Bambino-limitato della donna!

その日、都奈は朝からウキウキとしていた。
 いや、二日前からあれやこれやと今日の準備に忙しくしていて、リボーンもザンザスも苦笑して見ていたものだ。
 普段の気弱さなどなんのその、都奈は凪やマーモンは当然のことと、まさかのレヴィまで巻き込んでいた。
 まあ順当な人選だろう。
 『男子禁制』と銘を打っている以上リボーンや獄寺の手は借りられない(と頑固に思っているのだろう)彼女たち三人だが、料理等などは兎も角、招待状やらその他諸々実務系の手配は苦手だったので。
 逆に普段から本部詰め構成員のスケジュール管理やら警備体制の差配等など、細々した事務作業をこなすレヴィは、その手の差配のエキスパートだ。いつも通りの無表情ながら、彼女は黙々とそれら作業をこなした。
 お陰で当日を迎えられた訳である。








 先ず訪れたのはボヴィーノのジェマ。
「都奈さんっ!」
 レヴィの粋な計らいで獄寺にエスコートされサロンに案内されてきた美少女は、ミルク色の頬を薔薇色に上気させ、もとより甘い美貌を綻ばせる。
「都奈さん、こんにちは♪今日はお招きありがとう御座います」
 アンバランスな少女だ。
 豊かさに波打つブルネットに淡い翠の瞳、ふんわりと微笑む表情はまだあどけないが、その美貌と身体つきは実年齢より大分大人びている。既に都奈よりも背が高く、身体つきも見事なラインを描いている。十二歳にしてDカップというのは立派なものであろう。
 しかし山本曰く、獄寺の好みはスレンダーな知的美人らしく、世の中なんとも上手くいかないものだと都奈は思った。それでもこの極上の美少女に素気無いのはどうだろう。
 ―――まあ、なんだかんだと「このアホ」だの「馬鹿者」だのと言いながらも、獄寺がジェマを完全に無視する事はないので、あれはあれでコミュニケーションとして成り立っているのかも知れないが。


 次いでやって来たのはコロネロとスカルにラルだった。
 コロネロ操る大型バイクにサイドカーくっつけて来たそうで、「コロネロ先輩の運転は乱暴です。折角の髪のセットが崩れちゃいました」と言ってしまったばっかりに、スカルはいつも通りチョップの制裁を受ける。
 幼いのにくっきりとした美貌にばっちりメイクをしたゴリゴリのパンキッシュゴスロリ少女は、涙目で安全地帯たる都奈の後ろに逃げ込んで来る。
「阿呆が」
 呆れ交じりに年少(とはいっても一つ二つだ)の少女二人の、まあじゃれ合いの域を出ない騒ぎに溜め息一つ吐いてラル・ミルチはそう評した。
「お招きありがとう」
 礼儀として言って、父率いる門外顧問に在籍するそうな彼女は手土産と家光から言付かったという包みを手渡してくれた。
 少しタイトだが、遊び心のあるスーツは着ているラルの若さもあって見様によっては制服のようだ。
 迷彩の野戦服をラフに着ている何時もと違って、コロネロはキュロットタイプのサロペットにセーラーシャツと、デニムとはいえそれなりに女の子らしい恰好で来た。トレードマークの一つであるバンダナとバッジは、今日は細いが引き締まった腕に巻いて留められアクセサリーとなっている。
 可愛いと誉めると、「お世辞なんていっても何も出ないぞコラ」とぷいっとそっぽを向いて言う。
 しかしその頬と耳が桜色に染まっていて、なんとも可愛らしかった。

「…姫」
 しつこく食い下がろうとするγに、ユニは止めとにっこり微笑んですっぱり言った。
「駄目です。今日は女の子だけの集まりなんです」
「γ諦めろ、だからウチと正子が付いて来たんだし」
 いつも通りの淡々とした調子で言うスパナに、尚も納得しない男に、女性陣は溜め息をついた。
 伊達な美丈夫ぶりはなりを顰め、ちょっぴり情けない様相だ。
 お年頃になった娘に構って貰えなくなって凹んでいるお父さんのようだと正子は思った。


 今回のお招きは女性だけの集まりと知ったユニは正子に声を掛けた。以前にも一緒にボンゴレを訪問したので持ち掛け易かったのだ。
 それに彼女を巻き込むと白蘭がごねても結構どうにかなるとの打算もちょっぴりあった。
 ところがごねたのは白蘭ではなく、自分は同席すらするなとユニに言われたγで。
 仮にもミルフィオーレのNo.2なのだからと護衛の必要性を切々と訴えるγと大丈夫だからと言い張るユニとの間でちょっとした喧嘩も起こった。
 すると、正子と茶飲友達で話を聞いたというスパナが助け舟を出してくれたのだ。
「女というならウチは?正子と一緒にウチが付いていくのは駄目か、姫?」
 勿論ユニに否やは無い。
 お茶会の趣旨を壊さなければ、護衛自体を嫌がらない程度の分別はある。
「だそうだγ」
 ブラックスペル―――旧ジッジョネロ最高のメカニックにして、一応自分の恋人である彼女の薄い色の瞳でじぃぃぃっと見上げられて、γは言いよどんだ。
「いいですよね、ガンマ」
 姫の青い瞳もキラキラと期待に輝く。
 ホワイトスペルの軍師にして六弔花の一画を担う入江に、ブラックスペルの要の一人であるスパナ―――彼女等二人が護衛として付くなら、ミルフィオーレNo.2の訪問としての体裁も一応整う。
 招待状を受け取った時の姫のキラキラした笑顔も瞼に浮かんで。
 その場では頷くしかなかった。


