さり気なく

何時も思うのだが、俺は男にモテ過ぎる。
俺はそれを毎日嫌という程実感しているのだ。


「ツナ」
「ああ、リボーン」


俺が執務室でドン・ボンゴレらしく仕事をしているとやって来た黒衣のヒットマン。
頼れる存在であるのは確かなのだが、正直顔を会わせたくはなかった。
俺は若干顔を引き攣らせながらリボーンに話し掛ける。


「今日は何の用事?リボーン」
「決まってんだろ」


そう言って懐から出してきたのは一枚のディスク。
それを机に置く。
嫌な予感。


「やる。今ドンパチしてるファミリーの内部情報だ」
「…無償のものほど怖いものはないって言うよね。目的は?」
「それはお前自身に決まってんだろ?」
「………」


沈黙。


「ツナ、愛してんぜ」


そう言ってニヒルに笑うリボーン。
俺がその言葉に固まっていると、部屋の扉がノックされて。


「ツナー?」
「…山本?」


山本が入って来た。


「…何?てか仕事は?ミラノに行ってるんじゃなかったっけ?」
「終わったのな。で、土産」


そう言って手に持っていた物を俺に渡そうと近付いてきたら。
何故か俺の脳内でデッドアラーム。
その手を回避しようと、自分の手を引っ込めようとしたら山本に掴まれて。


「………」
「ツナ、前より細くなったんじゃね?」


頬にキスされた。


「おい、山本」
「ん?ああ、小僧か。小さくて見えなかったわ」


はは、と笑う山本。俺はショックで自失状態。
今、されたよ。山本に。
こんな触れ合いはイタリア男からだけで充分なのに。山本、お前感化され過ぎ。
ただでさえ、毎日ザンザスから迫られるわ、骸からは身体目当てという名の襲撃を受けるわ、雲雀さんからはラブコールが絶えないわ、獄寺くんからはスケジュール管理という名のストーカーを受けるわ、ディーノさんはあんまり来ないけど来たら来たでスキンシップ激し過ぎるわ、リボーンはこんな感じだし、山本は何時の間にかこうなってるし。

もう嫌だ。
俺はノーマルなのです。


「ツナ?どうした?」
「ん?ツナ?」


二人のそんな声が聞こえた気がしたが、俺の耳にはもう届かなかった。


「…ってやる」
「ん?」
「出てってやる!!」


俺はそう大絶叫すると執務室から飛び出した。

後ろから何か声が聞こえた気がしたがそんなものは無視で俺は廊下を走った。




「綱吉?」
「………」


したら、今一番会いたくない熱烈的な奴、ザンザスと会ってしまった。


「あ?どうしたんだよ」
「………」


俺は無言のままその場を立ち去ろうとした。
そうしたら、


「待てよ」


手首を掴まれて、壁際に押しやられる。


「逃げんな」
「………」
「綱吉」


情熱的に耳元で名前を囁かれる。背筋が粟立つ。
俺が茫然自失していたら、ザンザスの手が腰に回りそうになって、


「…馬鹿ー!!」


俺はそう叫んで(喉がいいかげんやられそうだ)、ザンザスの顎目掛けて拳を繰り出した。
そうしてザンザスの手から逃れると、またもや俺は走り出した。

俺の脳内はただ一つ。


(もう嫌だ!)


何故俺が男に迫られなければならない。ボスの仕事にはそういうのも含まれているのか?
俺がそう考えていると自然と涙が溢れてきて、俺は何時の間にか号泣しながら屋敷の広い廊下を走っていた。
そうして中庭に辿り着く。


「………」


泣きながらベンチに座る。
膝を抱えて蹲って、俺は一人考えた。

どうして俺なんだろう。どうして皆いい男なのに、俺ばっかりにくるんだろう?

そんな事をつらつらと考えていたら、


「綱吉?」


今度は誰だと、涙を流した顔のまま声のした方を見た。


「ゔお゛ぉい、どうしたぁ?」


そこにいたのはスクアーロで、俺は。


「スクアーロ…」


スクアーロの顔を見てまた泣き出した。






「で?今日はどうしたぁ?」
「…もう嫌だ」


ぐすぐすと鼻を啜る。
スクアーロは俺の隣に座って、俺の方を見ている。

スクアーロは俺にとっての良心みたいなものだ。常識人だし、いい奴だし、何より俺に迫ってこない。

俺は今日会った事を素直に話した。


「あ゛ー、まぁ、大変だな?」
「…大変どころじゃないよ」


うう、と俺はまた涙が出そうになるのを堪える。スクアーロから借りたハンカチはもうぐしゃぐしゃだ。


「ボス、には言っても聞かねぇだろうしなぁ」
「…いいよ、スクアーロ。気持ちだけで充分」
「大丈夫かぁ?俺の部屋で暫く避難しても、」
「いいよ」


これ以上スクアーロに甘えてスクアーロに何かあってはいけない。何かしそうな奴がちらほらいるし。
だから俺はスクアーロに「ありがとう」と言ってその場を離れようとしたのだ。
そうしたら、


「まぁ、俺ができる事があるなら言えよ?」


そう言ってスクアーロは笑って俺の頭を撫でたのだ。
それに、


(ん?)


胸がきゅんとなる。
何だこれは?


「………」
「ゔん?どうしたぁ?」


俺は至ってノーマルだ。今まで男を好きになった事なんて一度も無い。
なのに、


「………」


これは、


「…スクアーロ」
「何だぁ?」


スクアーロが俺の顔を覗き込んでくる。
その顔がとてもかっこよく見える、のは気のせいか。


「…どうしよう」
「あ゛?」
「俺、」


本当にどうしよう。
だってこの胸のときめきは。


「俺、スクアーロの事好きになっちゃったかもしんない」
「…は?」


スクアーロが間抜けな声をあげる。
俺はそう告白する事で一気に自分の顔が赤くなるのを感じる。
たら、


「………」


目の前のスクアーロの顔も赤くなって、


「スクアーロ?」
「お、お前、いきなりんな事言うんじゃねぇ!」


そう言って黙るスクアーロ。
どうやらこれは、


「………」
「………」


両想い、らしいと気付いた今日この頃。

もう直ぐお昼だ。
なので、次に言葉を発する時は「一緒にお昼でもどう?」と誘ってみるのもいいかもしれない。



END

日参している携帯サイト電気羊の見る夢。の芥様からキリバン28000HITでいただきました。リクエスト内容は「ツナ総受け争奪戦スクツナオチ」でした。素敵です。こういうの大好きですvv

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