Io vado fuori a giocare

「ザンザスさん」
 じぃっと懇願する瞳で見上げられ、ザンザスは何事かと眉を上げた。
「あの、あの…」
 少し言い難そうにモジモジする様子も愛らしい。どうしたと頬を撫でると、幼い妻は意を決したように桜色の唇を開いた。
「あの…お願いがあるんです」
 細い指を組み合わせてお祈りポーズで、都奈は懇願の態で言ってくる。
 これはもう、余程のことでない限り、若奥様に甘い旦那様は叶えずには居られないこと請け合いだ。
「なんだ?」
 先を促す声に、都奈は少し微笑んだ。



 ナッツの危機察知センサーは非常に高い。
 流石、曲りなりにも超直感の片鱗を見せる都奈の匣アニマルだけのことはある。
 ついでに甘えん坊で都奈大好きなので、まずべったり彼女から離れないのでボディーガードとしても結構役に立つ。見た目はミニマムでも、ライオンの匣アニマルなので、そもそも戦闘力は折り紙つきであるし。
 なので、ザンザスはナッツと離れない事を条件に、都奈の『お出かけ』に許可を出した。

 お嫁入りして以来、すっかり深窓の人と化していた都奈は、久々の外出に機嫌がいい。
 城の庭を散歩したり、芝生で凪やマーモンとミントンしたりナッツと遊んだりする事はあっても、城外となるとザンザスとパーティーに行くとき位とお仕事の一貫であり、時間帯も夜ばかりだったので。
 因みに、いつものお供である凪とマーモンとリボーンの他に、獄寺に山本までザンザスは護衛として随伴させている。
 誰の目から見ても旦那様は幼妻様に甘かろう。


「ふわぁ〜〜〜」  殆ど真上仰ぐくらい高いビルを見上げ、都奈はぽかーんとした。
 ミルフィオーレ本部パフィオペディラムは近代的…というより未来的な超高層ビルだ。洒落ているかどうかは都奈にはちょっと解らなかったが。
 なんかSFアニメとかに出てきそうな感じでかっこいいな〜―――とほややん娘は思う。
 車から降りてレットカーペットなんて歩きつつ通された広々としたエントランスからして、なんかキラキラで綺麗だ。手を入れられているものの、昔ながらの城であるボンゴレ本部とは、好対照である。
「ようこそパフィオペディラムへ、都奈さん!」
 駆け寄ってきて、朗らかに微笑みユニは言う。
「こんにちは、ユニちゃ…ユニ様」
 相手の立場を慮って敬称を変えた年上の少女に、ユニは笑みを深くする。警備としてズラリ居並ぶミルフィオーレ構成員に配慮してのことだった。
 おっとりを通り越している感すらあるほどぽぅっとした娘だが、こういう時にするべき対応を間違わないのは、流石に超直感持ちだとリボーンですら時に感心する。
「ようこそ御出でになられました、ドンナ…」
 冠する組織の名はこの場では口にしない。
 あくまで『ユニの友人』として迎えた事もあるし、彼女が何者かは一般隊員には伏せている以上、下手に彼女の素性を晒すようなヘマは出来ないからだ。
 都奈はあくまでボンゴレの大切な掌中の珠。
 基本的にその顔は知られていないし、そのことにより守られているのである。
 勿論、山本や獄寺とそれなりに裏社会で顔も名も知られた男達を従えている以上、ちょっと頭が働けば、彼女が何者か位直ぐに推測できようが、あえて念には念を入れるのもまた礼儀と。

 白い六弔花専用制服を纏って正装し、清楚な面貌に薄く化粧を施した入江に、都奈も笑顔で挨拶した。
 年上の綺麗なお姉さんは、今日も聡明で美しい。
 ユニを挟んで立つγは、同じコンセプトデザインで色違いの制服姿だ。
 よう、ボンゴレの姫さん―――今にもその口から出てきそう。ちょっと微笑み肩を竦める様子が、いかにも伊達男という感じだ。
「お言葉に甘えて、遊びに来させて頂きました」
 お出かけとあって何時もより着飾らされているが、いつも通りのほわほわした笑顔を都奈は浮かべる。
 その華奢な腕の中で、ナッツも「がうっ」と追従する形で鳴いた。機嫌よく振られる尻尾が愛らしい。
 その小さなライオンに興味を示しつつ、ユニは都奈を促した。