都奈はお菓子作りも上手だし、ボンゴレの城にはそれは見事な温室もあった。
 はて何をお土産にすればいいだろうと悩んだユニを助けてくれたのは、以外や以外、その話を正子から聞いた白蘭だった。
 こういうのはどうかと彼が示したのは極々軽いフルーツワインだった。
 微炭酸で、殆どジュースと変らない。何より爽やかに甘く、美味しかった。
 文化としてワインが根付いているので、飲酒に法定年齢が無いお国柄だしと、常識的な入江もGoサインを出した。


 いつも通りツナギで行きかねないスパナには、γが選んで購入してきた服を着させて、入江がメイクだのを施した。
 普段入江自身もそう身形だのに気を使う方ではないが、それでもスパナ程ではない。
 仕事柄徹夜だのも多いから若さに甘えてノーメイクか軽いメイクが大半だが、『お出かけ』にそれなりに着飾る程度の常識はある。
 其処の辺りの常識の怪しい友人は、かねてからモデル張りの土台が勿体無いと思っていたので実に飾り甲斐があった。
「正子もスパナも綺麗です。本当に何時もそうしていれば良いのに」
 男性主流の殺伐たる職場だからこそ、ユニは心からそう思った。その方が目に楽しいのにと。
 ユニ自身も普段とは違い、年相応にワンピースを着て愛らしく装っている。スタンダード…つまり流行り廃りは余りないが、行儀の良い服なので、ユニはどこからどう見ても良家のお嬢さんだ。
「それは困る…、こういうヒラヒラした服だと作業が出来ない」
 それに顔もなんだかぺとぺとすると、スパナはやや落ち着かない様子で言う。

 よくまあこの機械オタクで、本気でモスカと結婚しかねない女を落としたものだと、入江はγに尊敬の念を覚えた。


通されたサロン、出迎えてくれたのは今日も今日とて愛らしいドン・ボンゴレ夫人都奈だった。
「ようこそ、ユニちゃん!」
 ふんわり笑って駆け寄ってきて、手を取ってくれる年上の少女に、ユニははにかんだ。
「お招きありがとう、都奈さん」
 にこにこ微笑み合う少女達に巻き込まれ、ほのぼのムードが室内を満たす。
 暫し、挨拶や自己紹介が和やかに続いた。


 真っ白なテーブルクロスに、凪とマーモンが用意した花のアレンジメントが品良く映えた。
 優雅なボーンチャイナが配され、銀のフォークやスプーンがともに設置されている。
 チョコレートババロアにココナッツ入りのバナナケーキ。落ち着いてしっとりとしたブランデーケーキにサンドウィッチなど軽食の類いの他、皆のお土産もテーブルの上を賑わせていた。
 ジェマの土産は手製のティラミス。マスカルポーネチーズとココアパウダー、エスプレッソを吸ったビスキュイ生地との相性が絶妙である。
 コロネロが風に作らせたのだという月餅と生姜の効いた肉饅頭、マロングラッセと旬の魚と野菜のテリーヌは其々スカルとラルのお持たせだ。
 ユニが渡したワインも、急ぎ用意されたクーラーボックスの中で出番を待っている。
 ダージリンの芳香の中年齢も個性もバラバラの女性たちはおしゃべりと美味しい茶菓を大いに愉しんだ。


「美味しい!ジェマちゃんお菓子作り上手なのですね」
 青い瞳を輝かせたユニにそう誉められ、翠の瞳の少女は照れてはにかんだ。
「そんなことないです。獄寺さんには馬鹿の一つ覚えって言われるし…、ノンナから教わって、これぐらいしか作れないんですよ」
 てへへとジェマは笑う。
 都奈を挟んで座る見た目は兎も角ほぼ同い年の少女二人は、一気に打ち解けた。
 間に座った都奈は、にこにこと年下の美少女二人の小鳥のような声でのおしゃべりを聞いている。
「獄寺は口が悪いからね。でもアレはかなり照れ隠しを含んでいると僕は見るよ」
 にやっと笑ってそう評するマーモン。凪とレヴィのどちらかというと無口な二人が頷いて認める。
「ああいうの、何でしたっけ…そうそう、ジャッポーネでは『ツンデレ』というんでしょう?」
 あ、マーモンもそうだな―――いつもいつとてちょっと余計な一言が多いスカルを、マーモン嬢は長く濃い睫毛で縁取られた目でギンッと睨んだ。
「…僕が、なんだい?スカル」
「えっ、だからあの六道 むぐ…」
 隣に座っていたコロネロが口を塞いでやったのは、せめてもの情けだ。…ちょっとばかし遅かった感はあるが。
「……阿呆め…」
 ブランデーケーキを食べながら、ラルは言って溜め息を吐いた。











帰りの車にて


「…あれがドンナ・ボンゴレか」
 ぽつりスパナは言った。
 それがどうしたと集まる視線を、無表情がデフォルトの美人は特に意に介さない。
 さて何を言い出すかとγと正子は固唾を飲んで見守った。
 ぱくんといつものスパナ型キャンディーを食べ、ユニと正子に勧め―――ユニは素直に貰った―――、ぼやんと気の抜けた顔で言う。
「犯罪だな」
 皆まで言わずとも、彼女が言いたいことはγと正子に通じた。
 それは誰もが一度は思う事だったので。

絶賛日参中な携帯サイト雪月花の雨里様からキリリクでいただきました。「どるちぇ(『雪月花』で連載中ザンツナ♀連載)設定で女の子同士のお茶会」というリクエストでした。ぐっじょぶすぎます・・・!なんていうかもう、女体化万歳三唱・・・!!

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