ヒールを履いた猫
小さい頃、赤いヒールに憧れていた。
理由はただ、近所の綺麗なお姉さんが赤いヒールを履いていたから、っていうそれだけ。
実際赤いヒールなんて、オトナの人が履くから似合うのであって、どちらかって云ったらコドモの分類に入る私にはまだ早い。背伸びしすぎて転んじゃうのがオチって奴だわ、きっと。
だけど、彼の前だったら、転んでもいいから背伸びしたいと思っちゃうのよ。
全く私は末期なのかもしれない。
「不思議なんだけど、ミーアっていっつもヒール履いてるだろ」
「ん、かつかつ五月蝿い?」
「いや、転ばないか心配になるから…、あんまり走ってくるなよ」
「えー、早くシンに会いたいって思うと自然と足が早くなりますが、」
「駄目。怪我したら大変だろ」
ぶっすー、って今にも云っちゃいそうな位に、口を尖らせる。それでも、シンが本当に心配してくれてるのがわかるから、なんだか笑えてきた。
シン曰わく、私の足音は特徴的ですぐ分かるらしい。
それもヒール効果かな、とも思ったけど、ミーアの足音は危なっかしい音なんだよ、って云われて、なんだか腑に落ちない。
やっぱり、まだ私みたいなコドモにヒールは似合わないのかしら。
「もういっそ、赤いヒールにしちゃおうかしら」
今履いてるヒールは真っ白。いっその事赤いヒールを履いて、危なっかしいとか云われても、散々背伸びしちゃえばいいんじゃないの。
そうすれば、シンだって少しは私をオトナだって見てくれるかもしれないし。いつまでもコドモは嫌だもの。
とかやけくそな事を考えてたら、今まで緩い表情だったシンが、眉を寄せて振り返った。
「ミーア、それやめた方がいい」
「え、何でよ。私がコドモだから?」
シンも私をコドモだって思ってるのかしら。こんなに頑張って、まぁ真っ白ヒールだけど、背伸びしてるのに。
そしたら、シンが考えている事は、私の考えてる事と真逆だった。
「ミーアは綺麗っていうより可愛いから、赤より白の方が似合うだろ」
──前言撤回。
私、真っ白ヒールで背伸びするわ。
だって、シンが似合うって云うんだもの!
ヒールを履いた猫
(わかったわ、私真っ白ヒールで生きる!)
(だからって走るなよ)
(う、)
日参している携帯サイト
Ms.flange
の蒼木ユキコ様から!サイト二周年記念小説ミアシンver.!おめでとうございます!!いいな、こういうほのぼの・・・v
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