Happy Halloween

「Trick or treat!」
「………」
ゼロがラウンジに踏み込んだ瞬間お馬鹿'sからそんな言葉がかけられた。
無論、ゼロは仮面の下で呆れた表情をしている。
「おいおい、知らねぇのかよ?ハロウィンだぜ?」
玉城が両手を差し出しながら催促している。
他の団員はそんな光景をハラハラしながらも作業の手を止めて眺めていた。
「それくらい知っている。仕方ないな、ほら」
そう言ってゼロはマントの下から紙袋を取り出し、玉城に差し出した。
まさか本当に何か貰えると思っていなかった玉城はそのままの格好で固まった。
朝比奈も紙袋を見つめたまま固まっている。
「何だ、いらないのか?いらないのなら…「いる!」」
玉城に渡した紙袋を掴もうと手を伸ばしたら、凄い勢いで引っ込められた。
ゼロは首を傾げながらそんな彼らを見た。
「あの…ゼロ、玉城に何をあげたんですか?」
カレンもゼロが何を渡したのか気になって近くにやってきた。
「カレンも食べるといい。お菓子を作ったんだが多すぎてな、持ってきたんだ」
ゼロの手作り!とカレンは大喜びで玉城から紙袋を掻っ攫った。
そのままソファーへ行き、幹部に声を掛けた。
いくらなんでも団員全員分はないだろうとの見解。
紙袋を広げると、そこには型抜きクッキーや手で丸めたクッキーがいろいろ入っていた。
ハロウィンらしく彩ってあるクッキーもあった。
「ありがとうございます!可愛いですね、ゼロが考えたんですか?」
「あぁ。私の考えではそれが精一杯だったがな」
そうは言ってもこのクッキーを見て、もうちょっと考えろよな、何て言えるわけがない。
このまま店に並べて売ってもおかしくない出来栄えだった。
「おい、私にはないのか」
ラウンジの入り口でC.C.がピザをかじりながら文句を一言。
「…お前が今食べているピザは誰が作ったと思っている」
C.C.の食べているピザを見ると、かぼちゃがトッピングしてあった。
ピザ屋のイベント用かとも思えなくはないが、今の発言はゼロが作ったと考えるのが妥当だろう。
「ゼロ、うまかったぜ!くれなかったら悪戯してやろうと思ってたのによ」
美味しいお菓子をもらえてご満悦の玉城は、悪戯が出来なかった事に不満があるらしい。
カレンはゼロに悪戯なんて!と怒っていたが、中にはやって欲しいと思う者もいた。
「こいつにどんな悪戯をしようとしてたんだ?」
どうやらC.C.もやって欲しいと思う者の1人らしい。
玉城はにやっと笑い、ゼロの方を見た。
「俺様がやろうとしてたのはなぁ、ゼロにこれを飲ませてやろうと思ったんだ」
そう言ってポケットから取り出した1本の瓶。
見た目は栄養ドリンクのようだがラベルは貼ってない。
中身は…どうやら濁っているものらしく、透明感は感じられなかった。
「それは何だ?私に何を飲ませようとした」
ちょっぴり怒りを含んだゼロの声に一同は少々びびった。
「体に害はないはずだ。ラクシャータに頼んだんだ」
「(ラクシャータ…確かに腕はいいが、一体何を…)お前が飲め」
受け取り拒否。渡した玉城も飲みたくないと、くじを引いて決めようと言い出した。
さてここで問題。今からそのくじを誰が用意するのでしょう。
けれどここは玉城、しっかりと案を考えていた。
その名も、あみだくじ。
大きな紙を持ってきて、そこに線をたくさん書いて即席のくじを書き上げた。
幹部の人数分の線を書き、1箇所だけハズレを用意してくじ開始。
「まずはゼロからだな!」
ゼロが選んだ場所は中心からやや右に位置する場所。
次は女性陣、それから男性陣と名前を書いていく。
名前を書いたところで各自線を1本追加していき、線を辿っていく。
やっぱゼロからだろ、という誰かからの意見を尊重してゼロから結果を出していく。
線を辿っていくとハズレに近づいていった。
いきなりハズレを引くのか?と思ったが、辿り着いた場所はハズレのすぐ隣の場所。
結果、ハズレを引いたのは…奇跡の藤堂だった。
こんな所で奇跡を起こさなくても、と思ったもの数名。
得体の知れない液体を飲まされる軍事責任者を憐れむ者数名。
「…藤堂、すまないが…飲んでくれ」
ゼロが藤堂に瓶に入った謎の液体を渡した。
眉間に刻む皺を倍増させた藤堂はそれを受け取り、蓋をあけた。
その瞬間むわっと広がる激臭。
「…飲めるのか、それ」
凄まじいニオイを放つ液体を本当に藤堂に飲ませても大丈夫なのか不安になった。
けれど藤堂はそれを口にした。
が、一度だけ喉が動いたかと思うとそこで止まった。
「がはっ!」
そして、むせた。
「ちょ、藤堂さん大丈夫ですか!?」
朝比奈が慌てて藤堂の背中をさすった。
さすがの玉城ももうラクシャータに悪戯用の飲食物を頼むのはやめようと誓った。
「こ…これは…飲み物なのか…?」
手に持ったままの瓶を睨みながら中身を確認した。
そしてゼロは藤堂から瓶を受け取り医務室へ向かった。
一度開けられた瓶からは激臭が漂い続けた。
蓋を閉めても鼻がそのニオイを覚えてしまっている。
「ラクシャータ、これは一体何なんだ?」
「あらぁ、ゼロじゃない。これ、栄養剤とか手当たり次第に混ぜてみたのよ〜、どう?」
キセルをくるくると器用に回しながらケラケラと笑った。
ゼロは仮面の下で溜息を吐きながら栄養剤たっぷりの瓶を置いて医務室を出て行った。
とりあえず中身の報告をしようと再びラウンジに戻ると、ソファーに横になる藤堂がいた。
「あ、ゼロ!藤堂さんが飲んだ物、何だったんですか?」
「…栄養剤を手当たり次第に混ぜたらしい」
栄養剤…これが…と一同はゼロの手に持つ瓶に視線を集中させた。
そしてゼロがテーブルを見るとまだクッキーが残っていた。
口直しにクッキーを食べさせようかとも思ったが、今は水の方がいいだろうと思いやめた。
「藤堂、今日は休んでくれ。本来ならば私が飲んでいたはずだったんだ、すまない」
ゼロは藤堂の座っていた場所に置いてある書類を手に取り自室へ戻っていった。

日参している携帯サイトDARKNESSの朝霧蒼衣様作!ハロウィンフリーだったのでお持ち帰りさせていただきました!がんばれ藤堂さん!(笑)。
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