Io sono bello

「ぼっくす?」
 とはなんぞやと、都奈はこてっと首を傾げた。
 本日はマフィアに関する事の一通りを教示していらっしゃったリボーン先生は、ではとちょっくら見せろと、都奈共々旦那の執務室を強襲なさった。
 説明するよりゃ見せる方が手っ取り早かろうと云うお言葉に、亭主までも確かにと思ってしまった。
 何気に理論派の獄寺が覚悟の炎云々から説明してやっているが、この時点で既に琥珀の双眸はハテナを湛えている。
 基本、都奈は論より実地のタイプなのだ。…言い換えればちょっぴりお頭が足りない。ぐるぐるしだす手前で理屈っぽい嵐の守護者をスクアーロは止める。
「しししっ、じゃあ、王子のミンク見せたげる」
 偶然報告書を提出に来ていたベルフェゴールが、乗り乗りで言い出した。
「なっ、それならオレが」
 此処で張り合ってしまうのが、獄寺の獄寺たる所以だ。
 まあ、どっちにしても都奈は喜びそうだと、二人のアニマル匣を思い浮かべて判断して、ザンザスは頷きGoサインを出した。
「わあぁ…」
 リングに炎が燈るのも初めて見るなら、その炎を抽入した匣とやらから、明らかに物量の法則を無視した体積を有する動物たちが現れたのにも驚いて、都奈はぱちぱち大きな双眸を瞠った。
けれど、都奈は驚きなんて直ぐにうっちゃる。
 なぜなら。
「…かわいい…」
 双眸をキラキラさせ、都奈は兵器とは思えぬ愛らしい動物達をガン見する。確かに兵器としては無駄なまでにファンシーな動物たちだと、リボーンも思うので、特に突っ込みはしない。
「どうです、奥様、瓜っていうんです!」
 自信満々に子猫にしか見えない幼体を抱いて見せた獄寺は、直ぐに反抗的な嵐豹にばりばりと白皙の美貌を引っ掛かれる。
「だーーーーっ、瓜ってめぇえぇ…!!」
「ゔみ゙ゃあ゙あああ゙ああぁぁぁっ」
 シャーっと、気性激しい嵐豹・瓜は主である筈の青年に牙を剥いて威嚇する。
 中々にデンジャラスな主従関係らしい。
 けれど、おろおろとした都奈に目を向けると、瓜はそれまでが嘘の様になった。
 こてっと愛らしく首を傾げ、「にょぉん」と可愛い泣き声を上げる。
 ぎりぎりと奥歯が磨り減りそうに歯噛みする主なんてほったらかしに、しっぽゆらゆらさせて都奈に擦り寄った瓜は、その胸に抱っこされ、大層可愛子ぶりっ子をした。
「瓜ちゃんて云うの?可愛い…!」
「にょ〜ぉん」
 獄寺に牙を剥いたことが嘘としか思えぬ愛らしい表情と鳴き声で、瓜はぺろぺろと都奈の円い頬をなめた。


「ししし、相変わらずだし」
 小馬鹿にしたように獄寺をせせら笑い、対の守護者であるベルフェゴールは従順で賢いミンクに軽いジェスチャー一つで指示を出す。
 もともとの性質も勿論大きいだろうが、あまりの落差である。
「王子の匣アニマル、ヴィゾーネ・テンペスタ…嵐ミンクだよ」
 ミンクは賢いので、主の指示通り都奈の肩に巻きつき、愛嬌たっぷりにすりすりするというサービスをしてみせる。獄寺同様炎の抽入を、開口できるギリギリの最少レベルにしているので害は無い。
「ひゃぁ…くすぐったいよぉ…っ」
 きゃっきゃと喜び声を上げて、ミンクのふわふわの尻尾で首を擽られた都奈は、肩を竦めて身悶える。

「ザンザス〜スクアーロここかー?」
 言いながらひょこっと顔を出したのは、山本。
「…何群れてるの…」
 更にその後ろから険しい顔で雲雀が現れた。
「ムレ、ムレハカミコロス!」
 ヒバリの肩にちょこんと座す無駄に口の達者な黄色い小鳥が囀るように言った。
「うん、正解」
 雲雀はペットの言葉に頷いた。
「んなわけねぇだろうがあああああっ」
 スクアーロは吼える。割といつも通りの事だ。
「つなッ、つなオヤツ!オヤツ!オヤツナキャカミコロス!」
「脅すな馬鹿鳥ぃぃぃぃ!!!」
 獄寺が丸っこい小鳥をぎゅむっと捕まえた。動物愛護団体に射殺されそうなひっ捉え方だ。
「ひばりッつなァ、タスケテ、たこへっどイジメルッ」
「誰ァれがタコヘッドだぁぁぁぁ」
 哀れっぽく言ってみせるヒバードのIQの程度を是非とも一度調べてみたいものである。
「ごっ獄寺さん…」
 駄目、可哀想―――うるっと潤んだように見える瞳で見上げられ、獄寺の降伏は一瞬で決っした。
 馬鹿だし弱いしへなちょこだが、都奈の影響力は何処でもなかなかに絶大である。リボーンですら、たまに感心してしまうほどに。
かくかくしかじかこういう訳でとリボーンがした説明に、成る程と並盛出身者二名は頷いた。
「ほー、んじゃ」
「…」
「…っ…ッ!」
 現れた更なる動物達に、都奈はもうきゅんきゅんだった。目がハートマークになってもおかしくない程に。
「っ…かっ可愛い〜〜〜…!」
 両腕に瓜とミンクを抱っこし、ふわふわの頭にヒバードを乗っけて、都奈は大興奮で半ば叫んだ。
「ははは、次郎ってんだ〜」
 兵器というが、やっぱりその外見は利発そうな秋田犬、愛嬌まで備えている様で、くりんとしたしっぽをぷりぷり振ってくれる。
「はう〜ん…」
 頬を薔薇色に上気させ、都奈はおかしなテンションでよろめいた。何だか壊れてきているとリボーンは溜息を吐き、可愛いもの大好きなちょっとお馬鹿な教え子を生温く見守った。
 ザンザスの眉間の皺が二本増えたことに、感で気付いたスクアーロは後ずさり、けれどその距離取りが不愉快だと無言のままペーパーウエイトを投げつけられた。
 ゴッと鈍い音がしたが、賢くて愛らしい動物達にメロッてもふもふしている都奈は気付かない。
 いっそ「るせぇドカスがッ」と吼えて、御自らハイキックをかましても大丈夫だったのではないかというドリームインっぷりである。
 若奥様のその様子は大層愛らしいが、旦那様としてはちょっと不満だった。



