に、思わず口の端が緩む。

先生として見てきた少年は、既に一人で歩みを始めた。これから先、彼の瞳に世界はどう映るのだろう。
せめて、自分にある限られた時間の中で、彼が寂しいと思う事の有りませんように。



「誕生日だからな、今日はたくさん食べていいぞ」

「……え?ああぁ!!」


忘れてた!なんて途端に騒ぎ始めるので、カカシは手にしていた本を仕舞い込み、金色の頭に手を伸ばす。

生まれてきてくれてありがとう。
それは修行が終わってから云ってあげようか。




金色ハニィ!



(I'm happy to have been a part of your life.)

(Anyway, HAPPY BIRTHDAY!)

日参している携帯サイトMs.flangeの蒼木ユキコ様からフリーとのことだったので強だt(ゲフン)基頂戴してまいりました!カカナル!ナルトはぴばv

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