結局君に溺れてます。




ごちそうさま、と他のメンバーよりも一足早く食事を終えたらしいアレルヤは、かたんと小さな音をたてて立ち上がった。何故かトレイを忙しなく持ち上げ、三人の視線が集まる中、テーブルを去ろうと踵を返した。がしり、ロックオンが、逃がすまいと腕を掴む。


「まだニンジンが残ってるぞ」

「っ見逃してよロックオン!僕ニンジン苦手なんだよ!」

「あのなぁ、ニンジン食わないと大きくなれないんだぜ?」

「何故俺を見る」

「刹那もニンジン残してるからだ!お前ら二人そろって…、今日こそはちゃんと食べるまでごちそうさまは許しません!」

「……(あなたはどこのお母さんだ)」


ロックオンの、威圧感にも匹敵するお母さん精神に、渋々ながらアレルヤは席についた。隣で、アレルヤと同じことを考えていた刹那が眉をきつく寄せる。


「…刹那、頑張ろうか」

「…………」

「(うわあぁ首振るったよ!可愛いな可愛いな!あ、でも駄目だ、ここは二人で頑張らないと)ほら刹那、ロックオンが見てるから嫌々なんて云わないで、ほら」


頑張って、と、アレルヤはフォークで刹那のニンジンを刺し、口元に差し出した。ぱちり、と刹那の目が見開かれる。あまりにも自然な動作に、どうしたの、と首を傾げるアレルヤ。しかし、皆の沈黙の理由を理解し、わさわさと慌て始めた。


「ご、ごめん思わず…!」


何が思わずなんだ。ティエリアの、眼鏡の奥で双眸が光る。刹那は未だフォークの先にあるニンジンを凝視していたが、やがて、アレルヤの手ごと口元へ引き寄せ、ぱくりと口に運んだ。これには、アレルヤはおろか、ロックオンもティエリアも、唖然とする。


「……、どうした」

「え、えぁ、刹那、今」

「駄目だったか?」

「違うんだ!むしろよかっ…じゃなくて、」

「…とりあえず俺はクリアした。次はお前の番だ」


と、まるで淡々とミッションをこなすが如き口調の刹那は、アレルヤのニンジンを同じようにフォークで刺し、差し出した。口を開けろ、と、視線で訴えかける。


「(まさか刹那がこんなことしてくれるなんて!でも、)あのさ、刹むぁっ」

「ミッション完了だ」


口を開いた瞬間、つっこまれるそれ。舌の上に転がる嫌いなニンジン、だが、味は全くわからなかった。咀嚼し、真っ赤になった顔を隠すように、テーブルに突っ伏してしまうアレルヤ。

これには、ロックオンも苦笑するしかない。





結局君に溺れてます。

(刹那、僕もニンジンが嫌いだ)
(俺だってニンジン苦手だぞ!)
(二人とも、下心全開だね)

日参している携帯サイトMs.flangeの蒼木ユキコ様から!サイト二周年記念小説アレ刹ver.!おめでとうございます!!アレ刹はほのぼのしてて可愛い・・・!!

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