「この子は雲針鼠。哲はバリネズミって綽名をつけてるよ」
「バリネズミちゃん…」
 なにげに「ちゃん」が「ちゅわん」に聞こえた気がした男性陣一同。
「きゅ?」
 バリネズミはその鳴き声も仕草もこの上なく愛らしい。
「はふ〜〜〜ぅん」
 いやんいやん、きゃわゆい〜〜〜〜〜―――と、ふりふりふりふりキャラメル色の髪を振って身悶える都奈の方が可愛いと、真剣に思った野郎が約三名。
 まったりとんな事考えた可愛いもの好きと、主君愛ゆえにその奥方様にまで盲目な忠犬に、リボーン先生はケッと吐き捨てた。
 言わずもがなな残る一人は彼女の亭主である。

「ザンザスさんの匣アニマルちゃんって?」
 なおも瓜とかミンクを抱っこし、次郎とバリネズミを膝に乗っけた美少女は、こてっとく美を傾げて旦那様に聞いた。
 頬を薔薇色に上気させ、うっとり瞳を潤ませた様子は、ちょっと部屋に連れ帰って閉じ込めておきたい感じだ。が、ザンザスは子供の頃よくやっていたお菓子確保をなんとなしに思い出したので、結果ドロー。
「べすた、べすた♪」
 ひばーど知ってるよ♪とばかりに、雲雀の小鳥は言う。
「べすたちゃん?」
「…ベスターだ」
 ついでにちゃん付けするような可愛いものでもないのだが。
 会いたいな、会いたいな―――と、琥珀の瞳がキラキラ無言で訴えてくる。
 でも見せたら見せたで、びくびくしそうだとか葛藤する事、暫し―――
 無言で懐からアニマル匣を取り出し、右手中指に嵌めたボンゴレ指輪に炎を灯したボス様に、都奈以外の皆が内心突っ込んだ。
 やるのか―――と。

 現れた真っ白なライオンに、都奈は凍りついた。
 会ったのが可愛い小型アニマル達ばかりだったので、より衝撃は激しかったようだ。
「…ガウ……」
 なんか、オレのせいで外したっぽいかいご主人?―――とでも言っていそうに小さく鳴いたベスターは、赤い瞳で同じ色の双眸を持つ主人を見上げた。
「べすた、べすた」
 言ってヒバードはマイペースに羽ばたき、ベスターの鬣にぽふっと止まった。
 ほら、ベスターは怖くないよ?―――訴えるようなヒバードの行動に、都奈はほにゃり笑った。
「ベスターっていうの?」
 こてっと首を傾げた主の大切な少女に、ベスターは肯定の一鳴きをする。
 そおっと伸ばされた小さな手は、存外に心地良くて、ベスターは眼を細めてのどの奥でぐるぐると鳴いた。
 もふもふとふかふかの鬣を撫でた都奈はどんどんと大胆になり、最終的にはふさふさと豊かな鬣に顔を埋めた。
「ふかふか〜」
 うっとりと言う少女に、軽くイラッっとした主の気配を察し、わりと理不尽な身の危険を感じたベスターとスクアーロはギクッっと震えた。
 とりあえずベスターは無事塒である匣に帰れて胸を撫で下ろしたが。
 スクアーロは再度の八つ当たりを受けてこめかみからドクドクと血を流す。凶器である灰皿の方が、今日も何故か割れた。


後日談


「ザンザスさんザンザスさん」
「…どうした」
「私でも匣って持てるんでしょうか?」
「…欲しいのか」
「(こく)」
「……」

 とりあえず全属性の指輪を験させてみて、以外というか順当というか、微弱とはいえ炎が燈ったのは大空のリングで。

「ナッツ〜おいで〜」
「がうっ」
 などと庭で戯れる飼い主とミニライオンが居たとか居ないとか…

絶賛日参中な携帯サイト雪月花の雨里様からキリリクでいただきました。「どるちぇ(『雪月花』で連載中ザンツナ♀連載)設定で匣アニマルズと戯れるツナとそれにちょっとジェラシー感じてるザンザス」というリクエストでした。〜〜〜!ツナ超可愛い―――!アニマルズに囲まれてほにゃんvとしているツナが浮かぶようですvvジェラシー燃やしちゃってるザン様もv(笑)。あーもうv癒される・・・!大好きです!

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