Happy Halloween ゼロの不運

玉城の提案であみだくじになった。
名前を一番最初に書いたのは総司令の立場も関係して、ゼロが。
次に副指令である扇。それから関係的にゼロに近い藤堂が名前を書いた。
藤堂以降は適当な順番で書いていって、空欄は埋められた。
「やっぱゼロからやってくか?けどよー、最初に当たったら面白くねぇよな」
というわけで、ゼロの順番は5番目になった。
ハズレ、の文字のすぐ近くを通ると誰もがびくつく。
けれど誰もそこに辿り着かなかった。
ただし、ゼロはまだなので4人だけだが。
「次はゼロだな!よ〜し…〜〜♪」
玉城は鼻歌を歌いながら線を辿っていく。
ハズレの位置から遠ざかっていくのを見て、これはハズレに当たる事はないかなぁ…と思ったが、端っこに突き当たってからはハズレの文字に一気に近づいていった。
「…………」
ゼロは嫌な予感が過ぎり無言。
次第に落ち込んだオーラを放ち始めた。
「あっ!」
玉城の指先が辿り着いた先は…『ハズレ』
その瞬間ゼロは一気に落ち込んだ。逆に玉城は上機嫌になった。
嬉々として謎の液体の入った瓶を差し出してくる憎き幹部の一人。
「……ここで、飲まなきゃいけないのか?」
ここで飲む=仮面を外さなければいけない=素顔がバレる。
誰もが導き出す展開だった。
「あったりまえだろ」
ただ玉城は違っていた。
ここで飲む=ズルは出来ない=反応が楽しみ、というもの。
ゼロ―ルルーシュは性格故にここで逃げ出すという選択肢は存在しなかった。
溜息を零すとゆっくりとした動作で仮面に手をかけた。
カシュ、と軽い音を立てて仮面が外される。
絹のような黒髪がハラリと零れ落ち、美貌の青年が現れた。
「る…ルルーシュ?」
ありえないくらいに綺麗な容貌の青年を知っている者が約2名。
カレンは驚いて問い詰めるよりも先に、明らかに疲労の色を濃く出している彼に得体の知れない物を飲ますのは可哀相だと思った。
「ちょ、お前キレーな顔してんだったら何で隠してるんだ?」
「素顔が知られれば素性を知られる恐れがあるから隠してたんだ…」
ルルーシュが瓶の蓋に恐る恐る手をかけて、開けた。
小さな瓶から発してるとは思えない程の強烈なニオイ。
目やら鼻やらにしみる。
口に近づければ近づける程その瓶を投げ捨てたくなった。
「ルルーシュ君、やめろ」
藤堂が遂に行動を起こした。藤堂が一番心配した事があった。
日本に送られてきた時に酷く苛められてた彼が、そんな国を祖国から解放しようと活動している。
そんな彼にこんな事をして、騎士団を抜けてしまわないかという心配。
自分達を簡単に捨てるとは思わないが、あんなものを飲ませる人間に力を尽くしたくないと思ってしまうかも知れない。
「藤堂、さん…。いえ、飲みます。公平にくじで決めたんですよ?」
きゅっと唇を結んでから、瓶に口をつけてそれを傾けた。
薄く紅い唇の中へ吸い込まれていく得体の知れない液体…。
喉が1回動いたと思ったら、瓶は床に落下して割れた。
ルルーシュを見ると顔を青くして固まっている。
「ルルーシュ…?ちょっと、大丈夫なの?」
カレンがルルーシュの背中に触れた瞬間、彼は盛大に咳き込んだ。
吐き出そうとするが、何も出せなかった。
「くっ…げほッ…」
「早くラクシャータのところへ!」
謎の液体の製作者の所へ運びたくはないが、素早く適切な処理が出来るのは彼女しかいない。
身長はあるのに標準以下の体型と体重を持っている彼は軽々と抱えられ運ばれていく。
ベッドに寝かせてからラクシャータは大量の水を飲ませた。
液体なんだから水分を取って出してしまえばいい、的な。
「ラクシャータ…一体何をどうしたらあんな物が出来るんだ」
「やぁねぇ、栄養剤とかそゆの、片っ端から混ぜただけじゃない」
栄養を考えると申し分ないが、如何せん味がいただけない。
暫くすると周りを見る余裕が出てきたのか、ルルーシュが声を発した。
「あ、俺…」
堂々と言葉を投げているゼロとは思えないくらい儚い姿で横になっていた。
紡がれる言葉も守ってあげたいと思ってしまうような声だった。
「大丈夫か?」
「ふ…情けないな。くじで当てて飲む為に素顔を晒して、挙句こんな所に横になっている」
自嘲を含めた呟きを返してきた。
さすがに言い出した玉城も良心の呵責を感じ、ぶっきらぼうだがルルーシュに謝った。
玉城が素直に謝るという事は、それ程までに悪いと思わせてしまった結果だろう。
ラウンジにいた幹部達に、カレンと同じ年齢の学生のブリタニア人だという事がバレたが、その事実は素直に受け入れられた。
そして、ラクシャータに悪戯用の飲食物の製作の依頼を禁止した。


「藤堂さん、俺の正体を…話さないんですか?」
ルルーシュと藤堂だけが残った医務室。
藤堂だけがルルーシュの素性を知っている。
ラクシャータも知っているだろうが、わざわざ立場を悪くするような発言はしないだろう。
「君がどんな思いで反旗を翻しているのかわかる。安心しろ、俺からは言わない」
「…ありがとうございます。こんな俺に、ついてきてくれるんですね」
あの頃は見れなかった笑顔を、今の藤堂は見る事が出来た。
あの頃よりも信頼する事が難しくなったルルーシュを受け止めてくれたからだろう。
「元気になったら、俺に料理を作ってくれ。クッキーはあまり食べれなかったからな」
少し食べたとこで手を止めてゼロと玉城の行動を見ていたら、なくなっていた。
仮面をつけている時には考えられなかった約束をした。

日参している携帯サイトDARKNESSの朝霧蒼衣様作!ハロウィンフリー第二段!もう一個の別分岐って感じですね。大人な藤堂さんが素敵・・・v
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