もしもに備えて数階間に挟んで居るのもあって、更に上層階の白蘭のそれには及ばないが、ユニ専用階からの眺めも素晴らしかった。一面の分厚い防弾仕様のグラス越しの展望だ、掛け値なしに。こればかりはボンゴレ城とは比べものにならない。
「ふわ〜〜〜、凄〜い…!」
「ガウ!」
 そうだね!と言う風に、ナッツも大きな双眸をクリクリさせながら都奈の言葉に続けて足元で鳴いた。
「ふふ、そうですか?」
 こてっと首を傾げるユニに、「本当に凄いね」とニコニコ微笑み都奈は言う。
 さらにふふふと笑って。
 ユニは改めましてと置いて言った。
「いらっしゃい、都奈さん!」
 言って、ユニはほきゅっと華奢な年上の少女に抱きついた。
 都奈も微笑み、きゅっと抱き返して。
「うんっ、こんにちは、久しぶりだね、ユニちゃん」
「その子がナッツちゃんですか?」
 お手紙に書いてあった―――とキラキラした目で問い掛けてくるユニに、うんと都奈は頷いた。
「ほら、ナッツ、ご挨拶して?」
 足元の子ライオンに、都奈は促した。
 ナッツは良い子のお返事をして、都奈の友達に向き合った。
「がう!」
 尾っぽゆらゆら、ナッツはユニの青い瞳を見上げて鳴いた。
「か…」
 ユニの頬がぽわ〜んと染まる。
「可愛いです…っ!!」
 きゅんきゅん悶えて、ユニはしゃがみこみ、おいでとナッツに両手を差し出した。
 ちょっと迷って、でも根本的に人懐っこいナッツは、ちらと見上げた都奈がニコニコしているので良いだろうと納得し、ユニの膝にチョンと乗る。
 ほきゅっと抱っこされると、なんだか都奈に抱っこされた時の様にナッツははにゃ〜んとなってしまう。
 多分ユニが大空の炎を宿しているからだ。
 今の所都奈とザンザスくらいしかナッツは知らないが、この二人に触られるとそうなるので。
 ナッツは午睡む様にとろ〜んとした顔をして、毛並みを撫でてくれるユニの手をぺろっと舐めた。

お菓子を運んできてくれた某大河SFサーガに出てくるロボットサイズなメイド・オブ・スパナのミニ・モスカに凄い凄いと都奈が騒いだり
 幻騎士という青年が無駄なく、けれどそれ故に逆に優雅な所作で煎れてくれた中国茶と点心に舌鼓を打ったり
 スパナの研究室を見学に行ったり
 はたまた白蘭ご自慢なのだという空中庭園を散策したり…

 楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
 さあ、いい加減帰らなくては(旦那が暴走しかねないので)ならないという段になって。
「…都奈さん、また遊びに来てくださいね…!!」
 ほきゅっと少しだけ背の高い少女に抱きつき、ユニは潤り青い瞳を濡らして見上げた。都奈も只でさえ垂れ気味の眉尻を下げて、琥珀の瞳にじわっと涙を溜める。
「うん…っ、ザンザスさんにお願いしてみる。ユニちゃんもね?」
「はいっ」
 手を取り合い見詰め合って再会を約束する二人に、「がう!」とナッツは「ナッツは?ナッツは?」と自己主張してみる。
「ふふ…ナッツちゃんも」
 勿論あなたにも会いたいですと微笑んでくれるユニに、ナッツはご機嫌になる。
「がう」
 鳴いてふりふりしっぽを揺らしながら寄って。
 抱っこしてくれたユニのマシュマロほっぺをぺろっと舐める。
 ユニのことも大好きだよ―――残念ながらお喋り出来ないナッツは、そんな気持を態度で示した。

絶賛日参中な携帯サイト雪月花の雨里様からキリリクでいただきました。「どるちぇ(『雪月花』で連載中ザンツナ♀連載)設定で今度はツナがユニのところに遊びに行く。お供はナッツで。むしろ自慢しに行く勢いで」というリクエストでした。〜〜〜!ツナ超可愛い―――!ユニ姫もナッツも超可愛い・・・!!ほのぼのした様子が浮かんでくるようです・・・!最高vv

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